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秘密をあばけ  作者: omi
ぶつけ合う本音編
29/46

SSー21-2.


どちらかともなく、唇を合わせた。それは少し触れ合うだけですぐに離れていく。律さんの瞳が透明な膜で覆われているようで、光って綺麗だなと思った。


「私は律さんから離れていこうだなんて思った事、ないですよ」

「あぁ」

「私がどれだけ律さんを好きか分かっていないようですね」

「そうだね」

「好きですよ、律さん」


ん、と返事だけして強く抱きしめられる。首筋に擦り寄るようにして深く体が重なる。なんだか甘えただ。


「ね、藤花ちゃん」

「はい、なんですか?」

「藤花ちゃんからして欲しいな」

「……? なにがでしょう」

「キス」


きっ。


「何故そんな話になるのですか!」

「だってして欲しいから」


ぬぬぬ。そんな風に甘えられたって、甘やかす訳にはいかないですよ!


「ね、藤花」

「そんな風に名前呼んだってダメです」

「なんで? だって藤花だって好きでしょ?」

「は!? 好きって……そりゃ好きですが!」

「素直。はいじゃあ」


ん、と。目を閉じられキス待ち顔される。なんなんだ、この人。なんでこんな綺麗な顔してるんだ。まつげ長っ。肌つるつる……これでアラサーとか信じらんない。

ここは度胸だ、私よ。その閉じられた顔、唇。私が頂きます。両頰に手を添え少しずつ近付いていく。形の良い唇は柔らかく、少し乾いていた。その事実に、背筋がぞくりとしてこの感覚はなんなのだろうとふと思った。


「これだけ?」

「う……」

「藤花ちゃんなら分かってるでしょ。その先」


そう囁かれて、心臓がばくばくとした。分かっている。律さんが望んでいる事、して欲しい事。そして、私も望んでいる事。震える手で、またその両頰に触れながら今度は長めに口付けを落とした。


ぺろりと唇を舐めれば、わずかに口を開いてくれてその先を暴き出す。甘いはずなどないのに、何故かそれはとても甘く感じた。そろりと舌を忍ばせ、うっすら目を開くと目を閉じている律さんがいる。壮絶なる色気に目を開けなければ良かったと後悔した。こういう時に目を開けるものではない。


「……はっ」

「んっ」

「おそろしいな、この先が」

「はい……?」

「なんでもない。それより、藤花ちゃんのケーキ、もっと食べとけば良かった」

「今度また作りますよ。あっ、あと保険チョコレートもありますよ」

「なにそれ」

「お店で買った、美味しいチョコレートです」

「ふぅん。それよりも、藤花ちゃんのケーキの方が食べたいけど」

「う、ずるい言い回しです」

「本音だからね」

「そういえば……チーズケーキ。まだ食べて貰った事なかったですよね」


以前の話を思い出す。チーズケーキを食べて貰う約束だったのだ。


「今度作って持って来ますね」


それはまるで蕾が花開く、みたいな光景だったように思う。驚きから笑顔へ。そうして笑顔を見せてくれた律さんが、再び私の首筋に顔を埋めて、楽しみにしてる、と。震える声で返事をしてくれたのだ。


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