紫音とファイルの内容
邪魔な鈇田がいなくなり、やっとファイルの中を見れる紫音。一体何が書かれているのか?
真理亜さんは僕達から見て一番左の書類、筒城先生の書類を指をさした。
「この人から順番に説明するわぁ〜。彼女は 筒城 姜 みんなが知っての通り、真奈美ちゃぁんと紫音ちゃぁんの先生よ。
彼女は根が真面目な子なの、でもそれが仇になったのよねぇ〜」
「何かあったのかい?」
「一昨日は紫音くんにしつこくPMC止めろって言ってたっスけど、今日は自分を守って欲しい! って紫音くんに迫っていたっス!
紫音くんは、 守って欲しいのでしたら、PMCに護衛依頼して下さい。 って説明したんっスけど、先生は 無料でやって欲しい。 紫音くん怒っちゃったっス」
あの時は気がどうかしていたのかもしてない。だけどタダで仕事を受けるのは、ちょっと問題があると思う。
「そうなんだぁ〜。PMCにお願いしているのだから、お金を払うのは普通なのに。まぁ、彼女も自分の命が掛かっていたからねぇ〜。必死だったんじゃないかな?」
「必死になるのはわかるっス、でも警察とPMCの区別を付けないとダメっスよねぇ〜」
「まぁ、そうだよねぇ〜」
唯凪さんはそう言ってからノンアルコールを一口飲んだ。
「次に真ん中の書類は、 金井 浩司 。彼は工場に正社員として勤務しているのぉ。だけど、勤務態度はよくないみたいなの」
「どうな風に悪いのですか?」
「仕事のほとんどは人任せで、サボリ癖があるの。自分の後輩がミスをすれば、叱るを通り越して罵倒するの」
それは酷い。
「それってパワハラじゃないっスか、父上?」
「真奈美ちゃぁんの言う通りパワハラよぉ〜。事実彼を訴えようとしている子もいるのよぉ〜!」
「そうだったっスかぁ〜」
真理亜さんはその言葉を聞いた後、一番右の書類に指をさして説明を始める。
「最後のこの子、 冨上 隆佐 大手IT企業の社員で出世街道まっしぐらで、結婚もしているイケイケの男性よぉ。
周りからの評価はいいわぁ〜・・・・・・表面上はねぇ〜」
「表面上? 一体それはどういう事だい?」
唯凪さんが真理亜さんにそう聞くと、真剣味のある口調で語り始めた。
「実は彼ねぇ〜、今の奥さんに黙って不倫しているのよぉ〜」
「それは穏やかな話じゃなくなるねぇ」
「それだけでじゃないのよ。その不倫相手はライバル企業に勤めている女性で、その人に会社の情報を渡していたのよぉ〜」
「「「ええっ!?」」」
僕と唯凪さんと真奈美さんは、同時に驚いた。
「それって、バレたらヤバくないっスか?」
「確かにヤバいけど、もしかしたら冨上さんは企業スパイかもしれないよ?」
「彼は企業スパイじゃないわぁ。むしろその不倫相手に情報を渡すって形で貢いでいるのよぉ〜。現にその人とホテルで愛の営みを行なっていたみたいなのよぉ〜。最低よねぇ〜。でもぉ〜、それも一つの愛の形よねぇ〜〜〜!!」
ウネウネしている真理亜さんと嫌悪感を醸し出している2人だが、紫音はある事に気づく。
「あの、真理亜さん」
「ん? なぁに?」
「この2人は悪い事をしているのに、筒城先生だけは悪い事をしてませんよね?」
書類の経歴を読んでみても、悪さをしているようすはないし。
「ええ、そうよぉ。彼女は真面目ちゃんだからねぇ〜」
「話を聞く限り、この人達に接点がない気がします」
「と・こ・ろ・がぁ〜。実はあるのよねぇ〜!」
「えっ!?」
職種が違うのに接点があるって、どういう事?
「3人の書類を2枚ほどめくってみたら、すぐにわかるわよぉ〜!」
真理亜さんに言われた通りに3つの書類をめくって読んでみたら、驚く内容が書かれていた。
「これって・・・・・・」
「偶然と言えば片付けられる内容だけど、何か引っ掛かるね」
僕と唯凪さんは信じられないと言いたそうな顔で互いを見つめていた。
「2人共どうしたっスか? 何かスゴイ事が書いていたっスか?」
「うん、この人達3人は同じ高校を同期で卒業してるみたいなんです。しかも3年生の時に同じクラスにいた事も」
「えっ!? どういう事ですか、父上?」
真奈美さんも驚いて、真理亜さんの方を見つめた。
「答えを早まっちゃいけないわよぉ〜。まだ話の続きがあるからぁ〜」
「まだ何かあるのですか?」
「ええ〜、あるわぁ〜! 実はねぇ、その時の金井ちゃぁ〜んと冨上ちゃぁ〜んはね。ヤンチャだったのよぉ〜!」
「ヤンチャ?」
どういう事なんだろう?
「つまり、不良だったんだね」
「そういう事よぉ〜。社会人になってもヤンチャしてるなんて困ったものよねぇ〜」
ヤレヤレと顔を横に振ってから、また語り始める。
「高校時代でも警察にお世話になってたみたいだからぁ〜、調べれすぐに出るんじゃないかしらぁ〜?」
「その事についてはすぐに調べが付いたから、言えばPMCにも提出してくれるよ」
「あらよかったわねぇ〜。紫音ちゃぁ〜ん!」
多分彼ら警察にとって、どうでもいい情報なんだろう。
「それでここが一番重要なところなんだけどぉ〜、彼ら2人はある子を虐めていたのよぉ〜」
「本当?」
「ええ〜、その子をカツアゲしたり、サンドバックみたいに殴っていたみたいなのよぉ〜。人として最低よねぇ〜。
その子は最終的に卒業前に学校に来なくなっちゃって、退学扱いになったのよぉ〜。被害者なのに可哀想よねぇ〜」
虐められて退学って・・・・・・その人、可哀想。
そう思いながら3人の書類に目を落とす。
「で、その子の名前は?」
「その子の名前はぁ〜・・・・・・・・・・・・」
あれ? 急に黙りしちゃったぞ。どうしたんだろう?
「どうしたんですか、真理亜さん」
「ここから先は有料になりまぁ〜〜〜っす!!」
「ええっ!?」
そんな、理不尽なぁ!!
「教えて欲しいのならぁ〜、お金を払ってちょうだいねぇ〜!」
そう言いながらカラダをクネクネさせる。
「ハァ〜・・・・・・まぁいいや。ここまで情報が揃っていれば調べられるから、教えてくれてありがとう」
「あらいいのぉ〜?」
「うん、僕は早速戻って・・・・・・紫音くん?」
書類の内容を熱心に読んでいる僕に対して、唯凪さんは不思議そうな顔で見つめている。
「真理亜さん。犯人の目的は復讐の可能性があるんですよね」
「ええ、断言は出来ないけど復讐の可能性が高いわねぇ〜。それがどうしたのかしらぁ〜」
「復讐なら、この2人だけを狙えばいいと僕は思うんですけど。何で筒城先生まで狙われているんですか? 虐めに関わってないんですよね?」
僕が襲われたあの時だって、筒城先生の名前を大声で出していたし。
「そうね。彼女はその子を全く虐めてないわねぇ〜・・・・・・なのに恨んでいたのよねぇ〜」
「ひょっとしてなんスけど、犯人の復讐したい相手は虐めた2人だけじゃなくて、クラスメイト全員だったりしてぇ・・・・・・違うっスよね?」
真奈美ちゃんがそう言った瞬間、全員の目の色が変わった。
「み、皆さん、どうしたんスか?」
「真奈美ちゃぁ〜んの言う通りかもしれないわぁ〜。クラスメイト達は見て見ぬふりをしていた子ばっかりだったらしいからぁ〜」
「それが事実だったら大変だね。急いで帰って調べるよ! あ、これ。紫音くんの分のお代込みね」
「えっ!?」
僕の分まで払ってくれるの?
「紫音くん、余ったらお小遣いにしていいからね! じゃあね!」
唯凪さんはそう言うと席を立ち、足早にいお店を出て行こうとする。
「あ、唯凪さん! まっ・・・・・・行っちゃった」
「あらよかったわねぇ〜。あげるって言われたんだからぁ〜、有り難く貰っておきなさぁ〜い」
精算を済ませた真理亜さんが手渡してくるので、罪悪感を感じつつ受け取った。
「あの、真理亜さん。情報を無料で下さって、ありがとうございます」
「気にしなくていいのよぉ〜、アタシと紫音ちゃぁんの中じゃなぁ〜い!」
そう言った後、ウィンクする姿にゾゾゾッと来たのは口が裂けても言えない。
「さぁ、アナタも天野ちゃぁんのところへ行って、その情報を伝えて来なさぁ〜い!」
「あ、はい! 今日はありがとうございました!」
「ええ、いいえこちらこそぉ〜!」
そう言ってからコーラを飲み干し、書類をまとめて鞄へしまうと出入り口まで行くと、 それでは! と言ってからお店を出たのであった。
こうして、彼は真理亜から貰った情報を事務所へと持って帰るのであった。




