紫音と密輸業者と謎のゴミ
遂に密輸業者の潜伏場所を突き止めた紫音達。彼らとの戦いが始まる!
『紫音。些細な事でもいいから気が付いたら俺達に報告をしてくれ』
「はい」
『俺達も気が付いたら連絡をするぞ』
「了解です。通信アウト」
無線を終えるとそのまま隠れ家に向かってゆっくりと進み出した。
『シオン、そこで止まってクダさい』
「どうしたんですか?」
『シオンの行き先にカンシカメラが設置してあります。そのまま出たら映ってしまう可能性がありますよ』
監視カメラまで取り付けていたのか。
『こっちにも別方向を向いた監視カメラが見える』
『こっちには仕掛けられている様子はなさそうじゃ。コニー、家の様子はどうだ?』
『ターゲットは以前に家の中で待機していますが、ケイカイをしているのか偶に外を見つめています』
『わかった。ワシらは気を付けながら進む事にする。紫音は迂回して近付くようにな』
「はい」
僕はオズマさんに言われた通り、監視カメラに映らないように迂回して進む。
「僕の方は準備出来ました」
『ワシの方も無事に張り付けた』
『俺の方は少し待ってくれ。もうすぐだから・・・・・・着いたぞ。コニー、合図を送ってくれ』
「わかりました。突入5秒前。4、3、2、1、突入!」
『『「突入!」』』
その言葉と共に隠れ家の中へ突入して行き、一気に静圧! とは言えず、向こうが待ってましたと言わんばかりに反撃して来たので、密輸業者達と撃ち合い状態になった。
そんな中で、密輸業者の1人が立て掛けた簀の裏に隠れたのを見たので、簀越しに H&K UMP45 の弾丸を浴びせて倒す。
「簀にいた敵ダウン!」
「でかした紫音!」
「こっちの方も1人倒した! 残りは2人!」
残りの2人を見つける為に倉庫を見渡すが影すら見当たらない。
「全員、一旦集合!」
天野さんの言葉を受けて、辺りを警戒しながら集まる。
「残りの2人が見当たらない」
「何処かに隠れている可能性があるぞ」
「外に出た可能性もあるよ」
「そうかぁ。コニー、外に出て行く姿を見たか?」
『こっちの方では、そんなスガタを見てないです!』
どうやら残りの2人が銃撃戦に紛れて逃げた可能性は、無いに等しいかも。
「全員で工場内を探索するぞ。いいか、常にツーマンセルで動け」
「「「「「「了解!」」」」」」
天野さんの指示で、リュークさんと共に行動する事なった。
「狭い工場だけど、死角が多いからしっかりクリアリングをしてね」
「わかりました」
僕が先行して工場内を進むと、粗悪なテーブルと椅子が置いてある場所に辿り着いた。
「食べ物が置いてある」
「ついさっきまで食事を取っていたみたいだね」
そう、リュークさんの言う通り、コンビニで適当で買って来た物と思われる食べ物がテーブルの上に散漫していたが、その横に置かれていたゴミ箱が僕は気になったので近付く。
「シオンくん、どうしたんだい?」
「ゴミ箱の中から病院特有の消毒液の臭いがするんです。それに、何か嗅いだ事のある臭いが微かにします」
「え? それって、どういう事?」
「ゴミ箱の中を見てみれば、わかると思います」
そう言うと、ゴミ箱の中をひっくり返して中に入っていたゴミを確認していく。
お菓子の袋。お弁当の容器。ゴミ。これもゴミ・・・・・・ん?
「これは・・・・・・包帯?」
「血が付いているね」
その血の付いた包帯を手に取ると、鼻に近付けて臭いを嗅いだ。
消毒液と薬の臭いの混ざっているこの臭いは・・・・・・まさか!
「間違いない! 実野妓くんがここにいる!」
「えっ!? 嘘だよね?」
僕自身も信じられない気持ちで一杯なので、確認の為に再度包帯の臭いを嗅いでみた。
「・・・・・・ここに実野妓くんがいます」
「わ、わかった。とりあえずみんなに伝えよう。その布はこの袋の中に入れて取っておいて、後でDNA検査を使って本人かどうか調べるから」
「わかりました」
リュークさんの言う通りに手渡された袋の中に入れている間に、リュークさんは無線を飛ばす。
「ああ、うん。シオンくんの鼻を疑う気なの? ・・・・・・・・・・・・うん、わかった。そうする」
リュークさんはそう言い終わると僕の方を向いて来た。
「シオンくん、本部からの伝達を言うよ。先ずは密輸業者達を探すのと同時に、ミノギくんも探す」
「はい」
「それで、ミノギくんを見つけ次第身柄の保護をする。場合によっては・・・・・・覚悟してね」
「はい」
本部と天野さん達は密輸業者達の確保を優先している為か、実野妓くんは二の次状態なんだと思う。
「さぁ行こうシオンくん」
「はい」
でも何でここにいるんだろう? と思いつつも、廃墟の中を警戒しながら進んで行く。
「クリア!」
「クリア! ここにもいない」
「おい、お前らから見て左側から俺達が出るぞ!」
その声がした後に、天野さん達とオズマさんのチームが部屋の中に入って来る。
どうやら天野さん達もここにたどり着いたみたいだ。
「こっちにはいなかったよ。そっち方はどう?」
「こっちにもいなかった」
「ワシの方も同じじゃ。もしかしたらヤツらは逃げたのかもしれぬぞ」
その可能性はありそう。
「外はコニーのヤツが見張っているから、その可能性は低い」
「そうねぇ。コニーちゃん。誰かが逃げる様子が見えた?」
『見えな・・・・・・ん? ちょっとマって下さい。えっ!? 何で?』
「どうしたの、コニーちゃん?」
『マイがそちらの方に向かっています! 早く止めないとマズイです!』
「えっ!?」
舞ちゃんが、こっちに向かって来ている?
コニーさんの言葉に天野さん達も僕と同じ様に驚いていた。
「どう言う事だ?」
「もしかして、ここら辺が住所?」
「そんな筈がありませんよ! 僕に引っ越した何て話は聞いてないんですからぁ!」
「とにかく、彼女を遠ざけた方がいい! 紫音、お前は確か糸風の連絡先を交換しているんだろう? 連絡をするんだ! コニーは糸風の様子を見ていろ!」
「わ、わかりました!」
『了解です!』
ポケットからスマホを取り出し、舞ちゃんに電話を掛けるとすぐに出てくれた。
『シィくん。どうしたの?』
「舞ちゃん。今すぐ立ち止まって!」
『立ち止まってって、どうして? 私、やっと連絡がついた龍平くんに、会いに行かないといけないんだけど』
「何だって!?」
僕の言葉にその場にいた全員が、驚いた表情をさせる。
彼が舞ちゃんをここに呼んだ? どういう事なの?
「それは本人の声だったの?」
『・・・・・・うん、舌を怪我しているせいか、ちょっと聞き取りづらかったけど、龍平くんの声に間違いなかったよ。
どうしてそんなに驚いているの? もしかして、龍平くんと連絡がついた事に驚いたのかな?』
・・・・・・まさか? いや、まさかとは思うけど。僕が考えている事が正しければ。
「今来た道を全力で走って戻って!」
『え? 急に何を言っているの?』
「罠だから言っているの!」
『え? 罠? 罠な訳が・・・・・・』
舞ちゃんの話を遮る様に怒号で説明を始める。
「僕達はその近くの廃工場に居て、密輸業者の対処しているの! 舞ちゃんが行こうとしている場所は、僕がいる場所でしょ? そこに誘われているんだよ!
現にこの場所に実野妓くんが付けていた包帯があった!
だから彼に会っても・・・・・・ん? もしもし? もしもし舞ちゃん? どうしたの?」
先程まで えっ? とか、嘘!? と相槌を入れる様にして言葉を発していたのだが、急に何も話さなくなってしまったので、不審に思う。
まさか? そんな事は・・・・・・。
「コニーさん、舞ちゃんは今どうしているんですか?」
『こっちではスガタが見えているのだけれども、怯えた表情で一点を見つめています』
「誰かを見つめているって事か。誰なのかわかるか?」
「ワタシのところからでは、死角になっているのでわかりませんが、非常にマズイ状態なのがわかります」
「そうか。これは確認をしに行った方がよさそうだな」
そんな中、僕のスマホから舞ちゃんの震えた声が聞こえて来た。
『りゅ、龍・・・・・・平、くん?』
その言葉を聞いた瞬間、僕の背中がゾワッとした。
何とここで実野妓の名前が出て来た! 彼は何故その場にいるのか?




