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開いた扉、そして――

「了解した」


 返答はそれだけで良い。


「いつも通りよ、いつも通り」


 そう、いつも通りやるだけのことよ。


「あらあら。やる気まんまんですねぇ」


 限界だの何だの、そんなものはどうでも良いでしょう。


「信念を曲げず」


 我らがすべきことはとうの昔に決まっている。


「あたしらにそんなのあったっけ?」


 ただただ、勇者の為だけに。


「あるのでは?知りませんけど」


 道を、勇者が望む道を、造ってみせましょう。


「さあ、行くよ!」


「応」


「あいよ」


「はぁい」


「いや最後くらい合わせなよ!」


 魔法使いのツッコミを皮切りに、時が動きだす。




 一。


 侍が斬り込む。討ち取る事は考えず、大鎌と打ち合う。


 二。


 勇者の突撃。肩からぶち当たるように近接、同時に侍が弾き飛ばされる。


 三。


 僧侶の結界の発動。弾かれた侍は即座に着地、再び走る。


 四。


 レヴィアタンの攻撃。巨大なかぎ爪を魔王の頭上から振り落とす。


 五。


 一旦距離を取っていた勇者が再度突撃。魔王の鎌がレヴィアタンの腕を斬り落とす。


 六。


 魔王の一撃。勇者、侍の接敵に合わせて地面に鎌が突き立てられる。


 七。


 城を揺るがす程の衝撃波。相殺する形で僧侶の結界が粉砕される。


 八。


 勇者の刺突。名刀と言われたそれも、魔王の鎌に両断され、勇者自身は蹴りの直撃を受ける。


 九。


 吹き飛ばされる勇者と入れ替わるように侍が接敵。数合の打ち合いの後、勇者と同様に蹴り飛ばされる。


 十。


 動く魔王。魔法使いへと向かうが、レヴィアタンに阻まれる。





「ええい!退けい雑魚がぁッ!」


 魔王の一撃は、巨大な竜を一刀の元に両断した。光と共に消滅する竜の向こう側、うっすらと笑みを湛えた魔法使いの姿が見えた。


「皆、お疲れ様。―――――さあァ!開くわよ!突破口!」


 レヴィアタン召喚を凌ぐ魔力が放出される。濃密な魔力の塊は瞬時にその姿を鎖の姿へと変貌させた。縛鎖となった魔力は、魔王の全身に絡みつき、地面へと組み伏せる。


「ぐっ!こんなもの…っ!」


 しかし、そう易々とは砕けない。十秒の間練り上げた幻想は、広域のマナと並外れた積載量を誇る魔法使いの貯蔵魔力を糧に、強固な現実となって魔王を戒める。


「門は開いた。本丸へ斬り込む」


 侍が、勇者が駆ける。手負いではあるが、僧侶の祝福が二人の能力を引き上げていた。十全と言える程の身体能力の元、瞬く間に距離が縮まる。


「オああぁぁッ!」


 両者の間合い、既に一間。一足一刀の間合いとなる寸前、魔王がついに鎖を断ち切る。前を疾走する侍の首へ、最大級の一撃が弧を描いた。


「申し上げたはず。毛ほども傷はつけさせないと!」


 鎌の軌道上、幾重にも、幾重にも、無数を超えて無限に近い障壁が展開される。しかし、魔王の鎌は止まらない。砕き、断ち切り、喰らい尽くし、彼の者の首を取らんと欲する。


「遅いぞ魔王!」


 障壁の数、残り数枚のところで死の顎は動きを止めた。侍が動く。僧侶の祝福に加え、己の限界を無視した一撃。


「ぬうっ!」


 鎌の柄を全力で打撃され、鎌は宙を舞い、衝撃で魔王の両腕が弾かれた。致命的な、隙。


「道はつけた!勇者!!」


 一拍遅れて、勇者は侍の横を抜ける。対する魔王に、最早動きはなく。


「魔女さん――――!」



 姉と慕った存在から貰った短剣を、魔王の腹へと叩き付けた。


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