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秘密をあばけ  作者: omi
ぶつけ合う本音編
26/46

SSー19-2.


律さんの太ももが見える。膝枕、硬そうだな。

顔を上げると、律さんの目がいつもより見開いていた。驚いた表情、初めて見た。そんな驚くような事を言ったつもりはなかったけど。


「それは、何かの冗談?」


ふっ、と。元の大きさに目が戻っていく。ううん、元の大きさよりも、細い……?


「藤花ちゃんの言いたい事はお礼、なのかな?」

「え? あ、いえ。そうでなくて、ひあ!」


がばりと持ち上げられたと思ったら、何故かその硬そうな太ももの上に乗せられる。律さんと対面するように膝に乗せられて、とんでもないなと心の奥で叫ぶ。


「なにするんですかっ」

「じゃあなんなの」


その瞳は、ゆらゆらと見たことのない色に揺れていた。これも初めて見る表情だ。これは。


「なんでありがとうございましたとか言うの?」


その瞳の色は、かすかだけど怒りに染まっている。


「律さん……?」

「そんな言葉聞きたくなかった」

「な」

「それで? 続きはあるの? 言いたい事の続き」


吐き捨てるように言うその姿は、いつもの律さんとは違って見えた。


「もしあるなら言ってみなよ。聞いてあげる」


ーー言えるならね。

そうして唇を塞がれる。それはいつもより、乱暴なキスだった。私になにも言わせないような、なにも聞かないような。


「ぅ……やっ!」


一方的で、先の見えないキス。気持ちが重ならない悲しい口付けだ。何故……なにか私は変な事を言ってしまっただろうか。

そうして、先の見えない口付けをさらに強引に進めようとしてくるから、私は精一杯律さんの体を押した。私の拒否と共に律さんの力が一瞬弱まる。だけどまたその腕に力が入りかけたから。

私はその頰をばちんっと叩いた。

じんじんとする右手と、赤くなった律さんの頰。やってしまったと思った時は既に遅かった。


「あ……りつさ」

「触るな」

「ーーっ」

「ごめん、今、触んないで」

「私……ごめっ、ごめんなさい」

「藤花ちゃん……」

「たっ、叩いちゃった……っ、律さんの事」

「ん」

「ごめんなさい……」

「藤花」


律さんが私の名前を呼んでくれる。けれど、目線は合わなかった。俯いたままの律さんに、私は次の言葉を待つ。


「大丈夫だから。頰は痛くないから」

「でも」

「ちょっと冷静になろうか」


お互い。そう言って、律さんは立ち上がるとコートを片手に玄関に向かう。ガチャンと扉が閉まる前に、戸締りしなよ、という言葉がかすかに聞こえた。

部屋には残されたのはチョコレートの香り、買ったチョコレート、律さんの残り香。だけど一番残って欲しかった人はそこにいなかった。



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