狩り 9
「楽しそうね」
見れば、金の髪と黒いスカートの端が風でふわりと揺れている。
「誰かいるの?」
フィーラが聞けば
「いるわよ」
ひょこりと、12歳くらいの女の子が顔を出した。
「こんにちは」
ウェーブのかかった腰まで伸びた金の髪。
それをまとめる黒いリボンと、同色のスカート。
くりくりとした灰色の瞳が、フィーラたちを興味深そうに見つめている。
「妖精さんがいるなんて珍しいのね」
ぴょん、と跳ねるようにして少女は近づいてきた。
「わたしはね、フリージア。
ここへはたき火用の枝を拾いに来たのよ」
「あなた1人なの?」
妖精が聞く。
ニコニコした、可愛らしい相手に敵意は感じられない。
「ううん、兄弟も一緒。
近くにいると思うけど…待ち合わせにはまだ早いからどこにいるかはしらないわ」
「手分けして枝を拾ってるのね」
「そういうこと」
フリージアはちらりとカルとヒースを見る。
「あなた達は狩りをしてるの?」
「はい、そうですよ」
ヒースが答える。
「でもさ、全然うまくいかないんだ」
カルがおおげさにため息をついた。
「知ってるわ。
さっきもめてたの、聞いてたもの」
「そんなに騒いでたかしら…」
恥かしいとフィーラは顔を赤くした。
「うふふ。
見てたらとっても賑やかでとっても楽しかったわよ」
「褒められてる気がしないわ…」
「そう?でも、そうね。
のぞき見はお行儀が悪かったかも。
ごめんなさいね」
ペロリと舌を出す少女。
それからスカートのすそをふわりと翻し、背を向ける。
「お詫びに、わたしの兄弟に狩りのこときいてあげるわ。
ついてきてちょうだいな」
「あれ?
どこにいるか分かんないんじゃなかったの?」
弾むように歩き出した彼女の後をフィーラは追いかける。
ヒースとカルは目をちらりと合わせて、とりあえず後に続くことにする。
「分かんないわよ」
隣に飛んでくる妖精に、フリージアは頬をあからめ楽しそうに見る。
「でも、なんとなく歩いていれば会えるのよ」
「どうして?」
「わたしとあの子は2人で1つなんですもの」




