狩り 6
無暗に魔物を倒してもドロップ品が落ちてくるわけではない。
そもそも、周囲にどんな魔物がいて、どう見つけるかも彼女は知らない。
それはカルとヒースも同じで
「オレ、狩りはしたことないや」
「右に同じです」
経験豊富とは言い難かった。
「あ、でもさ、オレは魔物がどういうところにいそうとかは分かるよ!」
妖精は森に住むことが多かったため、魔物に襲われることも少なくなかったという。
だから、どういう所にどんな魔物がいるかぐらいの知識はあるとカルは言う。
「でも、基本的に逃げる知識しか持ってないから狩りは分かんないや…」
そもそも、妖精と今の人間の姿では勝手が色々と違うだろう。
「適当に森をぶっ飛ばしてみる?」
だからと言って、過激な対応はやめなさいとフィーラは止める。
「とりあえず、狩れそうな魔物を探しませんか?」
唯一まともなヒースの言葉で、3人はカルの知識を頼りに森を歩き出す。
あまり凶暴な魔物は手に追えなので狙わない。
となると、草食で小柄なものを中心に狙っていくしかない。
しかし、力がないものが生き残るために必要なのは臆病さ。
音や気配を消すという基本的な狩りの能力のない者達が狙っても
「あー!また逃げられた!!」
結果は芳しくない。
カルは頭をかきむしる。その隣で
「ゲームならエンカウント簡単なのに…レアモンスター狙ってるわけじゃないのに…」
フィーラは現実の厳しさを味わっていた。
「うーん…一度作戦を立て直しませんか?」
ヒースだけは特に焦る様子も落ち込む様子もない。
顔が無表情はいつものこととしても、口調にも揺らぎはなかった、
訝しんでフィーラが聞いてみれば
「まあ、ある程度は予想してましたので」
ヒースは少し迷った後に、控えめな声で答えた。
素人が無暗に手を出してもうまく行くかは分からない。
そう思っていたのだという。




