表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/7

第六話■ゆくえしれず■

旅館にもどり、布団に潜り込んで2時間。煮炊きする音、朝飯の支度をしだしたのだろう。


他、隣も向かいも、どこからも音はしなかった。

二人しか宿泊はいないのだろう。

旅館は、五、六人の客が何日かかけゆったりと湯治できるような作りになっている。

宿泊するのは猫の額ほどの中庭を挟み、離れの別館。母屋の給仕場に向かった。

「おはよ」

「おはようございます!

朝はやいんねぇ!ゆっくり眠れんかったかぃね」

「ねたよ、朝風呂いくから早起きしただけ」

「朝ごはん、パンかね?しろめしかね?」

厨房のシンクには、オーブンの中に入れる鉄板がありクロワッサンの形をしたパン生地が、スタンバイしてる。

「しろめし…、クロワッサンどうするん?」

「婆さまたちが、畑仕事の前にモーニングたべくるんよ」

「…どうりでいっぱい」

漬物に始まり、焼き魚、みそ汁、コーンポタージュ…ウインナー、温泉卵に、スクランブルエッグ。沢山の食材が並んでいた。

食欲こそないが、綺麗に飾られた御膳、まるく太った魚、張りがあるオレンジ色の黄身した卵、鮮やかな山菜…見ていると、なんだかたのしくなった。

あたたかくて、いい香りの蒸気がそこらに立ち込めている。

鍋があって、火があって、水があって。

「この辺のひとは、だいたい食べにくるんよ。さみしいんもあるけど、

独居老人ばっかりやからね、夜中に倒れて死んだまま草ったらあかんやろ。顔合わせとくんよ」

「寺の住職さんもきてた?」

「亡くなる前はね」

「…え」

「三ヶ月前に亡くなったんよ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ