アリをつぶす
「なんか面白くなるといいなあ」
月が照らす夜の森。
聞こえてくるのは虫のさざめき。
木の葉がかすかに掠れる音。
そして
「ふふふふ」
こらえきれない笑い声。
「上機嫌だね」
愉快そうな声に、金髪の人間は反応した。
「おもちゃ、見つけたんだあ」
「えー?どんなのどんなの?」
「それはねえ…」
「あ、あの…」
2人の声に、気弱そうな声が割って入った。
「その前に、な、なんでびしょ濡れなの?
か、風邪ひいちゃうよ?」
「あーこれ?」
金髪の人間は濡れた髪をかき上げた。
「おもちゃが裸だったから、替えの服あげちゃったのさ」
「ばっかじゃねえの」
いらだったように、とがった声が飛んできた。
「いきなり集めたから何かと思えば、くっだらねえ。
無駄話すんなら、さっさと用件話せよ」
イラ立ちをごまかすように、声の主はぶちぶちと地面の草を引っこ抜く。
「大体、もう勝ちは見えてんのに、余計な手間増やすんじゃねえよ」
「おや、ゲームが一方的だとつまらないじゃないか」
「は?ゲーム?」
ぶちっと、一際大きく草をちぎる音。
「そうじゃねえだろ。
目的忘れてんなら、ぶっ飛ばすぞ」
「おお、こわーい」
「ケンカは止めてよお」
「あはは!やっちゃええ!!」
いらだつ声に、おどける声。
怯える反応に、はしゃぐ者。
「お前はいつもいつも、そうやってふざけやがって」
「しょうがないだろう?ボクの性分なのさ」
「もう、落ち着いて話そうよお」
「殴る?ねえ、殴る?あははは!!」
「てめえもさっきからうっせえんだよ!!」
「やめてよお」
「泣くんじゃねえよ!」
「うえーん」
ポンポンと飛び交う言葉に、金髪の人間はおかしそうに笑う。
「やっぱりみんなといるっていいねえ
あはははは!!」
混ざる混ざる。
笑い声と騒ぐ声。
草木も眠る丑三つ時。
「笑ってんじゃねえよ!」
「わあああん」
「やっちゃえ!」
遊び足りない子供のように、4人はその場でじゃれ合うのだ。
まるで遊び足りない子どものように。
「あはは!それでさあ、みんなで話し合いたいんだよねえ」
「何をだよ!?」
「おもちゃの扱い方」
子どもはいつだって自由気まま。
「どうしよっか?」
悪意もないまま、アリをつぶす。




