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プロローグ1

初投稿です。

誤字や脱字には気をつけていますが、もしチェックミスなどでお見苦しい文などありましたらメッセージで教えてくれるとありがたく思います。

「つまんねーよks」などの心暖まるご意見ご感想も大歓迎です。

最後に、気まぐれでもこの作品を開いて見てくれた方に最大の感謝の気持ちを送ります。

「ありがとう!そして……ありがとう!!Y」


  

  プロローグ1 逃亡


 虫の声がうるさい夜中、不気味な程に月が強く輝く夜中、ただでさえ人気の無い町がさらに静まりかえってしまう夜中の町の中を私はただ全速で駆ける。

しかしその足もおぼつかない、私の右腕が焼けるように痛むからだ。

「はぁっ……! はぁっ……、助けて、誰か!」

 消え入りそうな声で私は叫ぶ。

しかしその声は誰の耳に届くことなく無情に夜の闇に消える。

 体力が限界をむかえ、電柱に寄りかかる様に私は腰を下ろす。

左手で抑えている『あいつ』にやられた右腕を見る。

 腕の肉が少しただれ落ちてきていた。

「うぁあ」

 右腕の激痛に思わず叫び声が出そうになるのを必死でこらえる。

私はまだ奴に追われているからだ。

「いったい何なんだ『あいつ』は?」

 解っているのは奴が普通では無いという事だけだ。

 赤いパーカーのフードを頭に被った奴は、会社から帰宅中の私の前に急に現れ襲い掛かってきた。

フードのせいで顔はよく見えなかったが、不思議なのは奴の風貌ではなく私の右腕を襲った攻撃方法だ。

奴は、凶器も何も使わずに私の腕をこの様にしたのだ。

まさか『あいつ』は人間では無いのか?

「それにしても、何故私なんだ?」

 普通の大学を卒業し、普通に夢を叶えてジャーナリストになり、普通の妻と結婚し、普通のマイホームを買って普通に娘が出来て、今は普通にここ『時葉町』に取材に来て家族のために働いている私だ。誰かの恨みを買うような事はしていない。

にも関わらず何故私が狙われる? 

ただの愉快犯なのだろうか?

「やっぱりあんな記事書いたバチが当たったのかな……」

 そこで私のスラックスのポケットに入れていた携帯が震える。

左手で携帯をポケットから出して開くと娘から一件のメールが来ていた。

内容はいつ私の家がある『辰巳町』に帰るのか、今どこにいるのかを尋ねるものだった。

妻は現在学生時代の友人と旅行に行っている為、今私の家には娘一人しかいない。

高校生になったとはいえやはり家で一人というのは心細いのだろうか。

「早く、帰らなきゃな」

 休息を終え、立ち上がった私の頭に一つの考えが浮びハッとする。

「そうだ、携帯を持ってたじゃないか!」

 襲われたパニックで基本的な事も忘れていた。

私はすぐに110番に電話をかける。

 何度かのコール音の後、電話は繋がった。

「はい、こちら110番です」

 電話に出た女性の声に安堵しつつ、私はすぐに現状を伝えようとした。

「もしもし、警察ですか!? 今変な奴に襲われ――」

 襲われている。助けてくれ。

そう言うつもりだった。

しかし、足から伝わる激痛に声を失ってしまった。

「ぁぁぁああああああああああああああああああああああっ!!」

 私は体制を崩し、その場に仰向けに倒れこむ。

倒れた視線の先に『あいつ』がいた。

足が、足が焼けるように熱い、痛い!

見ると私の膝から下のスラックス部分が煙をあげて溶けて私の脚部にへばり付き、脚部の皮膚もただれていた。

「もしもし!? どうしました、もしもし!?」

 倒れる拍子に左手から落としてしまった携帯から心配する女性警官の声が響く。

助けを呼びたいが激痛で声が出ない。

私に追いついた『あいつ』は堂々と道の真ん中を歩き、私に近づいてくる。

「く、るなぁ……っ!」

 必死に出した私の制止の声などまるで聞こえていないかのように奴は私に近づき、倒れている私のすぐ傍まできて足を止める。

「お前、一体どうして……私を」

 私の問いかけに奴は無言の笑みで返す。

そして私は見た。

奴が開いた口には二本の牙が生えていた。

牙を生やしたそいつは何も言わず腕を振り上げる。

方法は解らないが恐らく私はこれから止めを刺されるのだろう。

妻の旅行を台無しにしてしまうな。

家で一人で留守番をしている娘はこれから母と二人でやっていけるだろうか?

ああ、心配だ……。

奴は高く上げた腕を振り下ろす。

勢いよく振ったためフードが頭から離れ、私はようやく奴の顔を見る事が出来た。

獣のような二本の牙、フードの中で輝く瞳、美しい金髪。

やはり、人間では無かったのか。

「絵里……」

 娘の名前。

それが私の最後の言葉だった。


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