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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~女神編~
133/201

女神様って、どんな人?②

「モア。女神様って、どんな人なの?」

「どんな人って……真面目な人だぽん。ぼくら神官だけじゃなく、住民みんなにも優しいし。アストラルホールに住む者からすれば、憧れの存在みたいなものだぽん」


 べた褒めである。

 まるで欠点など無い聖人のような言い方だ。


「…………強いの?」

「つ、強い? 女神様が?」

「魔法少女は勝手にランク付けされてたじゃん。女神様はどうなのよ?」


 モアが首を傾げる。


「そんなの考えたことも無いぽん。そもそも女神様にはほとんど魔力が無い。麻子や芽衣と比べたら、そりゃあ弱いぽんよ」

「……そうなんだ?」


 ほとんど魔力が無い……か。

 そうだとしたら、声をかけられるまで女神の存在に気付かなかったのはそのせいかもしれない。

 でも、女神からこれまでに感じたことのない圧を感じたのもまた事実。

 こんなことを言うのはおかしなことだとわかっているが、とにかくあの女神からは特別な『何か』を感じたのだ。


「ほとんど、ってことは一応魔力はあるんだよね。んじゃ、女神様って水属性だったりする?」

「水属性? どうしてそう思うぽん?」

「女神様に話しかけられる直前に、水の塊がぷかぷか浮いてるのを見たんだよね。今思うと、あれって女神様の魔法だったのかなって」

「あー……確かに女神様は水魔法が使えるはずだぽん。でも魔力が弱くて、ミストシャワーぐらいにしかその力を使っていなかったけどぽん」

「ミストシャワーて……随分上品な魔法の使い方ね」


 うーん……なんか釈然としない。

 確かに女神から強力な魔力は感じられなかったけど、そんな感じ?

 何故だか弱いとは思えないんだよなあ。

 今までに触れたことのない、妙な魔力……水属性が、あんな独特の雰囲気を纏うものだろうか。

 水属性って結構ありきたりな属性だと思うんだけど。

 ミラージュの残党にいくらでもいそう。


「モアさ、女神様のことを奇跡の女神様って言ってたじゃん? 今の女神様になってからは、闇のなんちゃらが出なかったからって」

「そうだけどぽん」

「最近そいつらが出てきたのって……女神様がやる気無くなっちゃったからだったりしない?」


 わたしの発言が思いも寄らないものだったのか、モアは目を丸くした。


「なにをバカな。確かに女神様は奇跡の女神様と呼ばれているぽんが……それはあくまでただの呼称。実際に女神様が闇の軍勢を押さえつけているわけでもないし。ただの偶然だろうぽん」

「偶然……ねえ」


 本当に?

 本当に偶然だろうか。

 胸騒ぎがする。

 こういうのって、大体偶然じゃ済まされない。

 魔法少女になってからトラブルに巻き込まれてばかりのせいで、疑心暗鬼にもなる。


(……いやいや、女神相手にそんな疑う意味ないわよね)


 そんな話をしている内に、わたしたちは羽衣姉の家に戻ってきた。

 うーん……結局何もわからなかった。

 でもまあいいか。

 これ以上気にしたって仕方がない。

 それに、わたしが気にすることでもない……か。


「……とりあえず、今日は帰ろっか。へいモア、家までよろしく」

「へいタクシーみたいに言うなぽん」

「だって、普通に帰ったら一時間はかかるし」


 玄関の扉を開けて、羽衣姉の家に入る。

 冷たい空気を肌で感じ、すぐに上着を羽織った。


「ほら、芽衣ちゃんも…………ん?」


 羽衣姉のいる部屋に入ったわたしの目に飛び込んできたのは、ふたりで何かを喋っている芽衣と羽衣姉だった。

 しかも、何だか楽しそうに。


「あ、あれ…………」


 思わず固まるわたし。

 ――しまった。

 モアとふたりで無駄話してる場合じゃなかったかもしれない。

 いつの間にかあのふたり、普通に話せるようになっている。

 同じ配信者同士、何か通じるものがあるのだろうか。

 謎の疎外感に、声をかけるのを躊躇ってしまう。


「あ、お帰り~……ごめんねえ、何にもできなくって」


 入口に突っ立っているわたしに気が付いた羽衣姉は、美味しそうにうさぎりんごを頬張ってにこにこしていた。

 マイテリトリーに戻って調子を取り戻したのか、すっかり顔色は良くなっている。


「い、いいよ……てかさ、随分仲良くなったみたいじゃん?」

「えへへ、配信のことこんなに話せたの初めてで……メイルちゃん、何か親近感湧くんだよねえ」


 メイルちゃん!?

 今メイルちゃんって言ったか!?


「へ、へえ~……それはよかった……」


 リアルでその名前を呼ぶのは反則だろうと思いながら、平静を装って声を絞り出す。


「め、芽衣ちゃん? 今日はもう遅いし……そろそろ帰るよね?」

「もうこんな時間ですか……そうですね。それじゃ、今日は解散しましょうか」


 すっくと立ちあがり、真っ黒な魔獣、ゴンザレス二世を慣れた手つきで呼び出す芽衣。


「ユキさん、今日はありがとうございました。麻子さんも、また今度」


 丁寧にぺこりとお辞儀をすると、芽衣はゴンザレス二世と共に消えてしまった。


「すごーい、あんな風に瞬間移動できるんだねえ」

「そ、そうね……」


 ゆるい声で感心したように言う羽衣姉だが、わたしはそれどころじゃなかった。

 ……何だろう。今日はどっと疲れた。

 初めは、最強の魔法少女のことを確認しようと思っただけなのに。

 全然それだけじゃ終わらなかった。

 あまりにも多くの情報に、頭の中がぐるぐるする。

 結局雪女のことは杞憂だったけど……それ以上に気になることができてしまった。

 芽衣と羽衣。

 同じVTuber同士のふたり。

 芽衣ちゃん……まさか、羽衣姉に夢中になったり……しないよね?

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