とある魔女の記憶、その一
暫く台本形式の文章が続きます。名前も決めておりませんので、適当に脳内で補完してくだされば幸いです。
～とある洞窟～
勇者「くっ！このままじゃ―――」
侍「弱音は今此処に於いては死に繋がる。捨て置け」
僧侶「…」
魔法使い「いやぁ、回復担当が気絶したのは痛いよねぇ」
高位魔族「終わりだ。貴様らはここで一人残らず潰す」
勇者「やらせるものか！ボクの命を賭けてでも、仲間だけは！」
侍「死なば諸共。信念に死ぬ事と見つけたり」
？？？「詰まらぬなぁ…実に詰まらぬ。破竹の勢いを見せた勇者らも此処で潰えるか。諸行無常と言えど、矢張り詰まらぬ」
勇者「誰！？」
？？？「さてのう。どれ、加勢してやろう。其処で大人しく震えておれ。子猫のあやし方というものを教えて進ぜよう」
高位魔族「一人増えた所で詮無き事よ。食らい尽くしてくれよう！」
？？？「ほほ。威勢だけは良いものじゃ。往くぞ」
勇者「速い…っ！魔法なの？あれがヒトの出来る動き！？」
魔法使い「いやいや、マナの流れがあったとでも？」
高位魔族「がっ！」
侍「なんだ、あれは。拳一つであの防御障壁を貫けるだと？」
？？？「ほおれ。魔族としての矜持を見せよ。後一手…後一手で汝は詰み、ぞ」
高位魔族「舐めるなぁ―――！」
魔法使い「下がって！防護結界を――――」
？？？「ぬるい。出直せ、小童」
魔法使い「………下手すりゃここら一帯消し飛ぶような威力だったんだけど？」
勇者「腕の一振りだけで…消えた………」
高位魔族「貴様――――！」
？？？「囀るな下朗。余の前に立つ権利、汝にはなかった。それだけのことよ」
侍「―――――。何を、やった」
？？？「首を刈っただけのことよ。頭を潰せば、彼奴らも死ぬ」
勇者「あ―――と」
？？？「よい。興が乗っただけのこと。楽にせい、許す」
魔法使い「えー…何かワールドクラスの態度のでかさ…」
侍「味方だとは限らない。気を抜く事など出来ない」
？？？「うむ。汝はそれで良かろう。信ずる者は莫迦を見る、と。ほれ」
僧侶「う…んん……。あ、れ？私…」
勇者「僧侶！良かった……」
侍「…。理解した。貴公は、現時点では敵ではない」
魔法使い「万能かよ！万能なのかよ！格闘しつつ魔法使いつつとか！」
勇者「あ、の。ありがとうございました…。貴女がいなければ―――」
？？？「そうじゃな。汝らは死んでいたであろう。余が、『偶々』、通りかかった幸運に感謝するがよい。―――まあ、このまま進めば汝らの運命は変わらぬだろうが」
勇者「それは…っ！そんなこ―――」
？？？「そんなことはあり得ぬと申すのかえ？心身ともに未熟な汝らがか？冗談としては面白い。余は評価する」
僧侶「ええと………全く話が見えないんですが…」
魔法使い「こっそり説明してあげるから、ちょーっと黙ってようね。今シリアスだからねー」
？？？「断言しようではないか。汝らが生き残る事など出来ぬと。惨めに故郷へと帰るがよいぞ。一縷の望みすらもありはしない」
勇者「それでも！それでも、ボクたちは進まないといけないんだ！皆の笑顔のためにも！生まれて来る子供たちのためにも！」
？？？「相分かった。…が。皆が皆、同様の意見ということもあるまい？」
侍「愚問。我が太刀で魔王の首級を上げるまで、国に帰る事など出来ぬ」
僧侶「ああ、成程。…え？あ、はい。私は皆を癒します」
魔法使い「天然怖いわー。あたしは帰ってもいいんだけどね。まあ、舐められっぱなしも性に合わないのよね」
？？？「ほほ。若いと言うべきか。よし、ならば余も連れて往け」
勇者「…え？」
？？？「旅は道連れ世は情けと言うではないか。なぁに、悪いようにはせん。宿代くらいは払おうではないか。身体で」
僧侶「ええと、私たち百合属性って居ましたっけ？」
魔法使い「さらっと面白い事言ってるけど、そういう意味じゃない気がするなぁ、あたし」
？？？「可愛がって欲しいのならば、一晩ねぶりつくしてやるのも良いが」
勇者「そそそそそういうことじゃないでしょ！」
魔法使い「どどどどど童貞ちゃうわ！と近い何かを感じるわね」
僧侶「あらあら。勇者さんお顔が真っ赤。初心で可愛いですよね」
侍「………くだらん」
？？？「ああ、そうそう。余は…そうじゃのう――――魔女、とでも呼ぶがよい。さあ、案内せよ。余は酒を所望する」
勇者「ええぇ…」
魔法使い「ま、いいんじゃない？悪い人じゃなさそうだしさ。とっととこんな薄っ暗い洞窟出て、ゆっくり休もうよ」
侍「………（ぐぅ）」
僧侶「あらあら。侍さんもお腹が減ったそうですよ」
勇者「はぁ…。もうどうにでもして…」
魔女「酒じゃ、酒を持ってまいれ！」
魔法使い「いやまだはえーよ！」
～とある街、その酒場～
魔女「ちっ。安酒ばかりではないか。もう少しまともな葡萄酒はないのかえ」
勇者「父さん、母さん、ピンチです。我がパーティの財政危機です」
僧侶「ただでさえ侍さんが大食いですからねぇ。無駄に」
魔法使い「一言余計、マジ余計」
侍「………」
勇者「ああっ、侍ちゃんがしょんぼりしちゃった！」
僧侶「あらあら。困ったお方ですねぇ」
魔法使い「困った神職もいたもんだよ！」
魔女「なかなか器量が良いではないか。どうじゃ、今夜余の夜伽に」
魔法使い「魔女もナンパしてんじゃないわよ！ツッコミが一人しかいないから忙しいわね！」
勇者「メタい、メタいよ魔法使いちゃん…」
侍「…お代り」
魔女「ようし！その勝負乗った！余に敵うと思うな有象無象ども！」
勇者「何か他のお客さんと飲み比べ始めちゃったよ…」
魔法使い「自由すぎるだろ！自重しなさいよ！」
僧侶「あらあら。元気ですねぇ」
侍「…お代り」
勇者「もうどうにでもなーれ☆」
本日はここまで。続きは後日投稿させていただきます。
