表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~女神編~
145/201

魔法少女たちは巻き込まれる

「はぁ、はぁ……麻子ちゃん……無事でよかった……」


 息を荒くした羽衣姉が、立ったまま部屋の壁に寄りかかっていた。

 その身体からは、白い冷気……というよりも、氷魔法の魔力が立ち上っている。

 右肩を凍り付かせたその姿は、まるで氷の鎧を纏っているようだった。


「わたしは……平気。羽衣姉こそ、その身体……」

「わたしも大丈夫。雷にびっくりして、咄嗟に音がした方向を守ろうとしてたみたい……」


 パキパキと氷が剥がれる音と共に、羽衣姉の魔法が解除されていく。

 膨大な魔力を持つ羽衣姉は、反射的に氷魔法で身を守っていたようだ。


「さすがね。……華蓮は!? 大丈夫……!?」


 床にうずくまっていた華蓮は、動けないようだった。

 さっき微かに聞こえた、華蓮の呻き声。

 何か攻撃を受けたことは、間違いないだろう。


「だ、大丈夫……ちょっと痺れて動けないけど……大したことない……っつ!」

「何が大したことないよ……ちょ、華蓮左肩燃えてるじゃん!?」

「ばか、これはわたしの炎魔法よ……ま、ここやられちゃったのは事実だけどね」


 痛むのだろうか、左肩を抑えて顔をしかめる華蓮。


「麻子と……白雪さんは無事みたいね。……芽衣は?」


 華蓮に言われて、再度部屋を見渡す。

 しかし、やはり芽衣の姿は無い。

 この部屋には、三人しかいない。

 さっきまで、そこにもうひとりいたはずなのに。


「それが……芽衣ちゃんがいないの」

「……は? いない……?」


 わたしも華蓮も、それ以上の言葉が出てこなかった。

 静まり返った部屋の中で、誰も何も言うことができない。

 そのまま、呆然と立ち尽くしているしかなかった。


(芽衣ちゃん……やっぱり、鏡魔法で……?)


 暗闇の中で、鏡魔法の魔力を確かに感じた。

 鏡魔法の恐ろしさは、よくわかっていたはずなのに。

 それなのに、どうしてまたこんなことに……

 ぎゅっと下唇を噛んだ瞬間、部屋の外で何かが動く影が見えた。


「! め、芽衣ちゃん!?」

「うお、びっくりした……どうしたぽん? そんな泣きそうな顔して」

「モ、モア……」

「戻ったぽんよ。久しぶりぽんね、麻子」


 そこにいたのは、随分久しぶりに姿を見せたモアだった。

 がくりと肩を落とし、思わずしゃがみ込む。


「モア……あなたほんといつも空気読めないわね……」

「いやそんな露骨にがっかりされると流石に傷つくぽん。何かあったぽん?」

「……芽衣ちゃんが……消えた」

「えっ? 消えたって……?」

「わからないわよ! あなたのところの女神が……!」


 ……いや。

 ちょっと待て。

 そもそも、闇魔法も使える芽衣があっさり鏡の世界に連れ去られるのはおかしい。

 視界を奪われていたとはいえ、華蓮が叫び声をあげた瞬間、芽衣も警戒したはず。

 光魔法ならまだしも、鏡魔法に闇魔法で対抗できないはずが……


「……まさか……」

「……麻子?」


 女神の声が聞こえたとき、闇を照らした閃光を思い出す。

 雷魔法の雷光だと思っていたが……それは勘違いかもしれない。

 女神が、人の魔法を奪えるのだとしたら。

 もし、奪った魔法をすべて使えるのだとしたら。

 女神が使える魔法が、鏡魔法だけなんて保証はない。

 鏡魔法だけじゃなく、雷魔法……更に、光魔法までも使えるのだとしたら。


「……華蓮! 華奏ちゃんは大丈夫!?」

「ど、どうしたのよ急に……」

「いいから! もしかして、華奏ちゃんの身に何かあったかも……!」

「ちょ、ちょっと待って……電話してみる」


 華蓮は右手だけで器用にスマホを操作すると、電話をかけ始めた。


(もし……女神が、華奏ちゃんから光の魔力も奪っていたとしたら……!)


 だとすれば、芽衣が対抗できなかったのも納得できる。

 しかしそうなると、女神は複数の魔力を奪い、いくつもの属性を持っているということになる。

 さっきの雷魔法も、瑠奈から奪った魔力だろう。

 複数の属性の魔力を持つ魔法少女……そんなの、一体どうすれば……


「麻子。華奏……何ともないって。光魔法も、ちゃんと使えるみたい」

「…………え?」


 全然違った。

 華奏は、魔力を奪われたりしていなかった。

 てっきりわたしは、あの光はそういうことだと思ったのに……

 そうじゃないということは、わたしの考えすぎ……?


「そ、そう……なら、いいんだけど……」


 だったらあの光は、ただの雷魔法……

 いや、でも思い返すとあの光……やっぱり光魔法だった気がしてならない。

 でも、だったらどうして……

 もう、わたしには何が何だかわからない。

 芽衣がいなくなったショックも相まって、頭の中がぐらぐらして倒れそうになる。


「ああもう! 話が見えないぽん! 麻子、とにかく何があったのか、話を聞かせてもらえないぽんか?」

「モア……」

「ぼくの方も厄介なことになってるぽんが……こっちはそれどころじゃなさそうだぽん」

「……?」


 話が見えないのは、こちらも同じである。

 何が起きているのか、さっぱりわからない。

 でも、これだけはわかる。

 わたしは、また……厄介なことに巻き込まれようとしている。


「モア……聞きたいことがある。あの、女神について」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ