狩り 1
「とは言ったもの、なーんかモチベーション上がんないのよねえ」
王都に向かって出発してから1日後。
妖精のテンションとは対照的に、空は晴れ渡り日差しも程よく暖かい。
「どしたの?急に」
肩に乗っている妖精のつぶやきに、カルは足を止めた。
「モチベ…なに?」
「気が乗らないってことよ」
そう、出発するとなったものの、この妖精は一向に乗り気になれないでいたのだ。
「とりあえず王都を目指そうってなったけど、ついたからって何をするわけでもなし。
なーんかやる気でないのよねえ」
飛ぶ気分にすらなれず、こうしてカルの肩を借りている始末だ。
「王都が目的地では気に入りませんか?」
隣でヒースが眉をひそめる。
「王都が問題ってことじゃないのよ」
そう、彼女のやる気が起きないのは、目的地が原因ではない。
お姫様をさらわれたわけでもない。
王様に頼まれたわけでもない。
使命に燃える心もない。
まして世界に愛着などあるわけも無し。
(ゲームの主人公みたいなやる気って、どこに売ってるのかしら)
元の世界にいたころから、積極的に外出する方ではなかった。
自分の部屋という勝手が知れた自由な空間。
そこでくつろぐことが唯一であり最高のストレス解消方法。
(それが今ではどうよ)
四六時中、日の下にさらされ、仕方がないかもしれないが、町にいれば物珍しそうに見られる。
(しかも、隣にいるのは顔面偏差値高レベルの能天気と、同じく高レベルの無表情)
隙あらばカルに妖精の流儀と言われてキスをされそうになり、引きこもり一歩手前の少女には中々ハードな状況だ。
(なんで物語の主人公はどうにかしよう!みたいに前向きに考えられるのかしら)
つくづく、異世界転生に向いていないとフィーラは思う。




