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秘密をあばけ  作者: omi
行く先は神に任せた編
16/46

SSー11-2.


「ひっ」

「どうせ、観月がテキトーな事言ってると思ったけど。藤花ちゃんよそよそしいし。何かあったと思うでしょ。だからさ」


話して、と。耳元で囁かれた。あぁ、ダメだ。こんなの、まるで甘いお菓子だ。欲するのを止められない。


「ちがうんです……私が、律さんを見かけてしまって。その」

「見かけた? どこで?」

「あの、可成町の三九デパートの近く」

「ーーもしかして、俺、女性といた?」

「……はい」

「……そう。見られてた、か」

「ごめんなさい。その見るつもりはなかったのですが。見てしまって、その後、ちょっとこう目眩がですね。してしまった所を朔さんに助けて頂いたんです」

「え?」

「あ、倒れてないです。大丈夫です。それで一緒に喫茶店で休んで」

「は?」

「それで、私が律さんのか、彼女って朔さんに言って良いかわからなくて」

「良いに決まってるでしょ」

「はいっ。それで、誤魔化してしまった事が律さんに伝わってしまったのだと……」


一部始終をしどろもどろになりながら伝えた。律さんは、んー、と。考えあぐねるように唸った後、まず、と一声を放った。


「目眩って言ってたけど、気分は大丈夫なの?」

「はい。ちょっと人酔い、というか」

「そう。良かった。じゃあ、二つ目」

「はい」

「観月は俺の職場の後輩。藤花ちゃんの事、隠してるつもりないから、また会ったら堂々と名乗りなさい」

「はい……」

「それからあの女性だけど」



無意識に、びくりと肩が動いてしまった。それを律さんが優しくぽんぽんと肩を叩いてくれる。安心する。



「仕事仲間、だから」

「……本当ですか?」

「こんな事で嘘はつかない」


律さんの方を向く。そうだ。この人は、きっと私が傷つく嘘はつかない。からかったり、反応見て楽しんだり、掴めない所も多いけど。それでも、彼は私と真摯に向き合おうとしてくれている。


「信じます。律さん」


彼は何も答えず、私も他に言葉はなかった。

数秒、間があって。目が合うと、どちらからともなく唇を重ねる。聖夜だからというわけではないけれど、まるで神聖な儀式のように感じた。重ねた唇は段々と熱を持ち始め、やがて互いに求めるようなモノに変わっていく。


体が、心が、貴方を求めてやまない。


「うぅ、ふぅ」


ただただ、深くなる口付けについていく事しか出来ない。こんなにも、満たされているのに苦しい。自分の皮一枚でさえ、隔てている感覚に狂おしいほどのもどかしさを感じる。


律さんが足りない。


「りっ……」

「はい、そろそろ寝る準備に取り掛かろうか。明日の朝までは一緒にいられるから」

「……は」

「お風呂、お先にどうぞ。俺は少し休むね」


ぺいっと。お風呂場に押しやられて、パタンと扉が閉まった。な、なにが起きたんだ。え、え。なんで。

いつも、なんだか、こう……雰囲気になると、どうして律さんはやめてしまうんだろう。なんで、どうして。

閉められた扉を見つめながら、見えない律さんの気持ちに少しの不安が残った。


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