墓守 6
(またあの変な奴に襲われてたらどうしよう)
フィーラの不安とは裏腹に、カルは程なくして見つかった。
墓場の一番奥。
窓から見えない死角の部分でしゃがみ込んでいたのだ。
「カル!」
呼びかけようとしたところを、ヒースに止められた。
「なによ」
「しー…」
人差し指に口当て、耳を澄ませるように指示する。
訝しげに妖精がそれに従ってみると
「ひっく…ひっく…」
鳴き声が、聞こえた。
カルは泣いていた。
声を押し殺し、肩を震わせてたった1人で泣いていた。
「ごめん、ごめんね…」
よく見れば、彼の前には小さな土山が出来ていた。
カルの手は土で汚れている。
「みんな…ごめんね…オレだけ生き残って…ごめんね」
ハッとして妖精は口をふさいだ。
「みんなのおかげで生き残ったけど…女神さまの妖精に会えたけど…不安だよ。
オレ、そんなすごいことできないよ…
なんで…なんで、みんないなくなっちゃったんだよ」
カルの前に出来た土の山。
あれはお墓なのだ。
恐らく、彼の目の前で消えた何人もの妖精仲間達の。
(当たり前だわ)
家族同然だった存在が目の前で殺されていったのだ。
悲しくないわけがない。
後悔がないわけがない。
残されたのは、仲間の期待。
それは、きっととても重い。
「オレ、馬鹿だからさ、これからどうすればいいかなんて分かんないよ…」
ずっと隠していた。
隠して、フィーラに笑顔を向けてくれていたのだ。
(それなのに、あたしは…)
どれだけ拒絶をされても。
どれだけこんな世界しらないと言われても。
大丈夫だよと、言ってくれた。
「うう…うわああああん!!!」
その嘘を、優しさを妖精は何度投げ捨ててきたのだろうか。
「ごめん…ごめんさい…」
その謝罪は届かない。
だとしても、言わなければ耐えられなかったのだろう。
少年はそれでも、見つからないように必死に声を押し殺しているのだ。
泣くことすら、自由にできないのだ。
(カル…ごめんなさい)
泣き声が刺さるようだった。
フィーラは背を向けた。
「戻りましょう」
「いいんですか?」
「あたしが見て良いものじゃないわ」
胸が痛かった。
(ごめんなさい)
それだけしか、思えなかった。
(ごめんなさい)
これを見てもまだ、世界を救うなんてできないと思う自分がいたから。




