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ああ、やっぱり。

その顔は見覚えがあるどころではなかった。


橘奈々。

悠斗の幼馴染みだ。

親同士の仲が良かったために、生まれたときから一緒にいることが多かった女の子。

悠斗の初恋の相手だ・・・


だが、すでに死んでいる。

彼女が9歳のときに。悠斗の目の前で。


彼女の姿形は9歳のときのままだった。

見覚えのあった淡いブルーのドレスは彼女がよく着ていたお気に入りだ。


「いつも心配ばっかりかけて。

 私がいないと本当にダメね」


呆れ顔で奈々が言う。

そう言われるのが随分懐かしい。

幼稚園時代から、いじめられっ子の悠斗を庇っていたのは奈々だった。


「奈々?どうして?」


涙をこらえながら、かすれ声で悠斗は問う。

奈々は少しはにかんだような顔をしてまま、黙っている。

大草原に静かな時間が流れた。


「俺をずっと守ってくれていたの?」


ようやく悠斗は声を絞り出した。


予感はあった。

悠斗が呪われていると言われる原因は奈々ではないのかと。

悠斗の周囲で原因不明の事故が起き始めてから、高名な霊媒師を訪ねたことがある。

そのときに少女の霊が憑いていると言われたことがあった。

少なからず確信があった。


「当たり前じゃん。

 心配で心配で仕方なかったよ」


ようやく奈々が答える。

微笑む奈々は本当に昔のままで可愛らしい。

例え、同級生を恐ろしい目に遭わせた存在だったとしても。


「大変だったんだよ。

 悠斗は弱っちいからさー」


ついに涙があふれた。

涙はとめどなく流れ、頬をつたっていく。

母親以外、唯一の味方だった奈々。

自分自身が死んでもなおその思いは変わらなかったのだ。


「さぁ、早く行こ。

 ここにいたら、また雑魚に襲われちゃう」


そう言って奈々は急かす。


今、自分が置かれている状況はよく分からない。

なぜ自分がここにいるのか。

死んだはずの奈々がなぜ生きているのか。

さっきの化け物はなぜ死んだのか。


分からないことだらけだ。

でも、とりあえず信じよう。

死んでもなお、自分を見守っていたという少女を。

悠斗は前を歩く奈々を追いかけるように足を踏み出した。


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