狩り 4
「先立つものはお金かあ…」
世知辛い世の中に、妖精はがっくりと肩を落とす。
「どの世界でも結局は一緒なのね…」
道の端でヒースの財布の中身を数えながらフィーラはため息をついた。
この世界のお金の価値はまだなんとなくしか分かっていないが、それでも布袋の中身は先が不安になるくらい心もとない状態だった。
「もう、早く言いなさいよ!」
今まで安宿を使っていたとはいえ、町につけば何かしらでお金は使う。
今の状態では次の町についた時は破産確定だ。
もちろん、カルがお金なんて持っているはずもない。
「妖精は人のお金なんか使わないからなあ」
ごめんねと謝るが、彼が悪いわけでもない。
「確かに、頼りっぱなしのあたしが悪かったけどさ、ヒースももう少し言ってちょうだいよ」
隠して悩まれても気分がいいものではないと言えば
「すみません」
しゅん、と元墓守は俯いた。
「その…頼りのない男だと思われたくなくてですね…」
「今の時点で十分株も男も下がってるわよ」
「………」
容赦ない言葉が、ヒースに刺さって言葉が返せない。
そして、慰めはカルの気の毒そうな視線だけ。
「早くお金を稼ぐ方法を考えないとねえ」
意中の妖精は既に思考を切り替えてしまっていた。
「んー…でも、この世界ってどういう風に稼げばいいのかしら?」
元の世界ではバイトなどの手があった。
しかし、この世界で仕事の手伝い募集という概念があるのか分からない。
仮にあったとしても、時給がどれくらいなのか。
どれだけ稼いでいれば、次の町まで持つのか。
バイトをするにしても、長い間滞在するならそこにも費用がかかる。
(じゃあ、逆に何かを売るとか?)
今まで読んできた異世界転生物をフィーラは思い出す。
(元の世界にあって、こっちにない物を売る、とか?
でも、それって何があるのかしら?
そもそも、そう簡単に作れたり売れるのかしら?)
大体、作る具体的な物も思いつかない。
物語の主人公のように特定の、深い知識もあるわけでもない。
(うーん…)
物語のようにはうまく行かないものだと頭を悩ませていると
「無難に、狩りとかすればいいんじゃない?」
カルが助け舟を出してくれた。




