廃村に潜る者 5
噂によれば1年ほど前に突然流行りだした疫病で滅んでしまったらしい。
生き残った人達によれば、呪いによって病はもたらされたというのだ。
なんでも、ここには気の触れた男が1人、住んでいたらしい。
ほとんど人と話したがらず、ずっと家に引きこもっていた。
けれど、よなよな刃物をもって村をうろつき、であった人間を切り刻むと言う趣味をもっていた。
そんなことをしても捕まらなかったのは、犠牲になった人間の体も証拠も、何一つでてこなかったからだ。
男は遺体を全て地下の隠し部屋に置き、そこで夜な夜な怪しい儀式をしていたらしい。
実際、男の家からは悲痛な叫び声やうめき声が何度か聞こえていたらしい。
そして、1年前の夜。
男の家に、白い光が落ちたそうだ。
それからすぐに病気が蔓延し、村は滅んだ。
男は今でも村に住み着き、知らずに立ち寄った者達を襲っているのだと言う。
「そんな怨念がこもってそうなところいやだあ!」
羽をパタパタさせて、フィーラは首を横に振った。
(絶対ダメなフラグが立ってるじゃない!
そんなフラグ回収したくなーい!!)
この世界で何をしたいかなどはまだ決まっていない。決まっていないが、危険に飛び込むほど彼女は物好きではない。
しかしカルはノンキなもので
「フィーラは怖がりだなあ。
なにか来たって最悪逃げればいいじゃん」
「幽霊に逃げるなんて意味ないわよ!
しかも、幽霊って面倒なのよ。気づかないうちにこう、そうっと近づいてきたり、誰もいないはずなのにすすり泣きが聞こえたりとか…」
―しくしく…―
「そう、こんな風に…」
―うえええん―
「あら?」
―ひっくひっく―
「誰か泣いてない?」
カルが辺りを見回す。
「で、でた」
さあっとフィーラの顔色が青くなる。
―うわあああん―
「あ、見て、フィーラ。あそこ…」
「いやああああ!!呪われるううううう!!!」




