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フィーラ  作者: タピオカ
3/60

2次元は見てるだけでいいです 3

「これは夢でもなんでもないのです。

 わたくしは、世界を救う存在になりえる者を探し、ようやくあなたに巡り合えたのです」

「ど、どういうことですか?」

「あなたは、別の世界のわたくしなのです」

「はあ?」


 あたしはあなたほど美人じゃありません。

 化粧もできないし、はやりについて行けない隅っこ女です。


「順を追って説明しましょう」


 アイリスはあたしを体から離した。


「まず、わたくしはあなたと生まれた世界とは別の世界。通称『イリアス』と呼ばれる世界を統治する神です。

 けれど、最初から神だったわけではありません。

 生まれは人間でした。色々な理由があって、今、このような存在になっています。

 まあ、ここは長くなるので省略いたしましょう」


 え、めっちゃ気になる。

 なんかのフラグになったりしない?


「長年世界に恵みを与え、潤いをもたらしていました。ところが今、わたくしは世界との繋がりが絶たれてしまい、恵みを与えることが出来なくなってしまいました。

 このままでは滅びを待つだけです。

 世界が滅べば、わたくしも死んでしまう。

 なんとかしたいのですが、わたくしはここから出ることがかないません」

「なんで?誰かに閉じ込められたの?」

「ええ。

 何者かは分かりませんが、わたくしをこの空間に封印した者がいるのです」

 あれ?でもおかしくない?

「あなたって神様なんでしょ?

 なら、世界で敵う者なんていないんじゃないの?」

「ええ。それがわたくしも不思議なのです。

 一体、このような力、どこで手に入れたのか…」


 あー、RPGぽいわあ。

 謎の力とか勢力の匂いするわあ。


「わたくしはあがき、そして気づきました。

 自分の世界には干渉できないけれど、他の世界にならほんの少しだけ手を伸ばせることができるのだと。

 そして、あなたを見つけました」

「はあ…」

「世界は感じないだけで、実は隣り合って存在しているのです。

 同じような歴史をたどる世界や、そもそものルールが異なる世界。

 神以外には不可能ですが、やろうと思えば他世界の干渉も容易いことなのです。

 そうですね。大きな家の中に壁を隔てていくつも部屋があるようなものでしょうか。

 そこに住む住人はそれぞれ違いますが、扉を開ければいつでも会うことができる。

 でも、普段はそんなことをする必要がないから、干渉しないだけ。

 分かりますか?」

「分かったことにします」


 チュートリアルは毎回なんとなくで飛ばす派です。


「わたくしは探しました。

 どこかの世界に、わたくしと同じ魂を持った人間がいるはずだと」

「なんで?あなたはあなた。あたしはあたしでしょ?同じ存在っておかしくない?」

「ええ。正確には同じではないです。

 先程も言いましたが、世界は隣り合っています。そのせいで、わずかながらに影響を与え合っているのです。その結果として、時折、性質の良く似た魂が複数の世界に生まれることがあるのです。タイミングや時間はバラバラですが、力と条件さえ合えば、こうして出会うことも可能なのです」

「あー、うん。分かった」


 設定には極力突っ込まない主義を発動します。


「わたくしは探し、そしてあなたを見つけました。同じ性質をもち、なおかつ違う世界の住人のあなたなら、ここから抜け出ることが可能です。ここは、あくまでわたくしを閉じ込めておく場所ですから、存在の違うあなたなら、そのルールからギリギリ抜け出せるでしょう。

 あなたにはここを出て、世界を救う手伝いをしてほしいのです」

「手伝い?」

「はい。

 わたくしは、4つの力あるものを依代にして封印されています。

 それを壊して欲しいのです」

「どうやって?」


 アイリスは微笑んだ。


「わたくしは閉じ込められる寸前に、自身の力の一部を4人の者に与えました。

 それが誰かまでかは選ぶ余裕はありませんでしたが、適合するに値する者達に宿っていることでしょう。

 神の力を宿す彼らにならば、壊すことは可能です。

 あなたには、彼らを見つけ出し、導いて欲しいのです」

「いやいや、無理でしょう。

 導くってなにすればいいのかもわかんないし」


 物語の勇者なら任せてくださいの1つも言うかもしれないけど、あたしはそうじゃないもん。


「間違った考えで力を使わないように、心の依代になってほしいのです。

 大丈夫です。だってわたくしとあなたは似てるのですから、できます」


 いや、そりゃあなたは世界っていう、でかいもん統治してる神様かもしれませんが、私は違います。

 成績のいいやつが、軽々しく勉強なんてコツさえつかめば簡単だよとかいうくらいのイラ立ちを感じます。


「あなたとわたくしは繋がっています。

 困った時は、出来うる限り力になりましょう」

 そんな潤んだ目で見つめられてもさあ。

「それに、依代は閉じ込められているわたくしにしかわかりません。

 つまりは、わたくしと繋がっているあなたにしか分からないのです」

「いや、無理だってば。他の世界の自分を探してきてよ」

「もう、時間がないのです」


 とんっと体を押された。

 とたんに、穴の中にまっさかさまに落ちて行くような感覚。


「ちょ、ちょっとお!?」

「頑張ってください。

 あなたには、世界に適応する姿をプレゼントします。

 もとの姿に戻りたいときには、愛を体につけてもらいなさい」

「話を聞けええええ!!!」


 強制イベントは心の準備をしてから起こしてください!!

 こうして、理不尽きわまりないプロローグが終わりを告げ、うれしくもない本編がはじまった。

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