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窒息の日
白い空間。ここに誰もいない時間はとても心地いい。誰の視線も感じず、誰の声も聞こえない。「自分の好きな事」を思いっきりやれる。
でも、それはほんの数分間だけの話だ。しばらくすると鐘の音と共に気持ちの悪い笑い声が耳に入る。耳から入ったその声は、縛りつける様に身体を強ばらせる。
更にしばらくすると、今度は誰もいない空間に人間が入り込む様になる。
入り込んだ人間はまず俺を睨みつけ、せっかく綺麗にした場所を何でもない顔で汚す。
その目線はガムテープの様に纏わりつき、息を出来なくする。
人間が入ってくると水が増し、沈められる。
一人、二人、五人、十人。
酸素が足りない。
息苦しい。
水圧が掛かる。
誰かを殺す事以外考えられない。
なのに、なんであいつらは水上で笑ってる?
俺だけが苦しむ事は許されちゃいないのに。
それを笑うと言うのなら、どいつもこいつも皆水底に沈んでしまえ。
痛くて辛くて苦くて苛立たしい、この感情に飲まれてしまえ。
そうして声も出せずに朽ちた後には、美しい世界があるのだから。
少なくとも、俺にとってそれは素晴らしい事なのだから。