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第八話 魔神城(笑)は今日も平和です

ジウレスカは魔族の中でも最強の部類に入る強さを持ち、魔神への忠誠心も人一倍持っている。

魔神もそれを分かっているからこそ、彼にこの任務を与えているのである。

ジウレスカはこの仕事を誇りに思っていた。自らの忠誠心を魔神が十分理解していると。

今日も与えられた任務をこなしながらジウレスカは、魔神への感謝を思い続けていた。


「あれ?」


するとすぐそこの曲がり角から魔族が姿を現した、姿形から下位クラスの魔族と思われる。

何故かこちらを見て疑問の声をあげていた。


「貴様、ここに何用だ!返答しだいではただでは済まんぞ!」


そう言うとジウレスカはその魔族を多少加減しつつ威圧した。

大抵の魔族、いや生物はこうすれば腰を抜かしてしまう。

本気でやればそれだけで命を奪ってしまうこともある




下級魔族は案の定、尻餅をつき、怯えた様子で慌てて


「ま、まままままってください!は、話を聞いてください」


そう言いながら早口で話し始めた。


「さ、先程上位魔族の方に『ついさっきジウレスカ様が玉座の間に向かっているのを見かけた、随分慌てた様子だったから恐らくここが無人になっているだろう、私が説明しておくからお前はジウレスカ様が戻ってくるまで変わりに任務をこなしておくように』と言う指示を与えられたのでここに来たのでございます、決して嘘偽りなどではありません!!」


「何を馬鹿なことを、私はここで任務をこなしておるわ!」


「え、え?」


「大方そやつが見間違えたのであろうが…能力はともかく私に似た武具と体格の持ち主なら上級魔族なら珍しくあるまい」


「いえ、で、ですが私もしかとこの目で確認しました、随分急いでいる様子でしたがあれは間違いなくジウレスカ様でした」


「何だと…?」


私と同じ姿形をした者がいてその者が玉座の間に向かっている?


「それが虚偽なればどうなるか分かった上でのことであろうな!」


私はその魔族に先程よりも強く威圧しながらそう質問した。


「このような悪ふざけがどうしてできましょう!

私とて無断でここに来ればどうなるかくらいは良く理解しております!」


その魔族は今度は怯えることもなく強い口調でそう答えた。

目や体に不審な動きは見当たらない、どうやら嘘ということではないらしい


「つまり何者かが私に成り代わって玉座の間に向かっているということか…?」


私がそう呟くと、下級魔族は途端に顔を青ざめた、


「そ、そんな!それでは魔神様のお命が危険です!」


「馬鹿者が、折角変装していながらそのような慌てた態度をとる、その程度の輩に魔神様が遅れをとる分けが無かろうが」


その程度の小物に魔神様を害する事などできるはずは無い

そう思った、が、その魔族は先程とは別人のように


「何を言うのです!確かに小物かもしれませんがジウレスカ様に変装しているのですよ!?恐れながらジウレスカ様は御自身が想像している以上に魔神様に信頼されているのです!万が一の事も十分考えられます!」


と、声を荒げながらまくし立てた。


「これから私はすぐに玉座の間に向かい、なんとしてでもその侵入者を排除します!…しかし悔しいですが私のような下級魔族がいくら叫んでも誰にも信じて頂けない…ジウレスカ様、どうか私と一緒に玉座の間に来て頂けないでしょうか!?」


「む…」


下級魔族は激しい口調でそう言った


確かに侵入者が私に変装していれば、この魔族が何を言ったところで誰も信じることはないだろう。

そもそも下位クラスでは玉座の間に近づくことすらできない、侵入者は疑われることなく魔神様の下に難なく辿り着いてしまう。

とすれば…


魔神様は私に全幅の信頼を寄せてくれている。

この魔族の言うとおり最悪の事態も十分考えられるか


「よかろう事は一刻を争う、すぐに向かうぞ」


「は、はい」


私はその魔族の横をすり抜けそのまま玉座の間に


行こうとすると後ろから咳き込む声と何か液体が地面に零れた時のような音がした。


私が振り返ると、そこには片膝をつき片手で口を押さえ小刻みに体を震わせている

先程の魔族の姿があった。口を押さえている手からは青い血がだらだらと垂れている。


「どうした!?」


「や、やられました…あの時、妙な匂いがしていたので気になっていたのですが…恐らく侵入者は毒を撒き散らしながら移動していたのでしょう」


下級魔族は再び青い血を口から吹き出す


「わ、私は恐らくもう助かりません…ジウレスカ様、お願いでございます…

どうか…どうか魔神様を…」





御守りして下さい



今それができるのはあなた様だけです





最後の方は耳を近づけようやく聞こえるほどのか細い声だったが確かにそう言ってその魔族は地に伏し、動かなくなった。




私は身に着けていたマントをその魔族に向けて放り投げた、

マントはひらひらと舞いながらその魔族の全身を覆い被した





お前の最後の願いは確かに聞き届けた、だから安心して眠るがいい。





そう私は心の中で思いながらそのまま玉座の間に駆け出した。


卑劣で卑怯な侵入者を絶対に許しはせん。

私の手で必ず八つ裂きにしてくれる。


全力で駆けていると、すれ違う魔族達が何事かとこちらを見る、


「侵入者が玉座の間に向かっている、皆急ぎ駆け付けよ!」


その声を聞いた魔族達は慌て、戸惑い、驚き様々な表情を浮かべたが、事態の危険性を察知し私の後に続いた。




玉座の間の扉は開いていた

普段いるはずの門番も居ない

私は最悪の事態を想定し、勢いをつけたまま乱暴に玉座の間に入った


玉座の間に居たのは魔神様と






本来その部屋に近づくことすら許されない筈の









一人の下級魔族が居た

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