三槓子
「リーチ」
今宵、賭け麻雀を行なっている者が4人いた。
男3人、女1人。
全員が全員、それぞれ賭けているものがある。しかし、その中身はまぁどうでもいい。半分くらいは遊びや気分転換である。
カランッ
リーチ棒を出したのは、木見潮朱里咲。
「むっ……」
「ほぅ」
現在トップ。3万7000点。
流れを掴んで、自分が積もると思ってのリーチ。待ちは3.6索子。典型的な平和、断ヤオ九。
「ふ、ツモ上がり狙いかのぅ」
一方、下家の鮫川は役牌を抱えてのダマテン。發を鳴かずに暗刻にしているが、役はこれのみ。待ちは1.4萬子。大物手が来ないのでリーチはしない。朱里咲のリーチが、振り込むと満貫になると警戒しながら回す。捨て牌からなにが当たるかは予想はつく。
「ち」
対面の天草試練はベタ降りであった。流れが来ない。ドラである7索子を暗刻にしているが、浮いてしまった3索子を手放せない。朱里咲の待ちであると、予感はしており、3索子とくっつける牌がないとアガるのは難しい。
「お」
そして、最後。上家の山寺光一は朱里咲のリーチを気にせず、
「カン!」
カンをした。ドラをもう一つ増やす、西のカン。
リーチをかけた者がいる中でのカンは首を絞めるような行為。しかし、聴牌であれば勝負というところ。
新ドラは1萬。
ここで張っていれば、リーチとくるだろう。追いかけるところで、光一は平然と8筒子を切る。リーチではない。
「…………」
聴牌ではないのか、光一。
リーチをかけた朱里咲は上がり以外はツモ切りにしなければならない。一発はつかず、回る。
「ふむ」
光一の捨て牌。オタ風の西のカンを含めると、混一と見るべきか。字牌は危険じゃのぅ、1筒子を切るか。ここは降りた方が無難か。
鮫川、朱里咲のリーチを警戒して、勝負を降りる。元々、發の1飜のみ。勝負をしてもしょうがない。これで天草と共にこの半チャン、上がる目がなくなる。
鮫川は光一の待ちでもないと察しての、1筒子を切った。
「カン!」
「は?」
「な?」
この時、光一の手牌。まだバラバラ!しかし、初っ端から暗刻が2つ。これを見た瞬間から、ある役が浮かんだ。まったく成立した試しがない、難しい役。
新ドラは7索子。天草、なに気にドラ6の大物手に変化。勝負をしたくなったが、した瞬間に朱里咲に上がられる。一方で朱里咲、上がり牌が新ドラ表示となってしまう。
パァンッ
「…………」
いかんなぁ。上がり牌の一つが、新ドラ表示とは。天草と鮫川は降り気配。光一の役はトイトイか?
この勝負、光一と朱里咲2人の対決となる。天草と鮫川は降りる。ドラが3つ。下手すればドラだけでハネ満もある展開だ。そこに
「ポン!」
光一、3鳴き。8索子のポン。
これでトイトイが確定と睨んだ。しかし、次順。
「チー!」
朱里咲の上がり目を潰す、2,3,4索子のチー。裸単騎!
しかし、光一以外の全員が気付く。
こいつ、なんの役で待っているんだ?役がなんもねぇぞ!
聴牌こそしても、役なしで上がる事はできない。それはみんな知っている。光一だって分かっている。
ただ上がろうとするだけでは光一の狙いは分からないだろう。今、勝つ事を目的にしているわけではないのだ。
読めんが、朱里咲のリーチだけ気をつければええのぅ。
くそー。ドラ6だってのに、振り込めない。
気弱であるが、無難な選択をとっている鮫川と天草。判断は正しい。ここで勝負にいかないのも、戦い。楽しみのない判断。
光一の4鳴き。それが真価を発揮したのは14順目。引いてきたのは、8索子。超珍しい役の、成立。
「カン!」
初めて見た者もいる。この役は……
「三槓子か」
「すげっ」
文字通り、カンを3つ重ねた役。極めて、成功し辛い役であり、出現率は役満以下であるのは事実であろう。カンを3つ重ねるだけでも難しく、待ちも限定化される。条件が揃うだけでも難しい。そんな中。
「……おっし!ツモ!」
光一はツモ上がる!人生初めての、三槓子の達成!!
とんでもない幸運に至福の表情でみんなに尋ねる、
「三槓子って何飜だよ?へへっ」
答える3人。
「2飜だ」
光一、三槓子を達成するもドラが0というこれまた凄いことをやらかす。
クソ難しい役をわずか2000点という、しょぼすぎる点数で終わらせてしまう。
2017年 3/24
自身初、まさかの三槓子を達成。記念にキャプチャーしました。