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第六話 魔神城(笑)

その日も魔族Aは異常がないことを確認しつつ、いつもどおり見回りをしていた。

すると少し離れた所にある曲がり角から、見ない顔の下級魔族の姿が見えた。

声を掛けようとすると向こうがこちらに気づき、慌てた様に小走りしながら駆け寄ってきてこう言った。


「初めまして、わ、私。ついせ、先日、城の警備には、配属されたもので、今、色んな方々にあ、挨拶に伺っている所です」


どうやら走り回っていたらしく、息も絶え絶えで、肩もせわしなく上下させている


ふむ、新入りか・・・私は城にいる下級魔族による警備の指揮を執る立場ではあるが、下級魔族を自分で選んで城に配属させることはできない。

当然だ、ここは魔神の住む城、すべての決定権は魔神様にある。

ということはこの下級魔族も魔神様の御目に留まり、城の警備という誉れ高い役目を賜ったのだろう。



「そうか、私はお前を指揮する立場にあたるものだ、これからは私の指示に従うように…しかし見回りをする前からその様子では心もとない、少し休憩してくるといい」


かなり疲れている様子だったのでAはそのように声をかけた、しかしその魔族は、


「い、いえ、それよりも重大なほ、報告が…」


と、言葉を返した後、その魔族は呼吸を整え、息切れを落ち着かせはじめた。

Aもその方が報告とやらを聞きやすいと思い、落ち着くのを待った。


そしてようやく落ち着いたのか魔族はゆっくりと話し始めた。


「先程も申したとおり、私、先日魔神城に配属されたばかりで、今の今まで城の方々にご挨拶をしていたのでございます、すると先ほど────を守護しているあの御方…えーっと」


「ジウレスカ様か?」


「あ、はい!そのジウレスカ様をお見かけしたのですが…」


ジウレスカ様か。

数々の人間の強者、勇者を何人も屠り、最上級の魔法をいくつも使え、さらにその身には最高の武具を着けている。

まさに魔族の勇者と呼ぶにふさわしい御方、ゆえに彼の御方はあの場所の守護を任されているのだ。

そのような御方にお会いできたのだ、この新入りの感動はひとしおのものだろうと私は思っていた。

だが新入りはそこで表情を曇らし、その後の言葉を中々口にしなかった。


「どうした、何かあったのか?」


私が尋ねると新入りは顔を俯けながら言った。


「いえ、こんな話を私のようなものがしても信じていただけるかどうか…」


「ふむ、取りあえず話してみるがいい、信じる信じないはともかく、話を聞かなければ始まらん。それにお前も誰かにそのことを報告するために走り回っていたんだろう?」


「わ、分かりました、すべてお話致します」








私があちこちの方々に挨拶をしながら城を歩いていると城の一角にある曲がり角に差し掛かったのですが、そこでふと顔を通路の先に向けるとジウレスカ様のお姿を見かけました。


私のようなものでも知っているあの噂に名高い御方に会えるなんて、と感動に打ち震えぜひ挨拶をと思い近づこうとしたのですが、なにやらどなたかと話をしていらしたのでそれが終わってからにしようと思い、邪魔にならぬよう曲がり角に姿を隠して待っておりました。


すると会話の内容が漏れ聞こえてきたのでございますが、その内容が…


「ほう、召喚された人間か、ということはここにはWKを覚醒させるために来た、ということか」


「来たってゆうか飛ばされたって感じだな、気づいたらなんか知らん部屋に居たんだよ…ってかやっぱり俺が来た理由知ってんだな」


「今まで何人の人間が召喚されここに来たと思っておる。

…しかしWKやジョブも持たぬ人間が力に守られているとはいえこのワシと口が利けるとはな、普通なら心臓が止まっておるぞ」


「あいにく俺の心臓にはラッコ並に毛が生えてるんでね、ラッコの体毛の数は世界一位だ」


「…意味は分からんが貴様が豪胆な人間だということはわかる。

してなにゆえ城内をうろついておる?時間が経つまで隠れていればよかろう」


「なに、丁度あんたみたいな奴を探してたんだよ」


「ほう」


そこで私は我慢できなくなり顔だけ出して話し声のする通路を見ました。

するとなにやら小さな音がしたかと思うとジウレスカ様の体が眩く光りだしたのです




「な、なんだこれは!?力が、力が抜けていく!?」



「シルブレっていうものらしくてね、魔族の力を弱めるものらしいよ」


「シルブレ…だと!?バカな!シルブレがこれほどの力を持っているはずがない!体も動かぬ!な、何をした人間!?」



シルブレとは特殊な鉱石を加工し、それに聖職者が祈りを捧げて完成する指先サイズの球体でそれを使うと魔族の力がしばらく低下するというものです。

が、ジウレスカ様のような最上級格の魔族には効果が無い筈、なのにジウレスカ様は片膝を着き片手で胸を掻き毟りもう片方の手で頭を抱えとても尋常な御様子ではありませんでした




「こいつは普通のと違ってね、本当にとびっきり強力な魔族にしか効果がないっていう変わり物らしいよ。シルブレクエスタとか店主はご大層な名前付けてたけど…ようは欠陥品だ。普通の魔族相手にはただの石ころだもんな…だがまぁ、物は使いようだろ?」




私が目にしたその人間は







本当に楽しくてたまらない子供のような











満面の笑みをしていました



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