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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~樋本華蓮編~
116/201

エピローグ

 ――夢を見ていた。

 世界中が凍る夢。

 海も山も、建物も。

 何もかもが凍り付いて、世界は終焉を迎えていた。

 そんな光景を冷静に見ている自分に違和感を覚え、これは夢だなとすぐに気が付いた。

 それと同時に、あることに気が付く。

 この光景……前にも見たことなかったっけ?

 絶対に夢のはずなのに、既視感が拭えない。

 どうして、こんな夢をまた見るんだろう?

 この、デジャヴ感はなんだろう?

 凍った世界……こんな世界になったら、もうおしまいだ。

 こんな世界に、なってしまわないように。

 凍てつく世界を溶かすために。

 わたしの、炎は……



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「……ちゃん……お姉ちゃん!」

「……ん……んあ?」


 重たい瞼をゆっくりと持ち上げて、目を覚ます。

 寝起きで頭が働かない。

 やっと起きたと言う妹の声が微かに聞こえるが、視界がぼんやりして姿が見えない。


「まだ起きないの? 大丈夫?」


 耳元で声がして、思わず顔を背ける。


「んー……まだ朝でしょ……?」


 ごろんと寝返りをうち、枕を抱きしめて顔を埋めた。

 愛用している抱き枕がわたしの身体を包み込み、とても気持ちがいい。

 このまま二度寝に突入するのが、至福の時間である。


「まだじゃなくて、もう朝! 今日から新学期だって! 起きてお姉ちゃん!」

「え……やば!」


 布団を撥ね退けて飛び起きた。

 窓から差し込む朝日に目がくらむ。

 今日は新学期初日。

 昼までのんびり寝てはいられない。

 夏休みは、昨日で終わってしまったのだ。


「もー……ごはんもうすぐ用意できるから、下りてきてね!」


 既に制服に身を包んだ華奏は、起き上がったわたしを確認するとぱたぱたと部屋を出て行った。

 久しぶりに見た華奏の制服姿。

 今日から学校なんだと、急に意識が現実に引き戻される。


「うう……変な夢……」


 涙目になった目を擦りながら、ベッドに座り直した。

 妙な夢を見たせいだろうか、頭がぼーっとする。

 こんなに目覚めが悪い朝も久しぶりだ。


(あの光景……あれは、ただの夢……?)


 凍り付いた世界……氷の、世界。

 非現実的な世界だが、今のわたしにはひとつだけ思い当たることがある。

 氷の魔法少女――

 これは偶然なのだろうか。

 わたしが夢に見た光景は、心の奥底にある不安の表れ?

 それとも、予知夢……?

 いや、そんなはずはない。

 予知夢だなんて、馬鹿げている。

 それに、麻子があのとき言っていたとおりだとしたら、そんなことはありえない。

 心配する必要なんて、無いはずなのだ。


「…………あ」


 それなのに、わたしは自分でも気付かないうちに右手に魔力を込めていた。

 指先を炎が包み、ゆらゆらと揺れている。

 大丈夫。魔力は全く衰えていない。


(氷……最強の氷魔法に、わたしの炎は……どうなのかしら)


「お姉ちゃん! ごはんー!」


 遠くで華奏が呼ぶ声が聞こえる。

 わたしはぎゅっと右手を握りしめて、炎を消した。


「今行く!」


 妹の呼びかけに答えて、ベッドから立ち上がる。

 ようやく目が覚めてきた。

 ぼんやりしていた思考を振り払うかのように、伸びをする。

 もう、あんな辛い思いをするつもりはない。

 せっかくすべてを取り戻したのだ。

 たとえ自分の魔力が劣っていたとしても。

 それだけで奪われるのは、もうごめんだ。

 わたしはわたしの大切なものを、守っていく。


(……なんてね。気のせいよね、きっと)




 ― 第二部・完 ―


「魔法少女は闇が深い」、これで第二部完結です。

ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。

次回は第三部。ここまで続けることができるとは思っていませんでしたが、

回収できていないお話があるので完結はまだまだ先になりそうです。

本作を少しでもお気に召していただけたら、

感想や☆評価をいただけると励みになります。

改めて、読んでくださって本当にありがとうございました……!

これからも、どうぞよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] しっかりした妹に、二度寝したい姉・・平和だ() [気になる点] 樋本家はごはん派・・? 既に火を扱う華蓮の予知夢がどのような扱いなのか気になります・・答え合わせは第三部へ持ち越しされる事に…
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