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少女は彷徨う者たちを誘い導く  作者: ずんぐい
序章 はじめて
3/3

ここからーーー3

長らくお待たせ?しました!

学校通いながらだと全然かけなくて、、、。

将来は不気味な言葉に一瞬肩を震わせると一呼吸置いてから、恐る恐る口を開いた。


「何が、同じだっていうんだ?」


それは将来にとって一番の疑問。このクラスを陣取っている将来と最も対照的な存在で、そういう生き方を好んでしているはずの春樹と自分とで、何が同じだというのか。


しかし、そんな深い思いを持った言葉も今の春樹には何も感じていないかの様に、いや、実際に聞こえていない程のか細く優しい言葉だったのかもしれない。


つまり今の春樹はクラスの帝王である将来ですら怯えるほどの異常な空気を作り出している。


今現在、このクラスは春樹の手のひらにある--


春樹はたったの一言でクラスの全員にそう確信させた。


「な〜にカリカリしてんの?そんなに手、痛かった?」


俯く将来の視界に春樹がわざとらしくにやけ顔をねじ込んでくる。すると当然、将来の視界いっぱいに春樹の狂気に満ちた不気味な笑みが広がり、先程よりも更に深く闇に堕ちた様なまるで世界の闇でも見たかの様に恐ろしい表情になっていた。


何をしても一切反応してくれない将来に対して、春樹はつまんなそうに溜め息をつくと、素早く体の向きを180度回転させて、クラスの後方にいる「ハエ」の集団を見るや、その中の一人にニヤリと狙いを定めて、一直線にごちゃごちゃに散らかった机をかき分けながらすごい勢いで接近し始めた。


一方、ターゲットにされたと思われる「彼」は接近してくる春樹に対して、利き足である右足を引いて戦闘態勢を取った。その姿はなんだか武道系の構えにも見えて、案外、隙はあまりないように思える。


しかし、そんな彼の姿勢にも春樹は一切の不安や焦りを見せずにニヤツいた顔でどんどん接近していく。彼もいよいよ覚悟を決めたのか、大きく深呼吸をして、ゆっくりと春樹を目の前に定めた。そして春樹と目が合い、春樹が驚くほどの速さで頭を掴もうと腕を伸ばした次の瞬間―――――――――――






キーーン コーーン カーーン コーーン






張り詰めた空気で満ちた教室に、昼休み終わりと授業開始を知らせるチャイムが鳴り響いた。そして、遅れて全員の視線が時計に集中する。


すると、クラス全員の動きがぴたりと止まり、額に青い筋が走る。それと同時に大量の冷や汗が溢れ出した。


次の授業は数学。


数学の先生は何故かいつも一年生である春樹達にもの凄く厳しいのだ。まぁ、恐らく三年生の態度の悪さとそれを制御できない自分へのイライラなんだろうけど、なんでそれを二年生と平等にぶつけるのではなく、わざわざ一年生にだけ集中的にぶつけてきているのかが理解できない。


理由↓(多分、こう思っている)

全然理解してくれないから?→あ、すみません、、、


三年みたいになってほしくはないから?→え、あ、あざっす


未来ある君たちのため~?→ハァ?言い訳かよ!


少し話が脱線してしまったが、結局のところ、この状況、どう頑張ってもお叱りを逃れることはできない。この状況にはさすがの春樹も冷静さを取り戻した様で、自分のしたことを振り返って、大反省しながらも廊下を全力疾走している。


そんな意外と足の速い春樹を追い越すように近づいてくる人影が一つ。それは先程、春樹を絶望の底に叩きつけた瞳の持ち主であり、春樹の親友でもある麻美だった。


春樹は近づいてくる麻美に気付くと、何故か焦りが生まれて、逃げるようにさらにスピードを上げ、知らないうちに目的の教室の前まで来ていた。体はすっかり熱くなり、ジワジワと汗がにじみ出てくるのが分かると、春樹は扉を開きながら汗を拭った。


中に入ると、先に来たクラスメートは席に座っているのではなく、「そこ」に立っていた。


そこには生徒の机も椅子もない。だから立っている。


そして教室内は、しんと静まっているのではなく、何故か逆にうるさい程だった。その理由として、自席で立っている、早めに着いた生徒たちが必死に何か呪文の様な言葉を吐き出すように教科書を見ながら唱えていたことが言える。


春樹はそんなカオスな教室内の雰囲気に呑まれそうになり、一瞬出入り口で膠着するが、すぐ後ろにいた麻美に勢いよく背中を押されて、転がるように教室に入った春樹は、驚きの表情を顔に出しながらも、押してきた張本人を見上げる。そこには、気まずそうな顔で「ごめんね?」と言っている麻美がいた。


麻美はすぐに春樹へ手を差し伸べると、か弱い女子とはとても言えない勢いで春樹を立ち上がらせる。すると、ニコッと笑って見せて、すぐさま先生の所へ謝罪と授業内容を聞きに行った。


春樹も気を取り直して麻美の背を追うように先生のもとへ行き、授業内容を聞きに行った。









それからは、不機嫌な先生のいつもより当たりの激しい、それでいて、なんだかやる気のない授業が約四十分間、たっぷりと行われた―――――









その後も、六時間目が体育というとてつもなく面倒くさい時間割があり、終学活のときの空気といったら、地獄の様でならなかった――――――――――








放課後……


疲れ切ったクラスメートや、先生たちがチャイムの音と共に一斉に教室を出ていくなか、春樹は一人、席に座って窓から差す夕日を眺めながら机に突っ伏していた。


春樹の本当の席は窓から一番遠い、廊下と壁を挟んですぐの列の一番後ろで、隣の席はない。


だから、話す人もいない。話したい人も自然といなくなった。当然、話しかけて「くれる」人もいない。


つまり話せるのは、同じ高校で唯一の幼馴染である、麻美しかいない。






とか、窓から差し込む夕日を眺めながら、考えていそうな春樹に、麻美は昼休みとは正反対の優しい声音で声をかける。


「春?どした?なんか悩み事でもあるの?恋の相談ならのってあげるよ?」


「女って、いや、お前っていう人間が本当に分からない。昼休みにあんなザ・「裏の顔」みたいなものをクラスの前でさらけ出した俺が、落ち込まないとでもいうのか?」


「いや、さ?確かにさっきのアンタはすこし、いや、かなりおかしかった。でもさ、そんなのってみんなからすればただの長い長い人生のうちのちっちゃなちっちゃな出来事なんだよ。みんな、その時その時では思ったことを感情的に殴りつけたりするけど、明日になればすっかり忘れて元どうりの空気になる。ま、例外もあるけどね。だから、大丈夫だよ。」


顔を机と腕で完全に覆い隠すように突っ伏す春樹に対して、麻美は当然のように「お前なんて数多くある出来事の中のただの一瞬の興に過ぎない」と侮辱交じりに切り捨てる。


それを深読みしてしまった春樹は麻美が言いたいことに気付き、さらに落ち込んだ低いトーンで嫌味ったらしくその言葉を口に出してみることにした。


「つまりは‘‘お前は己惚れている’’といいたいのかなぁ?慰めてくれるんじゃなかったのかよ……。」


「はぁ、そんな甘い考えだから駄目なんだよ。自分で起こした出来事は自分で対処する。これ基本だよ?かといって、何も出来ないからって溜め込むのもアウト。誰かが助けてくれるんじゃなくて、誰かに助けを求めるのが当たり前なんだよ。ね?そうじゃない?」


なんだか正論をぶつけられているにもかかわらず、何も心に刺さらない。そしてなんだか眠い。


そうだ。俺は別にさっきの事はそこまで気にしていなかったんだ。


ただ、誰もいない教室で静かに眠る言い訳としてずっとそれを引きずっていただけなんだ。


そんなはずなのに、それで十分なはずなのに、間違っていないはずなのに、どうして。


「一人で溜め込んで、一人で死にゆくのが人間だろ?」


「は?」


思わず出てしまった言葉。それはたとえ思い付きだったとはいえ、決して言ってはいけない言葉。


人の死に対して安易で軽々しい発言など何が理由であれ、どんな場面であれ、どんな立場であれ、決して許されることではない。そんなこと、春樹には分かっていた。でも、感情的になってしまったのか、どれだけ脳が抑えようとしても、口が、喉が、あふれ出る言葉を抑えることも無く、人間に対する蔑みと嘆きの言葉を吐き出していく。


「人は弱いから虐められる。人は強いからその有り余る力を弱者に振りかざし、押さえつける。標的にされなかった周りの人間たちは、自分たちは関係ないとそっぽを向き、その場に応じて強者の肩を持ち、その場に応じて弱者の肩を持つ。そして特に何も起こらなければ、特に助けることも無く、ただ笑いものにするだけだ。そしたら、いじめられている弱者はどうなる?当然周りの奴らなんか弱者の言うことになんて耳を貸さないし、最悪敵が増える。

それが社会だよ。この嫌な関係が家や幼稚園、小中高校、大学、会社どこでも存在する。

ホント吐き気がするよ。」


話しているだけで痛い程感じる。


春樹の話を聞いている麻美の瞳から段々と希望の光が消えていっているのが。


春樹自身も理解している。


そんな当たり前の人間の理を解いてグダグダとほざいているからこんな面倒くさい事になってしまっているのだと。麻美からしたら春樹という人間はどれだけ扱いづらいにんげんで、幼馴染みだったということだけで仕方なくつながりを持っているただの他人であること。


だから、春樹は頼ることをしなかった。


読めるはずのない空気を必死に読んで、、、。




二人の間に又もや、何とも表現のできない、息の詰まる間が生まれる。




麻美はこの嫌な時間をどうにかしたいのか、何度も春樹に声をかけようとするも掛ける言葉が見つからないのか、口をパクパクするだけで実際は全然どうにも出来ていない。それどころか、時間が過ぎていくうちにどんどんと二人の間には深い溝が彫られていく。


麻美は驚いた。


いつもなら自分から話し掛けて、春樹を元気にして、それでいつも「ありがとな。」って言ってもらえるくらい、春樹とは良い関係だと思っていた。でも、実際、春樹の本音を聞いた自分が春樹を本能的に拒もうとしていることに。


「そんなことで、春を元気づけられるの?」


麻美は俯いた。


そしてやや病んだ感じの自問自答を始めた。


喜酒春樹にとって大切なのは誰?

―わたし


喜酒春樹にとって愛しいのは誰?

―そんなのわたしに決まってる


喜酒春樹にとって元気の源って何?

―そんなの…


「わたししかいないでしょぉ!!」


麻美はその言葉を両手を掲げて元気よく教室に響かせた。


まぁ、なんとなーくな感じで見てってください(笑)

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