廃村に潜る者 4
「ねえ、本当に行くつもりなの?」
思い立ったが吉日とばかりに、半日かけてたどりついた廃村の前。
フィーラはものすごく乗り気じゃない顔をしている。
「考え直しましょうよ。
せめて、探検は明日とかさあ」
辺りは日が沈みかけ、話している間にもどんどん暗さが増してきている。
「大丈夫だって。
オレ、意外と夜目きくし。
それとも、もしかして怖いの?」
「そ、そんなことは…」
言いつつ、目の前の景色に妖精は顔をひきつらせた。
廃村というだけあって、まるで幽霊でも出そうなくらいの雰囲気。
普段なら哀愁と温かみを感じさせるオレンジ色の夕日が、やけに不気味に見える。
傾いた木製の廃屋から長く濃く伸びる黒い影。
目に見えないところから、何かが覗いているのでは、などという妄想が勝手に彼女の頭に湧き上がる。
(うう…ゲームだったらとくにホラーステージは苦手じゃないのに)
画面の向こうで見る物と、実際にこうして体験するものとでは、随分と差がある。
(不気味なBGMとか流れてきそう…ていうか、流れた方がまだマシかも)
聞こえるのは、乾いた風の音と、自分達の息使いだけ。
まとわりつくような静けさが、恐怖の想像を掻き立てる。
「やっぱり、明るくなってから出直しましょうよ。
こういう所ってなんか出そうだし」
「なにかって?」
「その…お化け…とか…」
ごにょごにょと彼女が言えば
「お化け?あははは!
大丈夫だってば」
カルはあっさりと笑い飛ばしてみせた。
「そんなのいないってば」
「で、でも、ここって変なウワサいっぱいあるじゃない!!」
彼女の言う通り、町の住人に聞いてみたところこの廃村にはいくつか噂があった。
それも、あまり楽しくないものばかり。
一言で言うなら、「呪われた廃村」




