廃村に潜る者 2
カルの体はマナを練りこんだ特殊な土でできている。
詳しい仕組みは分からないが、痛覚はないし空腹も感じない。
見方によってはかなり便利な体だ。
しかし、もろすぎた。
ちょっとした衝撃で関節部分が外れ、すぐにバラバラになってしまう。
拾って押し込めばすぐにくっつくが、不便極まりない。
町に来た時は、住民にぶつかって足が外れてしまった。
その時は義足ということでごまかしたが、この先のことを考えるとこのままではいけない。
「アネモネの一欠けらがまたいつ来るかも分かんないしなあ」
カルの言う通り。戦ったり逃げる時にバラバラになっていては話しにならない。
「マナのこととかに詳しい人っていないかなあ」
「カルは知らないの?」
「だってオレ元妖精だよ?
妖精はマナの研究なんてしないよ。
そんな物好きなことするのは人間とか。他の種族くらい」
「ふーん?」
頷きながら、フィーラは考える。
(情報収集が必要ね。って言っても、知り合いもいないしどうすれば…)
地道に聞き込みしかないのだろうか。
(でも、どうやって聞けばいいのかしら?)
体がバラバラになるので詳しい人を教えてください。
なんてことは絶対に言えないのは彼女も分かっている。
(あーあ、ゲームだったら適当に話しかければ勝手にイベントが発生したりするのになあ。
せめてここが、知ってるゲームとかマンガの世界とかだったらもう少し色々分かったのに)
シナリオも手がかりもない。
ゲームなら話しかければキャラクターが勝手に喋ってくれる。
しかし、ここでは自分で考えなくてはいけないのだ。
「せめて、ステータスとか選択肢とかあればもう少し分かるのに」
つぶやくと、カルが
「なにそれ?」
首を傾げて聞いた。
「んー?あたしの元いた世界ではさ、こう言う時色々と教えてもらえる補助機能とか、ステータスっていう…なんていえば良いのかな?
自分のことを数字で教えてくれたりする機能があったりするのよ。
あと、選択肢っていう、選べば勝手に進んでくれる機能とか」
「へえ?よく分かんないけど、なんか変な仕組みだね」
「変?」
確かに、知らない者にすれば分からない仕組みかもしれない
「便利じゃない?勝手に色々と教えてくれるのよ?」
ゲームのなかだけだけど、と心の中で付け加える。
「便利だけどさあ。
自分のことを、誰かに勝手に判断されてるってことでしょ?
それってさ、つまんなくない?
オレ、自分のことは自分で知りたいなあ。
分かることも、分かんないことも。
自分で決めて、歩きたい」
「それって、すごーく、不安じゃない?」
ステータスもパラメーターもフィーラにとってはゲームの話。
現実世界でもあればいいのにと何度思ったことか。
「フィーラがいるから、不安じゃないよ」
「なんでそういうことになるかなあ」
ばかだなあと彼女は呆れたように笑う。
「でも、カルは強いね」
「そうなの?バカって昔から言われてたけど…」
「ああ、そうとも言うわね」
「ひどいよお!」
「あはは」
2人でじゃれ合っていると
「ちょーっとそこのお2人さん」
不意に、声をかけられた。




