6-1:最速
まず始めに起こったのは、バルコニーの融解だった。
蕩けた鉄柵の感触が失せると同時に、ヒィ・クライトが眼下の森へと落ちていくのが見える。崖から飛び出した形のこのバルコニーから下へ叩きつければ、ただでは済まないのだろうが、
「ただじゃ済まねえぞ、ヒィッ!」
狂喜乱舞という言葉が正しいくらいに声を裏返して叫んだ赤髪の男は、満面の笑みで飛び上がり、落ちていったクライトへさっさと追いつき、胸ぐらを掴んでさらに大地へと加速する。
やがて見えなくなった彼らは、それでも存在を示すかのように森の一部を瞬時に白に、そして赤く燃やし始める。爆熱が、時間差で天空へと吹き抜けて鈍色を焦がすようだった。
足場が赤熱して猛烈な熱で暖められた空気が曇天へと巻き上がる。緩く不確かになっていく足場から身の丈以上の大剣を館目掛けて振り落としたローゲンは、未だ抜け落ちた天井の余韻を残すライアの居室を破壊しながら転がり込んで――その切っ先は、床を砕かない。
そいつを片手で受け止める、金髪の修道士が口角を吊り上げて居たのが、もうもうと噴き上がる煙の中に一瞬だけ現れた。
少女はそれを眺めていた。
悪さをした猫のように首根っこを掴まれたまま、上空でそれを見ていた。
じたばたせず、ただどうすればこの状況を打破できるかを考えて、
「お前は、己と戦うつもりか?」
修道士はクライトが見上げるほど長身だったが、しかし下半身を直立した獣のように毛深くして蹄を持ち、背にはタカのような猛禽の翼。尾を持ち、漆黒の肉体を持つこの男は、もはや長身と形容する程度の体型ではなかった。
規格外。
それは、およそ少しだけ人の骨格から外れた姿。
動物に喩えるならば、人が中型だとして、こいつは大型。まさに戦うためだけに生まれてきたように見える。
鋭い爪はそれでも少女を傷つけることなく服だけを掴み上げ、真紅の瞳には敵愾心の欠片もないように彼女を見やる。
「皆さんが戦っているんです。のうのうと、高みの見物をしているつもりはありません」
それは多分、彼女が言わなければ、全てが終わるまでこうしていた筈であろうと思えた。そして事実ではあったが、しかしオリジはその答えを待っていたような気もしていた。
少女でありながらも、その実力にはやや興味がある。
ヒィ・クライトとは異る、完全な付け焼刃の才能でありながらも、生まれながらに持っていたかのように使いこなすその実力。
悪魔との契約で得た力が、どれだけ”最強”に近づけているのか。
「そうか。ならば、場所を変えるぞ」
瞳が眼下を一瞥する。
森は数分もすれば焼き野原になるだろう。
館は、そろそろ崩壊するはずだ。
なるほど、リフがこの中で誰一人として信用しなかった理由は結局、いざ戦いになれば皆等しく阿呆だから、だろう。
情けない理由に納得しながら、最速は船出のような緩やかさで空を泳ぐ。
目指したのは、この両者にとって余すことなく実力が発揮できるであろう障害の無い、雪原だ。
◇◆◇◆
雪原を踏みしめ、独りになった孤独さを、少女は感じる暇など無い。
だというのに、頭から彼の姿が離れなくなっている自分に気がついた。
己は、ずっと彼を想っていたのだと。
郷で孤立していた時、彼は他種族だからと排除されようとも、その身体中に矢を穿たれようとも、ただその理不尽さに怒りし、自分のためだけに動いてくれたのだ、と。
彼女は、思い出していた。
その時からずっとヒィ・クライトが好きだった。大切な人だと、思っていた。
そしてそんな彼から離れたくないから、悪魔と契約してまで力を得た。代償に彼女はヒィ・クライトに関する記憶を、あの船の上からずっと忘れていた。
ずっと、彼に気を使わせていた。
ずっと、馬鹿みたいに、ガキみたいに、破滅的なまでに不器用に、彼を想ってきていた。
イルゥジェンの回想を受けて、過去を見せられて、ようやく思い出したのだ。
思い出してしまったのだ。よりにもよって、この状況で。
「だから、私は、頑張るしか、ないんです」
彼が強く想う女性を助けるために。
彼が幸せになるために。自分はそのための、ただ一つの歯車でも良い。せめて、もう二度と忘れずに彼を想い続けられれば。
それは残酷な選択なのかもしれないけれど、それでもウィズ・エフォウにとっては、彼女の初恋は、最上の思い出となって朽ちることがない。片思いだから、決して崩れないから。
それでいいと彼女が決めた。
もしもう一度でも想いを告げてしまえば、彼は己の救済を考えて、自身の至福を手放すから。
――ともかく、だ。
「殺し合いというのもアレだ。己はどうとでもなるが、お前はまだ死にたくもなかろう。己とて、死にたくも、殺しに興味が有るほど若いわけでもない」
そもそも上の若い連中には少なからずとも因縁があるが、まったくの初対面で殺しあえというのも酷だろう。この根底、殺し合いという行為に意味は無い。
彼はそう言って、短く息を吐いた。内蔵が凍てついているのか、呼気は白く染まらない。
「勝敗はどうでもいい。ただ、どちらかの『まいった』を終わりの合図にしよう。手加減をしようが、本気で挑もうが、今すぐに終わりにしようが、我々の戦いはそこまで。意地があるなら、実力以前に心意気次第で全力を出してやっても良いが」
「もし」
勇気を出してみる。
震えるのは、寒さのせいだけではない。
「私が、あなたを殺してしまったら?」
本気を出してみる。
イルゥジェンの時のように、上手くは行かないだろうけれど。
「それもまた終局の在り方だ。ただ、一つ忠告をするとすれば、己の二千年は伊達ではない」
己を創った魔女は疾うの昔に死に絶え、友好の関係を築いた人間も滅びた。
悠久の時の半分以上を無為にした悪魔の境地は、既に悟りを超えている。
この手で、足で、目で、肌で、もはや知らぬものは何もない。かつて二千年前に何を思い、どう生きたか……その記憶が曖昧になりつつあるだけで、しかしその時、まさか二千年も無駄に生きてしまうとは、夢にも思わなかっただろう。
しかし、この二千年の時を経て、この少女ほど勇気ある発言をした男は数えるほどしか居なかった。
いや、こと腹を据えた人間に限っては、女の方が強いというのは定説だ。己の中で、だが。
覚悟が、決まったのか。
瞳で問う。真紅の瞳が、ぎらりと睨む。
少女は小さく頷いた。
闇が訪れ、夜の帳が落とされつつある空を見上げ、西に逃げる紅に燃ゆる雲を視界に収め。
追いかけるように伸びていく藍色の空の、ちょうど境目。青みが強い紫の空の下で、二つの意思が、爛と輝く。
雪煙が立った。
風が、それを無かったことにするように拭い去っていく。
ただそれだけで、オリジは完全に消えたように見えて――ウィズの耳がぴくりと跳ねる。それとほとんど同時に、反射的にその身を伏せるように屈めた。
頭上を暴風が通過する。
眼前で轟音が響き、飛沫みたいに立つ雪が全身に降りかかった。
雪原を擦るようにして減速したオリジは、彼女の目の前に深い溝を作って立ち止まる。腕を組んで、彼女の方へと向いて、足は深く雪の中に埋もれていた。軌跡を描くようにえぐれた溝はそのままに、ただ笑みだけを作ってみせる。
「伊達ではないのは、お前もか」
「心底、私がエルフで良かったと思ってます」
空気には、敏感だから。
これほど寒さで澄んでいれば、大気の流れで、いくら早くとも軌道くらいは察知できる。こちらに向かってくる気配さえ理解できれば、予測して動くことはそう難しくない。
「でも、それだけじゃないんです。私には」
彼のための力は、無駄じゃない。
身体をやや前のめりにして、指を丁寧に織り込んで堅い拳を作る。痛くても、決して解けないように強く握る。拳のクセを作る。
腕の震えは、もう消えていた。
「行きます」
「来てみろ」
薄暗い世界に、対の紅玉が怪しく輝く。光の尾を引きながら、その体勢がやや低くなったのを教える。
ウィズが大地を弾いた。
瞬間に、彼女は闇に溶け込む弾丸と化す。数十歩も離れた距離を、ただ一度の跳躍で詰め、
「ぬんッ」
オリジが開いた股ぐらの下に踏み込み、胸に飛び込むように全霊を込めた拳を腹部にぶち込む。だが、それは肉厚の手のひらに阻まれ、肉が弾ける甲高い音が反響した。
反射的に空手を脇腹に穿つ。
下ろした肘が、またもや打撃を受け止める。
股ぐらに踏み込んだ足を振り上げる。後ろに倒れこむようにバランスが崩れ、それでも攻撃速度を緩めずに全身の筋肉を緊張状態で保ち、股間を蹴り上げようとして、オリジの身体が僅かにブレた。
一息。幅跳びのように円の軌道で背後に回り込もうとする影を、彼女は動いた瞬間に理解する。
だからそのまま、膝蹴りを前蹴りに転換。蹴りの勢いで前方に姿勢を崩し、股を百八十度開く形で地面に倒れる。
早くも後ろに回ったオリジの蹴りが、ウィズの顔目掛けて飛来した。
かなり低い位置の蹴りだ。球を蹴り飛ばすのと同じで、姿勢がまともでなければ力は入りにくく、打撃の瞬間に力が分散されやすい。
しかし、それはつま先による一撃だ。打撃ではなく、刺突。
彼女はさらに軟体動物が如く己の足に抱きつくように上肢を倒す。後頭部の薄皮を頭髪ごと抉ってすぎる蹴りをやり過ごして、前に前転。即座に立ち上がり、反復するように休む間もなくオリジへ突撃した。
力を込めた技術が入らないとすると、”最速”に”手数”で勝負を挑むしか無い。
一秒にも満たぬ肉薄の時間に胸いっぱいに息を吸い込み、蹴りを外したままの甘い姿勢のオリジへと強襲を図った。
己の上肢は、ただ拳を打ち出すカラクリなのだと思うように。
放つ拳は狡猾にガードが甘い脇腹へ。
防がれることを前提に、そこをガードするが故に隙となる水月に。
拳に硬い感触、それがオリジの肘と理解するや、殆どタッチするような柔さで腕を引いて次を見抜く。
穿つ、防がれ、引き、穿つ。
もはや息をする時間すら無い。
拳は引かれた瞬間に、次を撃ち放つ。防御を理解し、腕を引くと同時に今まで引いていた腕を解き放つ。
もはや交互に撃つ時間すら惜しく思って、拳が防がれると同時にもう一方の腕を突き出していた。
穿つ、穿つ、穿つ、撃つ、撃つ、撃つ――。
拳の位置を確認していた瞳は、オリジという個体を認識するだけで終えている。視界内の動くもの、動かぬものを正しく認識し、空いた場所、ふさがっている場所を判断出来るだけで、十分だった。
激しく、激しく、身体を揺さぶって殴り続ける。拳の皮膚が裂けて血の尾を引いた瞬間に、その拳は宙を舞った鮮血を弾くように拳で叩き、そのままオリジを殴る。
感じていた時間が、緩く感じ始めようとした境地で、
「っ!」
撃ち放つ右腕が、いなされるように弾かれた。
体重をかけていたわけではないから体勢が崩れるわけではない。だが、右腕は大きく広げるように外側に弾かれて、
「ふっ」
得意げに嗤う、オリジを見た。
ここからだと言うように、無理やり右腕を引き戻す最中に左拳を撃ったそれさえも、たやすく弾く。まるで赤子と遊ぶように、筋肉が溶けそうなくらい熱く、引きちぎれそうなくらい痛々しく軋みながらも加速していたこの拳を、防ぐだけでは飽きたらず弾いたのだ。
許せない。少女は思う。
意地があるのだ。女の子にも。
だから一度止まって、
「ふう~、はぁ、ふぅ……」
全身から湯気が立つのも気にせず、額から溢れ出る汗もそのままに、両手がもう何も握れないくらい真っ赤に、それでも解けぬ拳をそのままに、ゆっくりと呼吸を整える。
早鐘のように、小動物のように激しく鼓動する心臓はひとまず無視。
身体は未だ、加速を求めて、最強を呈するのだ。ならばその証拠とばかりに、もっと、ずっと、動かなければならないだろう。
「行きます」
「来い」
さっきよりずっと低い声色で、両者が仕切りなおした。
まずは高く跳び上がった。わざわざ正攻法で行く必要はないのだ。
顔面を横から蹴り飛ばす。
それを、たやすく受け止められた。しかし、今はそれでいい。
でも、
「きゃ、ぅ……ぁぁ――――っ!」
悲鳴ばかりは、内臓が無重力地帯に落ちたかと思った瞬間に思い切り落とされる不快感だけは、我慢出来ない。
足を掴まれ、ウィズは赤子が人形を扱うかのように乱暴に振り回される。そうして一段と勢いをつけて少女の矮躯は簡単に投げ飛ばされた。
さながら水切り。びゅん、と風を切る速度で地面スレスレを超速度で飛来。数度の鼓動で地平線まで至らんとするその速度に、彼女は歯を食いしばってなんとか堪える。
己を飛び越えていくオリジを影だけで認識しながら、ウィズは背から抜いた鉄の矢を地面に刺した。と言うよりは、力任せに引っ掛けた。
凄まじい衝撃に両腕が弾かれそうになる。それと同時に、一度一直線の軌道からズレた身体はついでとばかリに雪原に叩きつけられる。ゴムマリのように、暴れ馬に乗るように身体が勢い良く弾み、しかしそれでも見る間に減速していく現状が甘美すぎてウィズは手を離せない。
だから、手を離すのはブレーキが完全に効く一歩手前。
手を離すと同時に身体は後方へと吹き飛んで――滑るように後ろへ加速。
待ち構えていたオリジは、さすがに驚いたように彼女へと向いており、そうしてウィズはまた矢を抜いた。
距離はまだ十歩分以上。
そこいらで十分だし、猶予を与えてやるほど、彼女には余裕が無い。
だからその場で踏み込むようにして、彼女は一歩分だけ大股で雪原を踏みしめた。
握った矢は頭の後ろに引いて、重心を前に踏み込んだ足へと移していく最中で勢いをつける。体重を乗せて、身体を捻り、下半身をバネにする。矢が身体の中心を通過して、いよいよ発射体制に――重心は完全に前に踏み込んだ右足に、バランスはもうどうでも良いと切り捨てて。
全身全霊を込めた一撃を、矢に込め、放つ。
手から離れた瞬間に最大加速を得たそいつは、瞬く間にしてオリジへと迫った。
だが、認識させた時点で、それは避ける猶予となったのだ。
頬を掠めともせず、オリジはそれでも大げさに横に跳ぶ。風を引き裂く音と、余韻のように吹き抜ける風を感じながら、一度のまばたきの間に通過する矢を理解し、
「ぁ、んッ?!」
油断していた、と言うほかないのは、言い訳になるのだろうかとオリジは悩む。
己の脇腹を掠め、抉って過ぎたのは確かに今避けたものと同じ矢であり。
顔を上げれば、いつの間に、というしか無いほどの速度で巨大な大弓を展開したウィズが、既に次弾を発射していた。拳を作ったまま、弓矢を支えるのは親指だけで。
容赦がない――そう思うのは、横に弓を構えた上に、三本同時に放つ彼女を見たからだ。
だから選択肢をそぎ落とされたオリジは、その矢の範囲外に加速すれば良かったのだと、空に跳び上がってから考えた。
己が空に跳び上がる。無様なのは、翼を使わなかったこと。使うには僅かなはためきが必要であり、それはあと一息分の時間が必要だった。
眼下から飛来するのは、もう矢ではない。
それより、今ではもう随分と脅威となった少女が、弓も矢もかなぐり捨てて着の身着のままで大地を弾いて虚空を貫く弾丸となったのだ。
だから一息分、息を吸い込む間に、拳が来た。
宙空で、身動きの難しい滞空時間の終わり際に、オリジはその顔面に突き刺さる弾丸と化した右拳を受けるしか無かった。
頬が歪み、頬骨が砕ける。頑丈な身体は、それでもその程度の痛手を負うには十分な威力を受けていた。
さらに厄介なことに、少女は拳撃の真髄を理解している。拳は砕くだけではなく、穿つのだ。
顔面を殴った拳は、まだ飽き足らない。まだ食い足りない。筋肉が唸る音が直接頭の中に響くのを感じながら、加速とは関係のない部分での一撃を食らった彼は、力任せに大地に叩き落された。
虚空に、大気が弾けて輪が広がる。衝撃が空間を波打つかのように、輪は暴風となって周囲に広がり――殴り抜けた瞬間に激震した大地には、にわかな窪みが出来上がっていた。
巻き上がる雪煙の中に、それでも倒れはしない悪魔の姿。
だけれど、最速の悪魔は、その大地に跪いていた。
見下ろす彼の姿はそれでも大きく、彼女は思ったよりも高くはないその高度から落ちていくのを感じる。浮遊感が、落下に移り変わる不快感を噛み締めながら、それでもあっという間に雪原に着地した。
場所は、オリジの目の前で。
大きく胸いっぱいに息を吸い込んでから、跪く悪魔に手を差し伸べる。もっとも、力を込めすぎた拳は未だ元の手を忘れたままなのだけれど。
オリジは、憮然とそれを受けて、彼女の手首を引っ掴んで体重をかける。まったく遠慮のない支えにウィズは思わず倒れかけながらも、後ろに倒れこむようにして彼を引き上げた。
立ち並べば、完全に大人と子供の身長差で。
しかし彼らは、完全に対等な目つきで。
まったく同じタイミングで、口を開いた。
「――参りました」
「――参った」
予測できた、事ではない。
だけれど、十分ではあるような気はしていた。
ウィズは最速の悪魔に一撃を撃ちこむことができたし、己の全力を叩きこむことができたとは思う。しかしそれが最後なのは、膝がガクガクと笑い全身が痙攣するのを見て、誰でも分かった。
また同じく、オリジもそれで良いと考えていた。
彼女の全力を受け止めたし、最後の最後で番狂わせの一撃をもらった。己の判断ミスが招いた結果だが、相手が同程度の実力者ならばここで命の決着までがついている。
恐らくウィズは認めないし、その自覚の欠片すら無いが、これは彼女の勝利なのだ。
相手の思考を限定し、隙を作る。状況と、道具と、タイミングと知恵と機転を余すことなく使った結果だ。
誇って良い、と彼は思う。
言わないが。
癪だから。
そうしてオリジは骨が砕かれた顔を抑えながら、短く息を吐く。熱を持った身体は、久方ぶりに吐息を白く染める。
もはや、そこに言葉など要らない。
ウィズは彼の敗北宣言に疑問を抱かず、相打ちだと過大評価に思う。
オリジは彼女の敗北宣言を聞かぬふりをして、心の中で全力の賛辞と拍手を送る。
だからオリジはただそこに立ち尽くし。
ウィズは彼へと深く頭を下げてから、荷物を回収し、館へと歩みを急いだ。




