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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~樋本華蓮編~
114/201

樋本華蓮には高すぎる

「ライブ……! 凄かったですね!」

「いやーわたしも全然知らないのに盛り上がっちゃったよ。あの曲って、オリジナルなの?」

「そうですよ! オリプロは、オリ曲もいっぱい出していて……」


 麻子と華奏が、きゃいきゃいとライブの感想を言い合って盛り上がっている。

 正直、わたしも雰囲気に飲まれて想像以上に楽しめた。

 さすがは超人気企業のVTuber。

 無料のライブステージにも関わらず、演出も凝っていたし、歌もダンスも凄かった。

 もし、将来メイルが大人気VTuberにでもなったら、同じようにステージに立ったりするのだろうか?

 今の芽衣からは歌ったり踊ったりする姿がまるで想像できないが、もっと大人になったらどこかの事務所に所属して、そうなる未来があるのかもしれない。

 そう思い芽衣の方を見ると、当の本人は麻子と華奏の会話に加わることなく、おとなしくそこに立っていた。


「……芽衣? ライブ、どうだった?」

「まあまあといったところじゃないですかね」

「厳し……芽衣、あんたオリプロに何か恨みでもあるの?」

「え、いやそんなんじゃないですけど」

「ふーん……ね、芽衣も将来ああいう事務所に所属したいとか……って、あれ?」


 気付かないうちに、隣にいたはずの芽衣の姿が消えていた。

 一瞬もしやと思ったが、焦るようなことはなかった。

 いつの間にか移動して、華奏と一緒に喋っている。


「むう……何なのあいつ?」


 何だか、はぐらされているような気がする。

 まるで、何か知られたくないことでもあるような。


「ね、ちょっと……麻子」


 手招きをして、小声で麻子を呼びつける。


「ん? どしたの華蓮」

「何か芽衣のやつ、変じゃない?」

「変って?」

「んー……オリプロのことになると、話を濁すっていうか……うまく言えないけど、何か隠しているような……」

「……やっぱり華蓮もそう思う?」

「やっぱりって……そうよね? 気のせいじゃないわよね?」

「でもわたし、オリプロのことは何も知らないからなあ……むしろ華蓮の方は、何か思い当たることないの?」

「いやわたしも詳しくないし。オリプロのことは知識として知ってるだけで」

「そっか……でもさ、オリプロのVTuberが嫌いってわけでもなさそうじゃない?」

「そうね……」


 確かに、麻子の言うとおりだ。

 嫌いだから話したくないとか、そういう反応でも無かったように思える。

 だから、尚更芽衣の考えていることがわからないのだ。


「ま……配信活動のことは、わたしが口出すことでもないか……それで? これからはどうするわけ?」

「もう時間も時間だし、夜ご飯でいいんじゃない?」

「そうね。それじゃ、どこか近くのお店を探して……」

「あ、それは大丈夫。すぐ近くのお店、予約しているから」

「……予約?」



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「え……ここ?」


 麻子に連れられて来たところは、わたしにとって未知の世界だった。

 未知の世界と言っても、何のお店なのかがわからないわけではない。

 そこは和の雰囲気を強調した、お寿司屋さんだった。

 だが、わたしの知っているお寿司屋さんではない。

 聞いたことがある……回らない寿司屋というやつだ。

 少なくとも、中高生だけで来るようなお店ではないだろう。

 明らかに高そうな雰囲気の、近寄りがたいお店だった。


「ちょちょちょ……こんなところにわたしたちが入っていいの? ドレスコードとか無いわけ?」

「は? 無い無い。そんなガチのお店じゃないわよ」

「そ、そうなの? いやでも、わたしこういうお店行ったことないんだけど」

「大丈夫だって、そんな畏まらなくても。ほら、行くわよ」


 そう言うと、麻子は慣れたように店員に予約していることを伝え、店の奥に入って行った。


「ちょ、待って……」


 わたしと華奏は、隠れるようにこっそり麻子の後ろを付いて行く。

 一方、芽衣はどうかというと、全く動じていないように見せた。

 このお金持ちめ……慣れているのだろうか。


「黒瀬様、こちらの席にどうぞ」

「はい、ありがとうございます」

「こ、個室なのね……」

「今時珍しくもないって。ほら、座ろ」

「う、うん」


 麻子は畏まらなくていいと言ったが、やっぱりどうしても畏まってしまう。

 中学生組を奥に座らせて、わたしは華奏の隣に、麻子が芽衣の隣に座った。


「大丈夫? 狭くない?」

「全然。それよりここの雰囲気に慣れないわよ」


 そう言いながらお品書きを見て、わたしは思わず声を出しそうになった。


「……! 麻子! わたしこんなお金無いって! なによこれ!? なんでこんなのがこんな値段するのよ!?」


 小声で麻子に訴えるが、麻子はハイハイと受け流すように言った。


「大丈夫だって。今回は旅費タダだし、余裕あるのよ」

「え?」

「鏡の洋館で言ったでしょ。今回はふたりのおかげで助かったって。だから今日のご飯は、感謝のしるし」

「……まじ? いいの?」

「大丈夫ですよ華蓮さん。いざとなったらわたしも出しますから」

「芽衣……あんたが言うとなんかもう怖いわね」


 芽衣が住んでいるマンションを思い出して、頭を抱える。

 芽衣なら余裕で支払えてしまいそうだ。


「ほら、遠慮なく! 今日は飲むわよ!」

「ここ、未成年しかいないはずだけど」

「ソフトドリンクでね!」

「えーっと、飲み物は……」


 わたしはそう言うと、お品書きの飲み物の欄に目を落とした。


(ジンジャーエール680円て……一体いつも飲んでるのと何が違うって言うのよ……)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 華蓮のあたふたする様子が可愛いです。それにドレスコードって・・華蓮がポンコツ化しそうなのもまた良き。そしてタイトルが最高です。 [気になる点] それぞれ、歌がどの程度上手いのか気になります…
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