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奈々は面倒くさそうにして説明しない。

全くこいつは。

溜息をつく悠斗の手を取り、奈々は歩調を早めた。


奈々の家は街のはずれにあった。

周辺は貧民街という表現が似合いそうなほど荒んだ雰囲気が漂っている。


「ナナ様、いまお帰りですか。その人は?」

「ナナ様、お帰りー今度うち寄ってってよ」

「ナナ様、今日も可愛らしいね。これ持っていきなー」


すれ違う住民のほとんどは暗い目をしていたが、奈々を見ると優しい顔つきに変わり話しかけてくる。


「すごいね奈々。

大人気じゃん。

それにナナ様って様付け?」


すれ違うたびに住民におすそ分けを渡された。

住民から様付けされるって、どんな扱いなんだ。


「気にしないでって言っているのに。

ほんと面倒くさい」


そうは言いながら少し誇らしげな奈々。

これだけ住民に慕われているのも何か理由があるのだろう。


奈々の家に着くころには、野菜や果物が入った大量の袋が悠斗の両手にあった。

奈々は手ぶらなのに。

解せぬ。



奈々の家はレンガ造りの平屋だった。

家族が住むにはちょうど良い大きさだろうが、女の子一人が住むには広すぎる。

こんなところに一人で住んでいるのか?


「さぁどうぞ」


奈々に案内され、家の中に入る。

中は物が少なく、こざっぱりとしていた。

悠斗は居間に通され、そこにぽつんと置かれている椅子に座る。


「いまお茶出すね」


奈々はキッチンに行くとやかんに手をかざし、何事か唱えた。

すると、やかんからゴボゴボという音がして水がたまる。

再び、奈々が何事か唱えると、今度はコンロのようなものに火がついた。

やがて、やかんから湯気が立ち上り始める。


「ええと、茶葉は茶葉は・・・あった」


戸棚から茶葉入りの袋を取り出した奈々は急須にそれを入れた。

一連の動作にも明らかに魔法と思われる力を使っていた。


「お待ちどうさま」


奈々が入れてくれたお茶を飲みながら、何から聞くべきか考えていると、奈々のほうもモジモジしている。


「どうしたの?」


「やっと人心地ついたね。それでね。

説明の前に、ちょっと見せてもらってもいいかなぁ。

悠斗の大事なもの」


は?

急に何を言い出すんだ!

俺の大事なものってまさか・・・

とつっこむ俺ではない。

おそらくレンスとの会話に出てきたあれだ。


「いいよ。ステータスだろ?」


ステータスというものが存在し、それは見ることができるらしい。


「で、どうやって見せるの?」


奈々がつまらなそうな顔をする。

なんだ?

何か期待していたのか?


「まぁいいや。

じゃあ見せてもらうね。簡単だから」


奈々はそういうと、「ステータス解析!」と呟いた。

その瞬間、奈々の目の前に何かが浮き出る。

奈々の正面にいた悠斗はびっくりして、おわっと声が漏れ出た。


「驚かせるなよ・・・」


「あはは。

悠斗の反応おもしろーい」


「おいおい・・・ったく。

で何これ?ゲームによくあるやつ?」


これは温厚な俺でもつっこまざるを得ない。

目の前には、漫画でよくあるようなホログラムがあり、文字が映し出されていた。


「しょうがないじゃん。

現実世界の人たちが望んだことなんだから。

それで、ええと・・・」


奈々は慌てる悠斗を軽く流し、ホログラム上に浮き出た文字を見つめる。

なんと書いてあるのだろう。

初めて見る文字だ。

やはりここが現実世界と異なる世界だということを再確認する。


「・・・ふーん」


奈々がぽつりと呟く。


「なんて書いてあるの?教えてよ」


「んーどうしようかなぁ」


「いや教えてよ」


もったいぶる奈々にやきもきする。


「自分で見ればいいじゃん」


「え?」


「自分でステータス開示してみたらいいよってこと」


「でも何て書いてあるか読めないし。

そもそも俺、魔法使えるのか?」


「使えるよ。

というか魔法じゃないから。

とりあえず試してみて」


俺はぶつぶつ言いながら試しに「ステータス解析!」と言ってみた。

・・・何もでてこない。


「なんも出ないじゃん」


「あ。悠斗が使えるのは解析じゃなくて開示ね。

解析は上級スキルだから今の悠斗には使えないよ」


違いがよくわからない。

怪訝な顔をしている悠斗の表情を読み取ったのだろう、奈々が説明してくれた。


ステータス解析は相手のステータスを読み取る希少スキル。

ただ、そのスキルがあっても相手とのレベル差が小さいと失敗する。

熟練度によってはステータス全ては見ることができない。


一方、ステータス開示は自分のステータスを見るだけのスキルで誰でも使える。

まだ納得できないところは多いが、とりあえず自分のステータスは見たい。


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