ゲームマスターさん 3
主人公
「あいつらは、人間なんだろう?」
ゲームマスター
「……」
ゲームマスター
「あっ、おならが出た」
主人公
「どっからだよ」
ゲームマスター
「で、彼らが人間だと、どうしてそう思うんだい?」
主人公
「最初から違和感があった。だけど一番はあいつらはゲームの中のキャラクターのはずなのに、まるで生身の人間と話すみたいに会話が通じたことだ」
ゲームマスター
「それだけじゃあ人間である証拠には乏しいんじゃないかい? 君をゲームに入れることが出来る僕なんだから、ゲームのキャラクターをまるで人間のように操ることもできるよね?」
主人公
「それだけじゃない。……思い出したんだよ。俺がトラックにひかれる前、確かにましゅまろめもりぃずというゲームを買った。だけど、そこに出てくるヒロインは三人だ。五人もいない」
ゲームマスター
「僕が女の子を付け足しただけかもよ?」
主人公
「そしてヒロインたちの名前は『七瀬彩』『六条沙良』『五反ひな』の三人で、いずれも俺が会って来た女の子たちの名前じゃない」
ゲームマスター
「ふーん。パッケージをよく見ていたんだねえ」
主人公
「他にも俺の妹であるはずのまゆの苗字が俺に合わせて『梅野』になっているのも不自然だし、そのまゆが『20年間生きてきて初めてだ』と言ったり、ドジっ子の弘子が『いじめっ子はこの世界にはいないんだよ』とまるで元の世界があるかのような言い方をしたり、言い出したらキリがない」
主人公
「そして弘子はあんたに会ったことがある、と言っていた。それは恐らく、俺と同じようにアンタに引きずり込まれたからだ」
主人公
「何よりマリアから『ユウト』と名前で呼ばれた時。その時俺は強烈な既視感を感じたんだ。……俺とマリアは、絶対に生きているときどこかで会ったことがある」
ゲームマスター
「素晴らしい、素晴らしいよユウト君。まさか自力で僕の『ゲーム』のからくりに気づくなんてね。手があったら拍手したいところだ」
主人公
「やっぱり……!」
ゲームマスター
「言っただろう? こんなゲーム、売れないだろうねえって」
主人公
「じゃあ俺の会って来た女の子は全員……」
ゲームマスター
「そうさ。君と同じように死にかけた子たちだよ」
主人公
「どうしてこんなことをしたんだ?」
ゲームマスター
「……人間というのは、欠落、要するに自分に足りていないと自覚していることで人生を埋めようとする」
主人公
「……どういうこと?」
ゲームマスター
「例えば貧乏な者は金に、愛に飢えた者は異性に執着するように。そして僕の部屋が首のないマネキンで埋め尽くされているように」
主人公
「呪いの部屋か」
ゲームマスター
「要するに彼女たち5人はその『欠乏感、欠落』が大きすぎたために死にきれなかった子たちなのさ。偶然にも同じ時期に、僕の担当地域でね」
主人公
「……アンタ、やっぱり死神なのか?」
ゲームマスター
「チャ〇の霊圧が……消えた……?」
主人公
「そっちじゃねえよ!」
ゲームマスター
「ふっふっふっ、僕はゲームマスターだよ。それ以上でもそれ以下でもない。だから僕はゲームをすることにしたのさ! 男の君をギャルゲーの主人公に見立てて! 欠落を克服するゲームをね!」
主人公
「(こいつ、見た目以上にやばい奴みたいだな)」
ゲームマスター
「例えば梅野まゆちゃん。現実世界での彼女は暴走族上がりの20歳」
主人公
「だからあんなチンピラみたいな感じだったのか……」
ゲームマスター
「パチンコ依存症だった彼女は、どうしてもパチンコを止めたいと考えていたのさ。それが彼女の欠落で、ユウト君の助けでそれを克服したわけだね」
主人公
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
ゲームマスター
「何だい?」
主人公
「ゲームの中で、好感度が100になった女の子たちの名前が次々と消えていったんだ! もしかして、名前の消えた子たちは成仏してしまった、とかじゃないよな?」
ゲームマスター
「違うよ。このゲームで君が好感度100になった女の子は生き返ることが出来る。そういう約束になっている」
主人公
「よ、良かったぁあああ! ずっと地獄への橋渡しをやってしまったんじゃないかと不安だったんだよ」
ゲームマスター
「なんか女の子が地獄に落ちること前提になってない?」
主人公
「でも、どうしてこんなゲームを?」
ゲームマスター
「決まっているだろう? 面白いからさ! なかなか欠落を克服できなくて悩む少女の姿も、その少女たちにブンブン振り回される君の姿も!」
主人公
「おい」
ゲームマスター
「だけど、いい思いができただろう?」
主人公
「いや出来てないよ。苦痛99パーセントだよ」
ゲームマスター
「さて、謎が解けたところでそろそろ君には残りの女の子も生き返らせてもらおうか」
主人公
「ちょ、ちょっと待ってくれ! まだ聞きたいことが! マリアはやっぱり俺の知り合いなのか!?」
ゲームマスター
「その質問には答えられない」
主人公
「それからもう一つだけ! 幼馴染の結城春香がミッションをクリアして以降出てこないんだ! 出てこないから、こっちからはどうしようもない!」
ゲームマスター
「ふふっ、大丈夫。そのうち出てくるよ」
主人公
「そのうちって……!」
――主人公は光に包まれ、自分の部屋に戻ってきていた。
つづく




