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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~女神編~
140/201

諸刃の剣

 羽衣姉から連絡をもらった次の日。

 わたしは鏡の魔法少女の話を聞くために、羽衣姉の家を訪れていた。

 さすがに雪が降るこの季節ともなれば冷房はついていないが、わたしの部屋に比べると全然暖かくない。

 むしろ寒い。

 部屋の中でも、外から着ていたコートが手放せないぐらいだ。

 しかし、わたしには『暖房強くして』よりも先に言うべきがあった。


「……なんで華蓮いるの?」


 チャットで羽衣姉の発言に返信したのはわたしだけだったのに、何故かわたしよりも先に華蓮が来ていたのである。

 ツインテールと、もこもこの分厚い服で丸くなった華蓮は中学生ぐらいに見えて、少し可笑しかった。


「決まってるでしょ。わたしも一緒に行くからよ」

「いやいや、チャットじゃそんな素振り全く無かったじゃん。華蓮は行かない方が良いんじゃない?」

「む。なんでよ」

「なんでって……」


 自分にトラウマを植え付けた張本人なんて、普通は会いたくないだろう。

 華蓮にとって、京香は忌々しい存在。

 鏡だけであんな反応をしていたのに、京香と出会ったらどうなってしまうのか……

 京香に出会って、顔色を悪くする華蓮の姿が目に浮かぶ。

 そんなわたしの考えていることを察したのだろうか、華蓮はわたしのコートを引っ張って言った。


「わたしのことを心配してるなら的外れよ。むしろ会いたいの。このわだかまりを解消するためにもね」

「華蓮……」


 引き下がる気のない華蓮の目を見て、ふうとため息をつく。


「……全くしょーがないわね。わかった。でも、行くのはわたしと一緒。それから、絶対にわたしの傍を離れないこと。いい?」

「……うん、わかった」


 こくりと頷く華蓮。

 あれ? 思ったより素直なこと。

 強気なことを言っていても、やっぱり不安があるのだろうか。

 こういうときの華蓮は可愛いが、心配にもなる。

 最初に出会った頃、ひとりで妹を助けようとしていた姿を見たときにも思ったことだが、華蓮は脆いところがある。

 強い子なのだが、それ故ひとりで何とかしようとしがち。

 悪いことではないが、それは諸刃の剣となる。

 まあ、今回はふたりで一緒に行けば大丈夫か……最悪、手を繋いで一緒に行こう。

 華蓮は嫌がるかもしれないけど。


「それじゃ羽衣姉。詳しい話を聞かせてもらえる?」

「うん。えっとね……これ見て」


 キーボードを叩いた羽衣姉は、モニターに映った写真を指さした。


「これは……?」


 その写真は、関東圏で珍しく雪が積もったことを報じる写真だった。

 わたしから見れば珍しくもなんともない雪景色だが、関東民にとってはそうではないらしい。


「SNSで見つけた写真。これ、東京にある大学で撮られたものなんだけど……この部分を拡大すると……」


 羽衣姉は何やら難しそうな操作をして、背景に映る人混みを拡大し、画像の解像度を上げる作業を繰り返した。

 徐々に、写真に写り込んだ人たちの輪郭がはっきり見えてくる。


「……あ! これ!」


 明るい茶髪に派手なピアス。

 単に写り込んだだけだろうが、見間違えるはずがない。

 そこに写っていたのは、間違いなく京香だった。


「え、もしかしてここの学生ってこと?」


 この大学で撮られた写真に写っているからここの学生……とはなんとも安直な発想だが、その可能性はある。


「そうかも。この写真が撮られた日って、大雪で午後から休校になるほどだったんだよね。そんな日にわざわざここにいたのは、偶然じゃないかな……って」

「なるほど……凄いじゃん羽衣姉、こんなのよく見つけたわね?」

「えへへ……鏡の魔法少女は樋本さんが東京で出会った大学生って情報から、東京の大学生が写っている写真をひたすらずーっと探してたの。そしたらこれが見つかって」

「え、思ったより力業……京香って有名人じゃなかったの?」

「それが思ったよりもガードが堅い人みたいで、普通に探しても全然情報が出てこなかったんだよ……というか、意図的に情報操作されてる? みたいな……」

「なにそれ怖っ。いやでもあいつならあり得るか……?」


 京香は、ミラージュの残党に出会わないよう気を付けているはず。

 しょっちゅう行動を共にしていたあの瑠奈ですら、京香と会えていないと言っていたほどだ。

 そう簡単に自分の居場所を晒すような真似はしていないだろう。


「とにかくこれは最近の写真だし、行ってみる価値はありそうね」

「行ってみるって……え? 直接この大学に?」

「うん。だって、直接捕まえないと碌に話なんて聞いてくれなさそうだし」

「そうだけど……遠いし、無駄足になるかもだよ?」

「いいって。そのときはそのときよ」


 華蓮の方を見ると、わたしと同じ気持ちなのだろう、力強く頷いた。


「決まりね。行くわよ、華蓮」

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