女神サイドの一幕
「……あー! 疲れた! 肩がこるのお!」
まるで子どものようにぐーっと背筋を伸ばす女神を見て、ヴィラはくすりと笑った。
「なんとか最後までキャラを壊さずに話せましたね、女神様。いつボロが出るのかと、ワクワクしていましたよ」
「そんなヘマせぬわ。……ん? 今、ワクワクと言ったか?」
「間違えました。ソワソワしてましたよ」
「わざとじゃろ! 全く、こちとら何年女神をやってると思ってるんじゃ」
「ざっと百年以上ですね」
「マジレスせんでいいわい。それにしてもじゃ……あれがSランク。間近で見るとやはり別格じゃな。想像以上じゃ、あの『ふたり』は」
どこか嬉しそうに話す女神に、ヴィラは微かに頷いた。
「そうですね……彼女たちは桁違いの魔力でした。やはり、怪物かと」
「あれだけの魔力を持つ者が同時にふたりも現れた……これは天命じゃな」
「では……女神様、本当に良いのですか?」
「なんじゃヴィラ、怖気ついたのか?」
「まさか。そうではなく……わたしは、心配なのですよ。女神様のことが」
「……汝をわしの我儘に巻き込むことは悪いと思っておる。嫌な役回りを押し付けてしまったの」
「……いえ、それが女神様の望みなら。『はじまりの魔法少女』が、すべてを無に帰す……何とも皮肉な話です」
「はっ、もはや懐かしい名じゃの。……さて、わしもいつ動くか……やはり、御しやすいのはあいつかの」
そう言った女神の右手は、微かに光っていた。
まるで、鏡が反射するかのように。




