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魔法少女は闇が深い  作者: アリス
魔法少女は闇が深い ~樋本華蓮編~
102/201

モストの目論見①

「……子……麻子……」

「んん……んんん」

「起きるぽん! 麻子!」

「ふが!?」


 モアの顔面タックルに起こされた麻子は、きょろきょろと周りを見渡した。


「やっと目を覚ましたぽんか……おはよう、麻子」

「モ、モア……? なんでここに……え? あれ? ここ、どこ?」

「ここは女神城の地下にある独房。麻子は、アストラルホールに連れてこられたんだぽん」

「は? え? ちょっと意味が……わたし確か、華蓮と一緒に芽衣ちゃんのところに向かう途中で……」


 麻子は俯くと眉間に指をあてて、必死に記憶を遡ろうとしていた。

 無理もない。

 このとき麻子は、本当に何も知らされていなかった。

 華蓮と一緒に東京旅行を楽しもうと新幹線に乗っていたところ、突然拉致された状態である。

 混乱するのは当然のことだ。


「…………」


 数十秒の沈黙のあと、麻子はゆっくりと顔をあげた。


「……これ、モアの仕業? ふざけてるの? 死にたいの?」


 黒い闇を纏いながら、ぎろりと殺意むき出しの目をモアに向ける麻子。

 モアは麻子の目を見て、慌てて首を振った。


「ちょ、落ち着くぽん……まずは説明させてほしいぽん。ぼくは、麻子たちを助けるためにここにいるんだぽん」

「はあ……?」

「落ち着いて聞いてほしい。このままだと、芽衣は始末されるぽん」

「は? モア、あんた何を言って……」


 そこまで言って、麻子は口をつぐんだ。


「……ふざけては……いないみたいね」

「おお? 理解が早くて助かるぽん」

「さすがにそこまで非常識じゃないでしょ。冗談で言ってたら、本気で闇に葬ってるところよ」


 麻子はその身にまとった暗闇を消すと、あぐらをかいて頬杖をついた。


「行儀が悪いぽんよ、麻子」

「こんな状況でよく言う……ちゃんと説明して、モア」

「うん。実は……」



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「――なるほどね……話は大体わかったわ」

「わかってくれたぽん」

「もっと他にやりようあったんじゃないのって思うけどね。首、痛いんだけど」


 電撃を受けた首を擦りながら、麻子はため息をついた。


「う……し、仕方がなかったんだぽん。あの雷の魔法少女が、ずっとぼくに付きまとってきて……」

「はあ……にしても、そのモストってやつは相当アレな性格してるわね。それに、魔獣が暴れているって話が見えてこないんだけど。何でそれで芽衣ちゃんが原因だって決めつけちゃうわけ?」

「確かに、そこはモストにしては早計だって思うぽんが……まあ、その方がモストにとっては都合が良いっていうのもあるだろうけど」

「ふーん……それで、今はモストと鏡の魔法少女が中心になって、ミラージュとかいう組織を組んでるってわけね。光の魔法少女がやばいっていうのはわかるけど、雪女ってのもそんなにやばいの?」

「あれは、未知数の魔力を秘めているぽん……普通、氷属性の魔法少女は十秒あれば学校のプールを凍らせるほどの魔力を持つ。でも、あれは……」

「あれは?」

「あれは、十秒あれば国ひとつ凍らせるほどの魔力を持っているはずだぽん」

「……ええ……なにそれ、デタラメすぎるでしょ」

「それでも、麻子と芽衣なら対抗できるかもしれないけど……少なくとも、雪女と光の魔法少女がモストについたら手が付けられなくなるぽん」

「なるほどね……それじゃ、連中が結託する前に潰しちゃおうってこと?」

「いや、今は魔獣が暴れ出しているせいで芽衣の立場が悪い……そんなときに芽衣たちが神官相手に暴れたりしたら、心証最悪だぽん」

「そんなこと気にしている場合? じゃあ……どうすんのよ?」

「方法は、ふたつ。ひとつは、芽衣の潔白を証明してしまうこと。でも、これは難しいと思うぽん」

「でしょうね。魔獣が暴れている原因が全くわからないのに、のんびり調べてたら先にやられちゃうわよ」

「ぼくもそう思う。だから、ふたつめの方法をとるしかない。こっちから手を出すんじゃなくて、返り討ちにする……これがベターな手だぽん」

「?」

「芽衣が襲われたから反抗して戦った、ということなら……ぼくは庇ってあげられる。それでも、上は良く思わないだろうけど……まだマシだぽん」

「んー……まあ、言いたいことは理解できたけど。要するに、わたしが離脱してあえて隙を見せることで、光の魔法少女だけ誘い出す。それを、先に対処しちゃおうってわけね」


 麻子は立ち上がると、周りを見渡しながら独房の壁を触り始めた。


「でも、それならどうやってここを脱出するわけ?」

「なーに言っているんだぽん、ぼくは瞬間移動できるぽんよ? 楽勝楽勝。いつでも出してあげられるぽん」

「あ、そりゃそうか」

「もうあと十分もしないうちに、モストがここに来ることになっている。そうしたら、ぼくはモストと共に光の魔法少女のところに向かうぽん」

「それが終わったら……華蓮と芽衣ちゃんに、心配しないでってちゃんと言ってきてよ」

「任せておけぽん。麻子も、疑われるような素振りしないように」

「それはこっちの台詞。うまくやりなさいよ、モア」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ちょ、ちょっと待って……だったら、もっと早くわたしたちに教えてくれてもよかったのに。その光の魔法少女は、華奏……わたしの妹だったのよ!?」

「そのつもりだったんだぽん、華蓮。でも……予想外のことが起きたんだぽん」

「予想外のこと?」

「ぼくは、見誤っていたんだぽん。モストが抱く目論見を」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ある意味で麻子を温存する事が出来たので、モアはいつものふざけた口調()からは想像がつかないほど優秀なのかもしれない・・。すると神官はあっちの世界ではエリートなのでしょうか。 [気になる点]…
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