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2次元は見てるだけでいいです
卑怯です。
卑怯者です。
私は、きっと、誰よりも狭くて醜い心を持っています。
どんな時でも自分が一番大事で、きっと何かあれば友達でも簡単に裏切ってしまうでしょう。
例え、人を轢いてしまったとしても、逃げるかもしれません。
それなのに、普段は当たり前の顔ができるのです。
その辺にいる一般人の顔ができるのです。
そのことが心底嫌でした。
何よりも、誰よりも、自分が一番嫌いです。
だから、ここじゃない世界の話が好きでした。
ファンタジー。
転生物。
勇者。
伝説。
恋愛。
友情。
努力が報われる世界。
ここではありえない心躍る物語。
始めて読んだ時から、大好きでした。
どんなことが起こったとしても、これがあれば生きていける。
だから現実の自分はどれだけ醜くていい。
ここだけは、穢れのない手の届かない存在でいて。
そう、願っていたのに。
「あなたに世界を導く手伝いをしてほしいのです」
どうしてこうなった。