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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~樋本華蓮編~
104/201

モストの目論見③

「……ん? んん?」


 モアは、きょろきょろと周りを見渡した。

 一見、何も変わっていないように見える。

 しかし、何かに呑み込まれたような感触は確かにあった。

 妙な浮遊感が残っており、落ち着かない。


「モスト?」


 目の前からモストが消えていることに気付いたモアは、ふらふらと独房の中を飛び回り始めた。


「……何だ? 何が起きたぽん?」

「……ねえ、モア」

「ま、麻子……今、何か妙な感覚に襲われなかったぽん?」

「モア……さっき、言ってたよね? モストの仲間には、鏡の魔法少女がいるって」

「あ、ああ……言ったぽんが」

「……やられたかもしれない」

「え?」


 麻子は自分が着ているシャツにプリントされた文字を指さした。


「見てよこれ。反転してる」

「な……!? なんだこれ!?」

「たぶん、その魔法少女の魔法だよ。わたしたち、鏡の世界に……閉じ込められたのかもしれない」

「閉じ込められた……? まさか……!」


 モアは慌てたように独房の壁に向かった。


「すり抜けられない……それに、瞬間移動も……!? なんでぽん!?」

「やっぱり……ここは魔法の世界で作られた、『別世界』なんだ」

「あいつ……ぼくごと麻子を異空間に閉じ込めたってことは……最初から、こうするつもりだったぽんね!?」

「てことは……モストは、モアを味方にするつもりなんか無かったってことね。とにかく今は、華蓮たちに状況を伝えないと……!」

「伝えるって……どうやってぽん?」

「どうやってって……わたしのスマホは?」

「そりゃあ……新幹線の中じゃないぽん?」

「え? モア、わたしの荷物持ってきてないの?」

「そりゃあそうぽん。ぼくはミラージュの魔法少女と一緒にいたんだから」

「…………」

「…………」


 沈黙が流れる。


「どうすんのよこの状況!? ほんと使えないわね!」

「いやいやいや! そもそも、スマホがあったとしても連絡がとれるかわからないぽん! アストラルホールとあっちの世界じゃ、通信環境はまだ不安定なんだぽん!」

「なにそれ!? このままじゃあいつらの思う壺じゃない……何かないの!?」

「何かって言われても……あ、ぼくのパソコンならあるぽん。メイルの3Dモデルを作るために使っていたやつが」

「パソコンって……いや、華蓮の連絡先がわからないじゃん。……うわ、画面も全部鏡文字になってるし。読み辛っ」

「こっちからでも、インターネットの閲覧ぐらいならできるはずなんだけどぽん」

「それはできるのね……ん? 待って、それなら……」


 モアからパソコンを奪い取り、カタカタとキーボードを叩く麻子。

 反転しているキーボードに四苦八苦しながらも、麻子はあるページを開いた。


「……あああ!」

「うわ! どうしたぽん!?」

「見てよこれ! メイルたんが配信してる!」

「え……あ、本当だぽん!」

「モア、この配信にコメントしたら芽衣ちゃんは見れる?」

「うーん……いや、たぶん見れるとは思うぽんが……」

「たぶん?」

「だから、通信環境が不安定なんだぽん。こっちからコメントすることはできても、向こうでちゃんと表示されるかどうかは……」

「コメントできるなら大丈夫よきっと。ほかの人が見ても不審がらないように……ええっと……」



『おかえりメイルたん! すぐに会いに行くから待っててね! 黒の魔法少女より』



「……よし、とりあえずこれで今のところ無事ってことは伝わるわよね」

「ストーカーにしか見えないぽんが」

「は? なんて?」

「自覚無いぽん?」

「何がよ? ……あ、あれ? パソコン固まっちゃったんだけど!?」

「あーあ、麻子が気持ち悪いコメントなんか送るから……あ、いややっぱりこっちから干渉するのは無理があったぽんね! 通信が不安定で! そりゃパソコンも動かなくなるわけだだぽん!」


 モアは思わず早口でまくし立てると、麻子からパソコンを取り上げた。

 メイルの配信が途中で途切れたせいで、麻子が黒い闇を纏っていたのである。


「お、落ち着くぽん麻子。大丈夫、きっと芽衣には伝わってるぽんよ」

「……こんなところで油売ってる場合じゃないわ。早く芽衣ちゃんのところに向かわないと」

「そ、そうぽんね……そうだ、麻子の闇魔法でこの空間をなんとかできないぽん?」

「もう試したわよ。でも……うまくいかなかった」


 麻子は黒い闇を拡げると、壁に沿うように動かして見せた。

 しかし、何の反応も無い。


「ここは完全に隔離された別世界ってことね……わたしの闇も、ただ空を切るみたいに何の手応えも無いのよ」

「そんな……」

「でも、気になることがある」

「え?」

「この空間……ときどき不安定になるのよね」


 麻子はそう言うと、宙を見上げて唇を噛んだ。


「華蓮……無茶してないといいけど」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 華蓮が死にそうになりながら魔法を乱発していたのが効いていたとは・・。当の華蓮はそこまで考えていなかったようですが。それに麻子にはやはりママみを感じる・・。 [気になる点] よく考えたら麻子…
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