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「本当に久しぶりだね!
会えて嬉しいなー」
「でも悠斗って全然変わんないよね。
自信なさげでさ」
「いつも誰かにちょっかいかけられてない?」
一方的に喋る奈々。
昔から奈々はこんな感じだった。
お姉さん気質の強い奈々の尻にしかれていた日々を思い出す。
「私さ。悠斗いじめる奴、まじで腹立つんだ。
殺したくなっちゃう」
「あっちの世界じゃ殺すまでできないからさ。
ずっとモヤモヤしてたんだよ」
平然と出てくる「殺す」という言葉。
昔の奈々が使うことはなかった言葉だ。
この世界で奈々も色々あったのだろうか。
「ちょっと聞いてる?」
「ごめん、ごめん」
「まったくもう」
口を尖らせる姿は昔と変わらない。
そのことに少しほっとした。
奈々には聞きたいことが山ほどある。
「奈々、教えてほしいんだけど」
「んーなになに?」
無邪気に聞き返す奈々。
「奈々はなんでここにいるの?
生きてたってこと?
そもそもここはどこ?
さっきの化け物は何?
奈々は何を……」
つい早口でまくしたてる悠斗を奈々が制した。
「悠斗。落ち着いて。
そんな急に答えられないよ」
「そうだよね。ごめん」
悠斗は深呼吸をして気持ちを静める。
「順番に教えてあげる。
混乱しないで聞いてね」
悠斗は頷くと、奈々の説明を黙って聞いた。
奈々は交通事故の後、気付いたらこの世界にいたらしい。
この世界の住人の話から、自分が死んだことを悟った。
ここはユートピアと呼ばれている異世界で、魔法やスキルがあり、精霊と神が実在する。
さっきの化け物は魔狼と呼ばれる魔物だが、奈々にとっては雑魚なのだと自信満々に答えた。
魔法。精霊。
異世界ならではのワクワクする言葉が多いが、まず大事なことを聞かねばならない。