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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~女神編~
155/201

おわりの魔法少女

 静かだ。

 台風が通り過ぎたあとは晴天になるというが、まさにそれ。

 さっきまでとは打って変わって、穏やかな風が吹いている。

 しかし、目の前に広がっている光景は、そんな穏やかなものじゃない。

 神樹の枝葉は散り、所々が凍り付いている。

 ここに来たときは、なんて綺麗なところだと思ったのに……今やその面影は無い。

 そんな荒れ果てた場所で、わたしと女神はふたり、向かい合っていた。


「黒瀬麻子。わしはな……すべてが無に帰ると期待したときが、『二度』あったんじゃ」

「……急に……何の話?」

「わし自らが手を出さずとも、この世界が終焉を迎える――そんな転換期が、これまでに二度あったという話じゃよ」


 ゆっくりと歩き回りながら、女神が意味深に語る。

 世界が終焉を迎える……転換期?

 いきなり何を言ってるの?

 意味がわからない。

 でも、わたしにも全く覚えが無い話ではない。

 ひとつだけ、思い当たることがあるとしたら……


「一度は……芽衣ちゃん?」

「……そのとおり。一度目は、源芽衣が魔王の力を取り込んだときじゃ」


 芽衣が、魔王の力を取り込んだとき……一年前のあのとき、芽衣は自分でこう言っていた。


『わたしが魔王になって、この世界を壊してしまおうって――』


 もしあのとき、わたしと華蓮で芽衣を止めることができていなかったら。

 そのときは、どうなっていたかわからない。

 それこそ女神が願っているとおりに、世界が終わっていたのだろうか。


「あのときは、あやつが世界を闇に堕とす可能性を見た。結果は知ってのとおり、汝らに止められたがな」

「芽衣ちゃんがやろうとしてたこと……最初からわかってたのね」

「ああ。ま……あのときは期待薄じゃった。もしやとは思っていたが、やはりあの娘では力不足が否めんからの」

「芽衣ちゃんが力不足……? 魔王の力を持った芽衣ちゃんよ?」

「じゃが、案の定勝ったのは汝らじゃった。このときは、わしもどうしたものかと思ったものじゃ。このままでは、わしの望みは叶わないとな」

「……それであなたは、芽衣ちゃんの力を利用することを思いついた……」


 歩き回っていた女神の足が、ぴたりと止まる。


「ふむ……その言い方じゃと、少し語弊があるな」

「……は? 語弊?」

「そのときわしは、既に別の未来を思い描いていたからの」


 そう言うと、女神は右手に小さな黒い竜巻を生み出した。

 それを見た瞬間、顔が熱くなる。

 これは、芽衣がよく使っていた魔法だ。

 風魔法と闇魔法を併せた、『黒風』。

 女神が、その魔法を使っている。

 本当に、芽衣の魔力は女神に奪われてしまったんだ。


「確かに、これはとんでもなく強い魔力じゃ。じゃが……やはり足りぬ」


 そう言うと、女神はぎゅっと右手を握り、わたしの方を向いた。

 その顔を見て、ドキッとする。

 わたしを見る女神の目が、悲しそうな目をしていたからだ。

 何で……そんな目でわたしを見るの?

 何を訴えようとしているの?

 どうして……わたしに謝るような目を向けているの?


「さっきから……あなたの話がわからない! 一体何が言いたいのよ!?」

「ああ……そうじゃな。じゃが、話を聞けばわかる。わしの言いたいことがな」

「……!?」

「話を戻そう。源芽衣による魔王騒動も冷めやらぬ頃……新たな騒動が起きた。それが、モストらによる暴動じゃ」

「……そうね。ひどい目に遭ったわ」

「それが、わしの言う転換期の二度目じゃった。……汝らが、ミラージュと闘ったときがな」

「……ミラージュと?」

「そうじゃ。あのとき、わしはその結果次第では世界が終わると予想した」

「え……?」


 それはおかしい。

 京香は自分の願いを叶えるために動いていたし、ミラージュの魔法少女は京香に従っていただけ。

 世界をどうこうしようだなんて……そんな大規模なことを考えている魔法少女は、ひとりもいなかった。

 わたしたちが勝っても、京香たちが勝っても、世界が終わるだなんて馬鹿げている。


「……何か勘違いしてない? 京香に、そんな気はなかったと思うけど」

「そうじゃろうな。あの妙な集団には、そんな力はないじゃろうて」

「だったら……」

「ミラージュにいた魔法少女に、そんな力はない。じゃったら、もう答えはひとつしかないじゃろう?」


 女神が、人差し指を向ける。


 ……え?


 その指が示す先にいるのは――わたし。


「世界を終わらせるのは……汝じゃよ。黒瀬麻子」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 結局、闇属性が何なのかが分かっていないような気がしてきます・・無に帰すというのは何処まで拡大解釈できるのか・・ [一言] 二度目というのは友人の誰かが死んだ場合の麻子闇落ちルートってこ…
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