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四人の女王と一人の王配

掲載日:2016/12/09

童話参加間に合いました。童話難しいですね。

+++プロローグ+++

 あるところに、春・夏・秋・冬、それぞれの季節を司る女王様がおりました。

 女王様たちは決められた期間、交替で塔に住むことになっています。

 そうすることで、その国にその女王様の季節が訪れるのです。


 ところがある時、いつまで経っても冬が終わらなくなりました。

 冬の女王様が塔に入ったままなのです。

 辺り一面雪に覆われ、このままではいずれ食べる物も尽きてしまいます。


 困った王様はお触れを出しました。


+++++

 冬の女王を春の女王と交替させた者には好きな褒美を取らせよう。

 ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。

 季節を廻らせることを妨げてはならない。

+++++


 ………それはそうと、そんな王様のお触れを見て、こんな会話が始まっていました。

 

「ねぇねぇ、見たあのお触れ。冬って休む為に必要よね?」

「んー、人間の考える事はよく分からないわね。ちょっといつもより冬は長いかなって思うけど」

「冬がちょっと塔に長く居ると困るのかしら。今までもよくあった事よねぇ」

「そうそう冬は独占欲が強いからね」

「塔から出ろって言ったら冬怒るわよ」

「まあ、意外とあっさり出るかもだけど」

「わっからないわぁ」


 塔に程近い森の中の一軒家に住んでいる女王の二人はぺちゃくちゃと話します。

夏と秋の女王です。

 夏と秋の女王は話好きで仲良しなのです。

隣り合った季節だからなのか、可愛い系の雰囲気が2人ともよく似ています。

 

 夏と秋の女王からちょっと離れた所で、春の女王が床にしゃがみ込んでいます。

華やか系の顔が、その暗い雰囲気に台無しです。

 木の床にひたすら花や動物の絵を描いています。

 春の女王が触れる木は次々に若木となっていくのが美しいのですが………。


「何よ何よ。旦那さんたら好き? って聞いてるのに好きって言ってくれないで。私は一言好きって言ってくれたらそれでもう花も咲く気持ちなのに」


 春の女王は何かいじけてぶつぶつ言っています。

 頭の春の花も固い蕾のままです。

 旦那さんと喧嘩した時は、春の女王はそうなってしまうのです。

 本当は明るい性格なのですが。

本来の春の女王は姿通り頭に花の咲いたような、お花畑な性格です。

実際に頭に花が咲いてるのだから仕方ありませんね。

 

 それをまた横目で夏と秋の女王がチラッと見てため息を吐きました。


 いつもの事です。

 いつも繰り返される事なのです。

そのうちに解決するでしょう。


そうそう、そういえば、今回季節が巡らないのは女王の旦那さんが原因といえば、原因です。


 四季の女王には、塔の中に一人の旦那さんが居ます。

 それぞれの季節に旦那さんと会えるのです。

 

 女王皆で旦那さん1人を共有しています。


 旦那さんは全ての物に必要な「水」そのものです。

 神様とも精霊とも判断が付きません。

 水を操るわけではないし、生み出すわけでもないのです。

 ただ、「水」そのものなので、もし旦那さんが消えるのであれば世の中から「水」が消えるでしょう。

水の概念そのものと言えるかもしれません。


 はるか遠い昔から女王と塔で住んでいる旦那さんです。


 春は水が流れ恵みが行き渡り

 夏は蒸気となって漂い生き物を活性化させる

 秋は実りとなって万物になり

 冬は固まり全ての物を休ませる


 四季の女王とは切っても切り離せないたった一人の旦那さんです。

 

 春の女王は、前の春の季節にその旦那さんと喧嘩したのでいじけているのです。


 春の季節の「水」は雪解けになり、流れて姿形が変わります。

 塔に居る「水」の旦那さんも人間と似たような姿を取っていますが、春の水のように流れて掴みどころのない性格になってしまうのです。

 春の女王に情熱的に愛を囁く年もあれば、気まぐれに気を引くようにそっけない態度をとる年もあります。

今回はそっけない態度の年だったのです。

いくら春の女王が愛を囁いても、旦那さんはそっけなかったのです。


 春の女王は毎年懲りもせずに、「水」の旦那さんに振り回されてしまいます。

 だから春が短くなったり長くなったりするのですね。

 今年は前の年に喧嘩したので、塔に行きたくないとごねているのです。


「そろそろ行ったら。そんなこと言って旦那さんの事好きなんでしょ。私の番が来ないじゃない」


 夏の女王が呆れたように春の女王に声をかけました。

 春の女王は床に絵を描くのをやめて考え込み始めました。

夏の女王のいう事はもっともだと思ったのでしょうか。

+++++ 


 一方、冬の女王は、一向に塔から出てきません。

 固く冷たい旦那さんの側が居心地が良くて、ずっと一緒に居たいからです。

冬の間は旦那さんはずっと、冬の女王のものです。


「愛していますわ、旦那様」

「そうか」


 塔のソファで本を読む「水」の旦那さんの横に、冬の女王はぴったりと寄り添っています。

 今は冷たい感じのする美貌になっている「水」の旦那さんの顔から、冬の女王は片時も視線を外しません。

冬の女王から冷たい情熱を感じます。


「つれないお方。でもそこがいいの」

「………」


 とうとう無視してきた「水」の旦那さんを、冬の女王がツンツンと指先で突っ突きます。

 「水」の旦那さんはうるさそうに振り払います。

 けれども、冬の女王は嬉しそうにニンマリと笑いました。冬の女王の冷たい美しさが台無しです。


 突然、塔のドアが大きな音を立てて開きました。

そこに激しい風が吹き込みます。


 春の嵐です。

 

「ちょっとー! ダーリンは今度は私のものよ!」


 春の女王がとうとう耐え切れなくなって塔に乱入してきたのです。

今にも泣きそうな顔をしています。


そんな春の女王を見て、水の旦那さんがパアッと顔を輝かせました。

今年は明るい性格になったようです。

春の女王への好意が顔じゅうに溢れています。

それこそ、春の女王の望む所なのですが。


「やぁ! 僕のハニー!」

「ダーリン!」


水の旦那さんと春の女王が、塔の中で抱きしめ合いました。

春の嵐が瞬時におさまり、生暖かい風が辺りに吹き始めます。


「あら、春が来たのね」


冬の女王が、残念そうにそれでも何処かホッとしたように立ち上がりました。

冬の女王は水の旦那さんは好きですが、春の女王がもっと好きだからです。


4人の女王はだれもお互い仲良しでした。

皆が皆、お互いの良さを認め合い、家族のように思っています。


「お疲れ様ね。冬」

「冬が長かったから春はいつもより美しくなるね」

「私は冬の美しさ、大好きよ」


夏と秋が冬に微笑みかけました。


冬の美しさは、女王の誰しもが認めています。


世界の何もかもがゆっくりと休む静止の美しさ。

所により、白一色に世界が染まります。

息を吐いた時の息の白さ。

誰かと寄り添い暖め合う温もりのありがたさ。

大気もダイヤモンドのようにキラキラと煌めきます。

世界はこんなにも清潔で美しかったと実感する季節です。


「ありがとう」


にっこりと冬の女王が笑いました。

冬の冷たい美貌が、他の女王達と一緒にいる時は柔らかくなります。


今度は春をこの塔において、冬と夏と秋の3人で暮らすのです。

冬は塔の中で過ごすのも好きですが、皆と一軒家で楽しく過ごすのも大好きです。


「またね、皆!」


水の旦那さんとイチャついてたはずの春の女王が、ニコニコしながら手を振りました。


水の旦那さんも手を振っています。

今は、水らしく変化して軟派系のイケメンになっていました。


みんなみんな、こんなやり取りを繰り返しながら楽しく一年は巡っていきます。

多少の長さの違いはあれど、女王たちの許容範囲です。

人間の季節の長さの違和感は分かりません。


王様の御触れはいつの間にか、巡る季節の中で忘れられていきました。


おしまい。

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