顔無しの少女
久し振りに書きました。おかしいところがあればご指摘ください。
──私は酷く退屈していた。
先程、私に襲いかかってきた冒険者の骸に腰をおろし、一人ため息をついた。
大国であるローズ帝国では、ひと月ほど前から冒険者狩りをしている殺人鬼が出没していた。
…まあ私のことだが。
その私を討伐しようと冒険者がやってきたのだがあっさり返り討ちにしてしまった。胸に銀級冒険者の証であるバッチを付けていたため期待したのだが全然手応えがなかった。
この世界の冒険者には階級がある。
冒険者なりたては緑級。中堅クラスは銅級。そして上位冒険者である銀級。そしてさらにギルドに貢献しているものは金級となる。実はさらに上の白金級なんてものもあるのだが、それはこの国最強と認められた者にしか与えられない特別な階級なのでこの国に一人しか存在しない。
「私はこんな雑魚共を狩るために殺人鬼やってるわけじゃないのになぁ。金級を派遣しろとは言わないまでもギルドはもうちょっと強いやつを複数よこしてくればいいのに…。この調子だといつまでたっても強いやつと戦えないや。やる気あるの?」
ブツブツと一人でつぶやいた後、私は暗闇に溶け込むように姿を消した──
***
「アレックスが例の殺人鬼にやられただと!?やつは金級目前だった期待の冒険者だったというのにっ!!」
ギルド長であるラハブは机を叩き悲鳴に似た叫び声をあげた。
最近、深淵の森というダンジョンで失踪する冒険者が後を絶たず、ギルドでは大きな問題となっている。
そのため実力者を何人か調査に送ったがほとんどの者が帰ってこなかった。
だがそんな中唯一帰ってきた金級冒険者がとある映像記録を持ち帰ってきた。
確認すると真っ白な仮面に漆黒の装束を纏った不気味な男?が映されていたのだった。
「このまま放置すればムダに被害が出るかもしれません。討伐隊を組むべきでは?」
「分かっている。いま金級冒険者に至急呼びかけをしているからもうじき集まるはずだ。来てもらった金級冒険者の案内は任せたぞ。」
「かしこまりました、ギルド長。」
ギルド長補佐官であり殺人鬼でもある私はにやけそうになる顔を抑えつつ、その場を後にしたのだった。