世界の抑止力
それは、いつなんどきでも起こりうる話である。
ただ、偶然今この瞬間に己に降りかかっただけ。
なんてことは無い。
まだ続くはずだったその生命が突如無くなるなんてものもよくあるのだろう。
さて、そんなことよりも…だ。
選択は急がなくてはいけないのだろう。
きっと、いつまでも待ってくれるなんて容易いものでは無いはずなのだ。
「それで、どうするか決まったのかい?」
目の前にいる人物は僕を急かすように声をかける。
やはり、長考する時間はないようだ。
「ほんとうに、願いを叶えてくれるんですね?」
「もちろんさ、君のような素体はなかなかないからね」
嘘をつくような素振りも見せず、そう答える。
もう、結論は出た。
「わかった。望むとおりにしましょう。
だからどうか…どうかエリを…彼女を救ってくれ」
ただ一つだけの願い。
近頃では珍しく雪の降ったクリスマス。
彼女と共にデートへいき、結婚指輪を渡したその時に起こったできごと。
「そういう、素直なところ好きだよ?
もちろん、二言はないさ」
突如現れた強盗にエリは胸を刺され、指輪を盗んで行った。
突然の出来事に放心していたのだが、近くの人がその強盗を捕まえ、無事警察に連行されていった。
その後、突然この空間に呼ばれたのだ。
「それでは、これから世界の抑止力としてお願いね?
もちろん、存分なサポートもするし君の身体も造りかえるけども特に問題は無いよね」
否定の言葉は出せない。
でも、特に問題は無さそうだ。
「さぁ、これからお願いね。
コウヤくん」
そうして、僕……御影 光夜は世界の抑止力(道具)となった。
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「よろしかったのですか?
あのようなことを聞いても」
それは、彼がいなくなってから声をかけてくる。
「なに、心配はいらないだろう
彼のメンテも所有者の特権だ」
さて、どのような能力にしようか?
と。まるでゲームでキャラクターを作るかのように能力を割り振っていく。
「それでは、我々もサポートに回りますか?」
「必要は無いよ天使長。彼には彼で、自ずと動いてくれるだろうから」
頬を緩ませ、どこか楽しそうにする。
まるで、新しいおもちゃを手に入れた子供のような無邪気さだ。
「では、神様。くれぐれも過剰な干渉は避けてくださいね」
そう告げ、去っていく。
「過剰に干渉なんてする訳ないじゃないか
彼らを見てるだけで楽しいのだからね」
そんな、そんな声を聞くものはこの場にはいないのだった。