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それは、奈々と同じように俺が死んだのかということだ。
正直、そんな実感は全くない。
「俺は死んだってこと?」
「分かんない。
私は悠斗がここに現れるって聞いただけだし」
また不可解なことを言う。
現れるって聞いた?どういうことだ。
「それ誰に聞いたの?」
「予言できる人がいるんだ。
その人に聞いたんだよ」
「予言できる人?」
うーむ。
俺の頭が悪いのもあるが、全然分からない。
ちょっと考えてみる。
奈々は悠斗の目の前で死んだ。
だから死んだと言われても納得できる。
でも悠斗は違う。単に目眩がしただけ。
目眩の後に、倒れて死んだとも考えにくい。
俺が死んだのかは現時点だと不明だ。
次に、俺が現れるのを予言した人がいたということ。
現実世界のうさんくさい予言とは全く違うはずだ。
そういう能力があるのか。
「予言って、さっき言ってたスキル?」
「そうそう。
知り合いに予言のスキル持ちがいてね。
気まぐれなんだけど、そういう予言をすることがあるんだ」
その人は「奈々の待ちこがれた人が大草原に現れる」と予言したらしい。
この世界では珍しくないことだと奈々は言う。
「混乱するのも分かるけど、そういうものだから。
深刻に捉えず、とりあえず受け入れたら?」
確かにそうかもしれない。
深く考えるのはやめるか。
吹っ切れた方がいい。
せっかく異世界に来たのだ。
「現実世界にはもう帰れないの?」
「どうだろう。帰りたい?」
「いや・・・いい。
あんな世界はもううんざり」
現実世界は悠斗にとって辛いことばかりだった。
だから別に未練はない。
「奈々は知ってるんだっけ?
奈々が死んだ後、俺がどんな感じで生きてたか」
「うーん、まあ。
全部は知らないけど」
言いにくそうに話す奈々を見て、俺の事情をある程度知っていると確信した。
ならば、あることを確かめる必要がある。
「奈々は現実世界の俺に何をしたの?」
「んー?
悠斗には何もしてないよ。悠斗には」
心外そうに言葉を返す奈々。
確かに悠斗の同級生は散々な目に遭ったが、悠斗自身には何も起きていない。
「悠斗にちょっかいかける奴らにイタズラしてただけ。
ちょっかいかけるってことは、逆にされても文句言えないでしょ?」
逆に何が問題なの?と不思議そうな顔をする。
言われてみればそうかもしれない。