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秘密をあばけ  作者: omi
幸せはどこにある編
30/46

SSー22.湿原の毒、実も葉も土も


「この状況は一体……?」

「わ、可愛い! 私の見立て通りね」

「そしてこれは一体……」

「細かい事は気にしない。ほら、楽しみましょ」


そう言って手を引かれた。会場は煌びやかなシャンデリアで照らされている。私、場違いなのでは?


「そんな怯えないで。大丈夫よ、(すすき)に見つかったりはしないわ」

「あ、いや。そうですね……」


見つかるのは怖いです。目の前に立つスレンダー美女に出会うのは三回目。なんだかな、この三回目っていう数字は。観月さんといい、この人といい。三という数字に数奇な運命でもあるのだろうか。


「それにしても、凄いですね。なんだか位の高い人達ばかりな気がします」

「気がするのではなく、そうなのよ。実際。例えば社長の娘とか、IT企業の社長とか」

「うやぁ……」

「そういうパーティーだから、仕方ないのよ。でも、お金持ちな一般人もいるから大丈夫よ!」

「それすでに一般人ではないです……」



何故このようなパーティーに、ど庶民の私がいるかというと。ここからは回想である。

律さんにスーツを選んで欲しい、と言われたのが始まりだったように思う。



『スーツを? お仕事用ですか?』

『そ。でもいつものお仕事と違くてね。パーティーファッションみたいな』

『お仕事でパーティーですか! なんだか芸能人みたいです』

『そんな凄いものじゃないよ。だけど、こういうのは初めてだから。藤花ちゃんに選んでもらいたいと思って』

『わ、私が?』

『そう。君が』


にこりと笑ってプレッシャーを与えてくる。


『そんな大それた事を……』

『ネットで見て一緒に考えてもらうだけで良いから。ほら、こっち』


そう言って、律さんが開いてるパソコンを覗き込めば、ずらりと男性モデルの写真が並んでいた。皆、オシャレスーツ着てる。


『ううむ、律さん、足が長いからスーツ似合いますよね』

『褒めても何も出さないよ?』

『事実ですー。あ、これ素敵』

『ふぅん? こういうの好きなんだ』

『ネクタイカラー……ブルーとか。あと、これ中に着てるグレーのベスト、好きかも』

『藤花の好みはそこね。なるほど』

『でも律さんはこっちの、ワインレッドのネクタイの方が似合いそうです』


指差したのは、ちょっと暗めのワインレッドのネクタイ。そしてグレーのベストに薄くラインの入ったスーツ。に、似合う、絶対。


『あぁ、この色』

『ダメでした?』

『いや……藤花から貰ったネクタイピンと合いそうだなと思って』


ぼんっと。顔が爆発するかと思った。私が前にあげたネクタイピン。時々、スーツで会う時にも付けてくれていて、見る度に顔がにやけてしまうのだ。私があげた物を、律さんが使ってくれている。とんでもない至福のひとときだ。


『じゃあこういう感じに、しようかな』

『ぜひ』

『時間ある時お店に行ってみるよ。ありがと』

『ーー律さん』


私は大真面目な顔して、彼を見つめた。


『願わくば、律さんのこのスーツ姿を見たいのですが』

『んー? そうだなぁ』


律さんは少し考える素ぶりを見せて、パソコンのマウスをカチカチっと弄った。


『藤花ちゃんもこういうパーティードレス着てくれたら考えるかな』


まるでダンスパーティーにでも呼ばれたかのようなドレス。裾がふわっと広がり、ミモレ丈くらいの長さを保ってる。


『可愛い……』

『いつか着てみせて』



そんな日はきっと来ないと思っていた。だって結婚式の参列者でも着ないようなドレスだ。それがまさかこんな形で実現するとは思っていなかった。


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