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フィーラ  作者: タピオカ
39/60

好きの意味なんて

 好きですと告白されたのは、彼女にとって初めての事だった。

 今までそう言った類のものは、物語の中だけの話。

 主人公とヒロインがストーリーを盛り上げるための必須条件。

 つまりは、教室で隅にいた少女には無縁だと思っていたもので

「あなたが好きみたいです」

 その言葉に

(どう受け取ればいいのよー!!)

 フィーラは内心頭を抱えていた。

(しかも、みたいってなに!?

 いや、確かによく見たら結構整った顔してるけど、好みじゃないと言えばウソになるけど、だけど…)

 白銀の月明りの下。

 映し出されるのは

(相手ゾンビだし!!)

 泥だらけの上に、所々血が滲んでいる元墓守。

「死体は、未練を求めて土からはい出ます」

 固まっている妖精を前にして、ヒースは話し続ける。

「私にはもう、何も残っていない、だから未練なんてなにもないと思っていました。

 でも、浮かんだんです。

 あなたの顔が。

 あなたは私の未練です。

 あなたと共にいさせてください」

 スッと、流れるように彼は妖精の小さな手にキスを落とした。

 人に戻った平凡な少女は、顔を真っ赤にしながらもどこか泣きそうな顔をしていた。

「やめてよ。

 なんか、告白みたいじゃない。

 そういうこと言われても、困るわ」


 自分はこの世界に関係のない存在。

 いつかは帰ってしまう。

 つながりなんかを持っても、邪魔になるだけ。


 思っているからこそ、どうしていいか分からず彼女は首を横に振る。

「だ、大体その好きはきっと友達とかに向けるものでしょう?

 ダメよ。

 そういう誤解されること言ったりしちゃ」

「?」

 ヒースは首を傾げる。

「なによく分かんないって顔してんのよ」

「好きに種類ってあるんですか?」

「は?」

「私は、あなたにただ会いたくてここにいます。

 それでは、ダメなんでしょうか?」

「それは…」

 純粋すぎるのだ。

 ずっと1人でいた弊害というものなのだろうか。

 思ったこと。

 伝えたいことをただまっすぐに伝える。

 そのことに抵抗や、隠す、ましてや感情に種類があることを知らない。

 向けられたものはただまっすぐで、それに押されるようにしてフィーラは妖精に戻った。

「と、とりあえず服とかなんとかしなさいよ!

 泥だらけだし、血だらけよ!」

 言われて初めてヒースは自分の格好を見おろした。

「確かに、そうですね。

 どこかに井戸があったと思いますので、少し洗ってきます」

「そうしてちょうだい」

 ヒースが行ってしまうと、フィーラは大きく息を吐いた。

(あー、なんかもう、いっぱいいっぱいだわ)

 意味は分からないが告白までされるとは思っていなかった。

(もう、帰って自分の部屋でゴロゴロしたい)

 こんなどこかで聞いたような物語の世界などいらない。

 カルの寝顔を見ながら、彼女は思った。

(これから、どうなるのかなあ)



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