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美味しいもん食べて恋もゲット!  作者: 梨香
第一章  彼氏いない歴、何年?

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4  白味噌仕立ての雑煮であけましておめでとう!

「開けまして……そうか!喪中やったなぁ」


 元旦は家族揃って雑煮! 結花は喪中なのにとブツブツ文句を言ったが、母親に布団をはぎ取られて渋々コタツに寝る場所をかえた。コタツの上にはお節と雑煮が置いてあり、白味噌の香りが漂っている。


「私は餅1個でええで。雑煮、嫌いやねん」


「わかってるって、これが結花のや」


 何時ものお椀より大振りの椀には紅白の人参と大根が小口切りで丸く浮かんでいるし、小芋も小さな丸になっている。丸い餅に丸い物ばかり入れるのが関西の雑煮だ。


 結花は白味噌は好きだが、雑煮は苦手だ。


「お前は好き嫌いが多すぎる。こんな美味しいもんないでぇ」


 喪中なのに正月用の箸で父親は心底美味しそうに雑煮を食べながら説教しだす。結花は白味噌仕立ての雑煮はどろっとした感じがして苦手なのだ。


「すましの雑煮の方が食べやすいわ」


 白味噌仕立ての雑煮には湯がした丸餅が鎮座していたが、すまし汁に焼き餅の雑煮なら2個ぐらい食べれるのにとブツブツ文句を付けた。


「また三が日過ぎたら、すましの雑煮を作るわ」


 正月三日は白味噌仕立ての雑煮かぁと溜め息をついた。お節から数の子を小皿に取ってポリポリ食べながら、呑気にテレビを見ていたが、母親に早く着替えろと叱られる。


「そろそろお客様が来るで、そんな寝間着でウロウロせんといて」


 喪中も何も無いんやなと兄と渋々着替えた。


「喪中でも仏様参りに親戚が来るんやろ。結局、同じや」


 隆も仕方ないと着替えてコタツに潜り込む。


「おはようございます」


 11時頃から親戚が集まりだして、座敷の仏壇にお供えを上げて、チーンとすると宴会が始まった。次々と出たり入ったりするので、ビールのコップ、酒のお猪口、小皿と汚れたのは引いて、新しいのを運んで行かなくてはいけない。


「結花ちゃん、クビになったんやて? エラい目に遭うたなぁ、これ、ちょっとやけどお年玉」


 母親のお喋りには閉口するが、お年玉は大歓迎だ。


「あら、働いてるからええのに」


 母親が余計な口を出したが、他の小母ちゃん達もハンドバックからぽち袋を出してくる。


「ええねんよ。今はプーなんやろ」


 親戚としても兄は学生だからとお年玉をあげて、妹にあげないのは格好がつかないと感じていたのだ。結花は臨時収入にほくほくした。


 親戚が多いのもええなぁと思っていたのも、その時までで小母ちゃん達にああだこうだと質問攻めにされた。


「結花ちゃん、彼氏おらへんの?」


 こういう場合はスルーしても、母親が喜々として答えてくれる。


「そうやねん、この子ドン臭いから彼氏よう見つけられへんねん。何処かにええ人おらへんかな?」


「うちの仲人さん、ええで! 持ってるの医者や弁護士ばっかりやねん。美香が決まったら、回したげるわ」


 従姉の美香ちゃんには頑張って独身を続けて貰わなければと、結花は汚れた小皿を回収して台所へ運んだ。結婚相手にお金が有るのは嬉しいが、甲斐性のあるとされている威張った男など興味が持てない結花だった。


『医者なんて看護婦と浮気しそうだし、家事とかしそうにないからパスやわ。ごく普通の優しい人で、料理が得意な人がええなぁ。そのためにも職を見つけなきゃ!』


 外ではバリバリ働くけど家事が全く出来ない父親を見て育った結花は、甲斐性無しの上に家事もしない男がいるはと考えてなかった。




「お母さん、ハローワークまで送って」


 年明け早々ハローワーク通いが始まったが、駐車場は狭く、常に満車だ。結花は自転車で通っていたが、今日は生憎と雨だった。


「ええ職無いんか? お父さんに頼んでみようか?」


 この不況の最中に縁故で雇ってくれる会社があるか不明だが、結花は冗談じゃないと拒否する。


「止めといて、変な会社でも辞められへんから嫌や。営業は嫌やから、バイトでも探すわ」


 自宅に住んでいるので、結花は生活に困らない。ハローワーク通いで大阪でも田舎のこの地域では、賃金が凄く安いと唖然とした。


「事務は何件か受けたけど、簿記とか経験とかないから落ちたし。それに事務は殆どパート扱いで、8時から5時まで週6で月給14万って信じられへんわ~」


 最低賃金ギリギリだと結花はプンスカ怒ったが、それすらも落ちたのでバイトしかないかと方向転換したのだ。


 雨なのにハローワークは満員御礼だった。コンピューターの画面で真剣にバイトを探していた結花は、突然顔に雨粒が掛かって驚いた。


「あっ、ごめん」


 隣に座っていた小父さんはいつの間にか帰って、開いていた席に若い男の子が傘を持っ座ろうとしていた。


「いえ、大丈夫です」


 茶髪ロン毛を結花は嫌っていたが、隣の男の子は似合っていると感じた。


『ハローワーク通いも悪く無いかも……しまった! でれでれの服やわ』

 

 あまり見るのも不自然だから、ちらりとしか見れないが、細身の男の子は真剣に画面を見つめていた。


『わぁ~、睫毛ばさばさや』


 就活中なのに男の子にときめく結花だった。 


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