紫音と祖父の魔石
スナックに行き188と話ながら、いつものようにバイトをする紫音だが、そこにもう1人の客がいた。その客訪とは?
188さんにサイボーグの事を話したら、とても興味深そうな顔をしていた。因みに仕事をしながら話したので決してサボっていません。
「なるほどね。アメリカはとんでもない物を作ったもんだなぁ」
「僕もビックリしましたよ。索敵モードがあるなんて」
「恐らくその索敵モードは赤外線で敵を見つけてから、それが敵かどうかを判断しているんだと思う。武器に関してはあれだな。手と触れた瞬間に電気の供給が始まるんだろう」
「電気の供給? コンセントっぽいのがなかったんですけど」
188さんにそう言ったら、可笑しそうな顔をさせて話しを始めた。
「ほら、近い物がみじかにあるだろう。スマートフォンを上に置くだけで充電される機械」
「あ!」
そういえば電機店にそんなアクセサリーが売ってあった。
「なるほどぉ〜、電磁誘導方式を軍事転用をしているんスね!」
ジャージにメガネを掛けた普段モードの真奈美さんが何時の間にかやって来ていた。
「おっ!? 流石真理亜の娘さん。よく知っているねぇ」
「はい、ウチもそのタイプの充電器を愛用していますからねぇ」
「あのぉ〜、電磁誘導方式って一体何なんですか?」
「電磁誘導方式って言うのは特殊な電気を発生させて、お互いの中にあるコイルとコイルを電気で繋げてバッテリーに供給させる方式っスよ!」
つまり有線で電力供給させるのではなく、飛ばした電気で充電をしているって事でいいんだよね?
「でもおかしいっスねぇ。電磁誘導方式は有線と違って電力の供給量が低いので、電気熱を作るほど供給出来ないのではないっスか?」
「やっぱそこだよなぁ。電磁誘導方式の他に何かやってるんじゃないのかって俺は睨んでいるぜ」
「やっぱり刀にバッテリーが内蔵されているんじゃないのかしらぁ〜?」
「グリップ部分も厚みがなかったので、バッテリーが入ると思いません」
入るとしたら、ボタン電池程度。でもそれすら入れるようなところが見当たらなかった。
「じゃあやっぱり、他の何かで供給されているのね」
「ああ、その筈だ。紫音くん。出来たらでいいんだが、その刀の仕組みも聞いて来てくれないか?」
「僕も気になるんで、明日聞いてみますよ」
僕がそう言うと188さんはちょっと驚いた顔をさせた。
「明日? お前さん、明日もサイボーグに関する仕事をするのか?」
「はい。明日は夜戦のデータ取りするので、研究者達の護衛をまたするんです」
「そうなのかぁ・・・・・・何処でやるか聞いているか?」
「そこまでは聞いていませんがこの間本羽田の小さな公園で停まったので、またそこでデータ取りをすると思います」
天野さんがズボラなせいなのかはわからないけど、何処でやるのかは話をして貰っていないので何とも言えない。
「そうかぁ〜、わかった。何かわかったらスマホの方で連絡をしてくれ」
「はい、わかりました!」
「あ、それとぉ。俺がカスタムした M&P R8 の調子はどうだ? 何処か使いづらいとかないか?」
「大丈夫です! むしろ前よりか命中率が高くなったので、188さんに感謝しています!」
アイアンサイトも見やすいし、グリップも自分好みの感覚だから前より使いやすいと実感している。
「そうか、調子が悪くなったらPMCのガンショップじゃなく俺のところに持って来いよ」
「わかりました!」
「ウフフ、ワンオフの銃があるっていいわよねぇ〜」
「紫音の特性を活かす為のカスタムをしたからなぁ。他のヤツが使ったら、使い辛いって言うかもな」
188さんはそう言ってからバーボンを一口飲むのと同時に出入口のドアが鳴った。
「いらっしゃ〜い! ってあらぁ〜? 紫音くんのおじいさんじゃないのぉ!」
「やはりシオンはここにいたか」
おじさんはそう言うと、僕に近付いて抱き締めて来た。
「お、おじさん。苦しいよぉ〜」
「すまんのぉ〜。お主はワシにとって可愛い孫じゃから、こうしたくなるんじゃ」
・・・・・・やっぱり、今まで意固地になって会っていなかったのを後悔しているのかなぁ?
「何か、紫音くんが羨ましいっス」
「確かに、あのモフモフな毛で抱き締められたら気持ちよさそうよねぇ〜」
「しかも毛を手入れしてあるっぽいからなぁ。気持ちよささそうだな」
ええ〜、みんな羽田空港にいた人達みたいな反応をしているよぉ〜。
「それよりも! どうして僕を探していたんですか?」
「おう、そうじゃったぁ! シオン、この魔石に魔力を込めて貰えんかのぉ」
そう言ってポケットから取り出したのは、スーパーボールほどの大きさの透明な魔石だった。
「カラの魔石? でもヒビ割れがないし、透明度が高いから状態がいい。ただ、その状態では高値で売れそうにないけどな」
「そうねぇ〜。でもキレイだからお家に飾ってもよさそうねぇ〜!」
「魔石の中じゃ大きい方じゃないんスか?」
「ああ〜確かにそうだなぁ。この大きさだと、ゴーレムかワイバーン辺りから取れそうな大きさだな」
何時の間にか真理亜さん達が僕達の周り来て、透明な魔石を見ていた。それと真奈美さんが僕の尻尾を握っている。
「この透明な魔石は、ある一族に錬金術で作って貰ったもんなんじゃ。モンスターから出る魔石よりも魔力を通りやすくしておるぞ」
「ほぉ〜、錬金術でわざわざ属性のない魔力を作るとはねぇ〜」
188さんは興味を持っているのか、おじさんと魔石を交互に見つめる。
「紫音、この魔石を持って魔力を込めるんじゃ」
「あ、うん」
手渡された魔力を握り締めて魔力を込めると、どんどん魔石に吸われていく感覚に襲われる。
「ッ!?」
「安心せい。魔石がお主の魔力を覚えようとしているんじゃ。だからそのまま魔力を込め続けるのじゃ」
「あ、うん。わかりました」
そう返事をして魔力を込める続けて半分ぐらいまで減って来たところで、魔力を吸われる感覚がピタリと止んだ。
「あれ?」
「どうしたんスか、紫音くん?」
「吸われる感覚がなくなった」
「魔石が出来たようじゃな。ほれ、見せてみぃ」
恐る恐る手を開いてみると、そこには水色の魔石が出来上がっていた。
「無事に出来たようじゃな。ヒューリーの時とは違う色じゃのう。ワシはヒューリーと同じ黄色い魔石が出来ると思っておったぞ」
「えっ、お父さんも同じ事をやったんですか?」
「ああ、因みにワシがやった時は紫色じゃった。まぁこれに関しては個人差じゃからのぉ、何とも言えぬわい」
おじさんはそう言うと、僕の掌に置いてある魔石をヒョイと取って自分のポケットの中に入れた。
「シオン、明日には渡せるから楽しみにしておるんじゃよ」
楽しみにって言っているけど、本当におじさんは何を渡そうとしているんだろう?
「おいおい、おっさん! まさかここに来るんじゃないだろうなぁ?」
「ああ、そうじゃ。もしかして明日ここに来ないのか?」
「ああ、紫音くんは明日羽田空港に呼ばれているから、PMC本部で待っていた方がいいぞ」
「そうなのかのぉ?」
叔父さんはそう言いながら僕を見つめて来たので、首を縦に振ってから答える。
「明日は羽田空港の方でサイボーグの戦闘データの収集をまたしに行くので、明日はここへは来ません」
「そうかぁ〜、わかった。何時頃に羽田空港に向かうんじゃ?」
「僕が事務所に帰ってからすぐに向かうので、向こうに着くのは午後の4時から5時辺りになりそうですね」
「そうか、4時から5時辺りの時間帯じゃな」
おじさんはそう言うと、胸ポケットから手帳を通り出してからメモを取った。
「それじゃあシオン、明日楽しみにしておるんじゃよ!」
そう言い残すと、スナックから出て行ってしまった。
「紫音ちゃぁん、おじいちゃぁんに愛されているわねぇ〜!」
「あ、はい。でも・・・・・・」
「でも、何かしらぁ?」
「どうしておじさんはお父さんと会おうとしなかったんですかね?」
「・・・・・・」
真理亜さんは僕の問い掛けに、バツの悪そうな顔で無言を貫いたのであった。
こうして手渡された魔石に魔力を込めた紫音だったが、紫音の叔父は一体何を作ろうとしているのだろうか?
次回をお楽しみに!




