狩り 13
森の奥にぽつんと立つ家は質素でこじんまりとした丸太小屋だった。
隣に井戸があり、その傍には洗濯物が干されている。
周辺をぐるりと囲っている柵は、魔物対策なのだろう。
「ちょっと休んだらすぐ出ていけよ」
「泊ってもいいのよ。
両親は町に行ってて、明後日まで戻ってこないの」
対照的な双子に誘われ、フィーラたちは家の中に入った。
中に入るとおいしそうなスープの香りが鼻をくすぐった。
「よかったら、ご飯食べて行ってね」
フリージアはパタパタと小走りで自室に入って行く。
ローリエはどかりとイスに座って大げさなため息をついた。
「…あなたは、着替えなくていいの?」
フィーラが聞けば
「信用してない奴を、目の届かない所に放置できるか」
また睨まれた。
「全く、あいつが騒がなきゃつれてこなかったものを」
「なんだか、苦労してるのね」
フィーラは机の上にちょこんと座る。
「他人に分かってたまるかよ」
「お前なあ」
カルが怒ろうとするのを、ヒースが無言で首を振って止めた。
「…座れば?
それくらいは許してやるよ」
生意気な態度で進められた椅子に、カルとヒースは無言で座る。
カルは黙っているが、今にも文句を言いだしそうな雰囲気だ。
ヒースはといえば
「なんだか、鼻がむずむずします」
少し落ち着かなさそうだ。
「どうしたの?」
スープの匂いが苦手なのかと妖精が聞けば
「いえ、スープの香りに混じってなにか…」
「それ、ハーブのせいだわ」
ひょこりと、部屋から着替えたフリージアが顔を出した。
「お肉の臭みを消すために使ったのよ。
ほら」
キッチンから草の束を取り出して彼女はヒースの鼻先に持って行った。
「う…」
あからさまにヒースの眉間にしわが寄った。
(あ、珍しい)
はっきりと嫌な顔が出たヒースを、妖精は内心珍しいと思って見た。
「鼻が、むずむずします」
「あら、ごめんなさい」
フリージアはハーブを元の所に戻す。
「ローリエも着替えていらっしゃいよ」
「…分かったよ」
ローリエは気が進まなさそうに、部屋に消えていった。
どうやら妹と同じ部屋を使っているらしく
「フリージア!
濡れた服を床に置いたままにすんな!」
叱り声が聞こえてきた。
「あら、ごめんなさい」
ぺろりと、彼女は友達に舌を出してみせた。




