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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~女神編~
142/201

仲良くランチタイム②

 大学食堂の、一番隅っこの席。

 周りは騒がしいほど賑やかだが、その席に座る三人は一言も喋っていなかった。


「……………………」


 気まずそうに、静かにラーメンを啜る華蓮。

 その横で、互いに向かい合って座るわたしと京香。

 目立たない場所のはずだが、そこだけ異様な雰囲気を放っていた。


『ちょっとちょっと……あの席の子、大丈夫?』

『あのちっちゃい子、絡まれてるのかな』

『あのふたりなんか怖そうだもんね……』


 通りすがりの集団から、そんなひそひそ話が聞こえてくる。

 身長が高めのわたしと京香が睨み合っているところに、小さくて幼く見られがちな華蓮が一緒に座っているせいか、怪しく見えるらしい。

 まあ、それは仕方ない。

 ぶっちゃけわたしもそう思う。


「……はあ。ウチはもう魔法少女じゃないんだけどなあ」


 しばらく沈黙が続いていたが、京香がため息交じりに口を開いた。


「それは聞いてる。魔法が使えなくなったそうじゃない」

「……るなちか。全く、べらべら喋っちゃって……」


 そう言いながら、野菜サラダを口にする京香。

 京香のトレーにあるのは野菜サラダとヨーグルトだけという、なんともヘルシーな食事だった。

 わたしもせっかくのうどんが冷めてしまうので、一口食べてから話を続ける。


「魔法が使えなくなったって……一体何があったのよ?」

「なんでそれをあなたに話さなくちゃいけないの」

「はあ……あんなことしておいてよく言うわね? 罪悪感とか無いわけ?」

「罪悪感、ねえ……」


 ちら、と華蓮に視線を向ける京香。

 それに気付いた華蓮は、すぐに視線を落とすと、またラーメンを口に運び始めた。


「……随分おとなしくなったものね。あの炎の魔法少女が」

「べ、別に……」


 視線を合わせようとしない華蓮を見て、京香が頬杖したまま笑みを浮かべた。


「今のウチならすぐ殺せるけど? いいの、殺らなくて?」

「ちょっと。華蓮のこと挑発するのはやめなさいよ。本当に殺すわよ」

「おーこわ。さすがSランクは言うことが違うねえ」

「茶化してんじゃないわよ」


 本気で手が出そうだったが、こんなところで魔法を使ったら大惨事である。

 瑠奈は、京香が魔法を使えなくなっておとなしくなったと言っていたのに……全然そんな風には見えない。

 人を小馬鹿にしたような態度は、むしろ悪化しているとさえ思った。


「……とにかく、話してもらうわよ。あなたが本当に鏡魔法を使えないって言うのなら、それはそれで問題かもしれないんだから」

「問題……?」


 その言葉を聞いた京香は眉を顰めると、箸を置いた。


「あなたたち……まさか、また何かに巻き込まれてるの? そりゃ、お気の毒様」

「その口ぶり。自分は無関係って言いたそうね?」

「ええ。だって、事実だし」

「だったら何があったのか正直に話しても問題ないでしょ。あなたはあの洋館で、急に姿を消した。あのとき、何があったわけ?」

「……さあねえ。ウチもほとんど意識無かったし」

「……本当に?」


 それでは困る。

 気を失って、気が付いたら魔法が使えなくなってしまいました……ではお話にならない。

 骨折り損のくたびれもうけもいいところだ。


「なんなら、魔法が使えなくなったのはあなたの闇魔法が原因なんじゃないかって疑っていたぐらいよ」

「はあ? わたしの? そんなわけ……」


 ない……のか?

 あらゆる魔法を無効化する闇魔法が、京香自身の魔力そのものを無力化してしまった……そんなことが、あり得るのだろうか。

 いや、でも芽衣も同じようにわたしの闇魔法で覆ったけど何ともないし……


「……でもね、たぶん違う。微かに残る意識の中で、わたしは魔力を奪われたような感覚があったから」

「魔力を……え?」


 わたしの持つ箸から、うどんがこぼれ落ちる。


「どういうこと? 奪われた? 鏡の魔力を奪われたって何?」

「ああもう、うるさいわね。かもしれないってだけ。あのとき誰かに触られて……急に自分の中に、何も感じなくなるような妙な感覚があったのよ」


 京香はそう言うと、再び野菜サラダを食べ始めた。


(魔力を……奪う? そんなことをできるやつがいるの? もし、本当にそんなやつがいるとしたら……)


 そうだとしたら――全く安心できない。

 京香が魔法を使えなくなっていても、鏡魔法の脅威は去っていない……ということだ。

 いや、むしろ状況は悪くなっているのかもしれない。

 わたしたちの知らない、別の『誰か』が鏡の魔法少女になっているのかもしれないのだから。


「そいつは……どんなやつだったの?」

「言ったでしょ、ほとんど意識なかったって。うっすら覚えているのは、妙な言葉遣いが聞こえてきたってことだけ」

「妙な言葉遣い?」

「『~じゃ』、とか『~だのう』、みたいな」

「……はあ?」


 誰だそれは。

 そんな話し方をする人に、全く心当たりがない。

 知らない、そんな人。


「……フードの魔法少女」

「え?」

「会ったことがある。そんな話し方をする人に」

「華蓮……心当たりがあるの?」

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