第三十話 ググるより辞書を引け!
「ジン様、ジン様」
体を揺すられ、意識が起き始める
目を開けるとシエルとティアラの顔が飛び込んできた
二人は上半身だけを起こし、下半身はまだシーツの下だった
当然すっぽんぽんだ
「ああ…おはよ」
体全体を伸ばす
「ジン様、申し訳ありません…」
いきなりシエルが謝って来る
「どうかしたのか?」
「私達が起きた時には既に朝食の時間が過ぎてしまっていたようで…」
ティアラが続けて話す
そのことか
部屋に時計が無いが日の傾きとかで判断したんだろうか
「その事なら気にしなくて良い。食事は外で食べれば良いし、そもそも起きれなかったのは俺が原因なんだ、謝る必要なんて無い」
それより、と言葉を続ける
「悪かったな、初めてだったのに随分と激しくしてしまって」
そう言いながら二人の体を抱き寄せ、頭を撫でる
両脇に凶器が形を変えて押し付けられた
なでなで
「いっ、いえ、そんな…えと、その…嫌だったとかそういうのはなくて…」
「むしろその…あの…」
二人は途端に顔が真っ赤になった
さて、食事の時間が終わったって事はもうそろそろ風呂の準備をしとかないとな
「とりあえず今日は色々と旅に必要な物を色々揃えるつもりだ、ただ蔵書に仕舞うから鍋のようなかさばる物も買うつもりだからそのつもりでな。
ああ、但し仕舞うのは一度ココに持ってきてからだ」
人前で仕舞ったりしたらめんどくさい事になるからな
「は、はい!」
「わ、分かりました」
「んじゃそろそろ風呂に行く準備しとくか」
そう言えば最初はくろごまだけ連れて行こうとしてたんだよな
一月も経たないうちにハーレム形成する事になるとは…
でもそれより早くハーレム(無機物)を達成してるんだよな
まぁ下らん話はここまでにしとくとして、
風呂に入ってる間に紹介の様な事をしておこう
シエル(ティシエル・ラ・ペトルムルク)
年齢17歳、身長165cmくらい
ボン・キュ・バンな体系で主に胸がヤバイ
肌は普通よりやや白く、きめ細かい絹のような印象がある
数日前までアレだけの呪いを持っていたというのにシミ一つ無い
髪の色は青みがかった黒で現在ポニーテール
こちらも呪いが消えたせいかシャンプーCMの女優みたくさらっさらになっている
降ろした時の髪の長さは膝くらい
スタイルの割に性格は子供っぽく、ころころ表情が変わる
なんにでも興味を持つやんちゃな子犬っぽい
ジョブは下級職、剣士
戦士派生職で、剣技に特化した前衛アタッカー型
重防具、及び盾は装備不可能
攻撃、防御、回避を全て剣で行う為、本人の技量次第では上級職を圧倒出来る可能性を持つ反面、軽防具しか装備出来ない為、極めて脆い
と、以前読んだ本に書いてあった
武器は剣『装具』クライムソング
WKは焔纏と言うらしい
ティアラ(アティアラ・ル・ペトルムルク)
年齢16歳、身長はシエルより少し低め、160cmくらい
胸も姉と同レベルのボン・キュ・バン
肌は姉よりも白く、こちらは柔らかい雪のようなイメージがある
髪は赤く、こちらの長さは腰くらいまでだが、ウエーブがかかっている。
その所為か後ろは髪先にいくほど左右に広がっており、前は耳横から
胸辺りまで一房ずつ垂らしている。
こちらもつい最近まで奴隷だったというのに肌はとんでもなく綺麗で髪も艶々だ
メガネはしてないが優等生っぽく、物静か
こっちは大型のおとなしい犬のイメージがするな
ジョブは中級職、魔道士
魔法使いの上位職で後衛アタッカー型
魔法使いよりも使える属性が増え、(魔法使いは1つか2つ)威力の高い術が使える
人によっては上級術、他職の術(下級職限定)でさえ使用可能
後衛型の例に漏れず軽装備(衣類、アクセサリー系)のみ装備可能(武器は杖、魔道書等)
武器は杖 『装具』ハイルフティア
WKは雪姫とのこと
どちらもおいしくいただきました
くろごま
かわいい
全身銀色の鱗に覆われている龍 かわいい
猫科の肉食獣のような体に龍の頭と尻尾、四枚の翼が生えている かわいい
自在に体の大きさを変えられる。恐らく最大で約50mほど かわいい
普段は子犬(全長30センチくらい)程度の大きさ かわいい
人の言葉を理解できるようなので知能は高いと思われる かわいい
背中に人を乗せて飛ぶ時は何らかの方法で保護しながら飛ぶ為、新幹線並みの速度で飛んでも吹っ飛んだりする事は無い かわいい
基本的に俺の頭の上で寝ているが最近は肩やら背中でも大丈夫な事が分かっているかわいい
肉より野菜や果物系が好きらしい かわいい
普通の龍は鳥類系の外見の為、コイツは変わった種族なのかもしれない かわいい
みー
学生で二人より年上
豪華客船で蹂躙してたら突然ウルジアに飛ばされた。
でも特に気にせず異世界ライフを楽しむつもりでいる。
特徴の方は読みながら判断してくれ
得物は宝物庫で貰った物全般
メインは本『装具』蔵書と双銃『装具』たま&ぽち
今後は宝物庫に有った物は…『モライモノ』とでも言うか
いちいち出すたびに宝物庫にあった物、って言うのもめんどくさい
WKは天衣無縫
効果は触れた装具を問答無用でアへ顔Wピースにできる
(無機物)ハーレム御用達の能力である
ジョブは不明、まぁ理由はなんとなく分かるが特に気にしない
こんなところかな
ああ、大事な人忘れてた
イケメン・クン
齧歯目カピバラ科の哺乳類。齧歯類では最大で、体長75~130センチ、尾はほとんどない。前足に4指、後足に3指あり、後指に水かきをもつ。南アメリカの湿地近くの森林にすむ。 『やぽー辞書抜粋』
そうこう言ってる内に風呂から上がり宿を出る
勿論風呂は全員で入りましたとも
風呂は地球の一般の物より二回りくらい大きめだったけど風呂場自体は結構狭かった
二人はまだ恥ずかしがっていたが気にせず入れた
時間が限られてるから仕方ないったら仕方ないのだ
ちなみにくろごまは桶に湯を張った物に入れた
結構気持ち良さそうにのほほんとしてた かわいい
タオルは宿側が用意したものを使用した
二人は早速昨日買った服に袖を通していた
ウルジアでは衣服は余程汚れたりしない限りニ、三週間に一度洗うくらいでいいらしいのだが、昨日は色々あったから仕方ない。主に夜に、うむ、仕方ない
ちなみに昨日まで着てた物は宿側が洗濯してくれるそうなので任せておいた
「んじゃまず腹ごしらえするか」
そう言って宿近くの酒場に入る
わいわいガヤガヤと活気がある
いつも通り面倒事に巻き込まれないよう目立たない端の方のカウンター席に座り、二人は俺を挟むように左右に座った
「そういや何か食べれない物とかあるか?」
昨日結局言わなかったがあるのなら今のうちに知っておきたい
後々困る事が無いように
「だいじょうぶです、好き嫌いはありません!」
「私も特にありません」
特に問題は無いようだ、じゃあいいか
適当に三人分の食事+くろごま用サラダを頼み、食べる
うまうま
くろごまもうまそうに食べている
横を見るとシエルが食事に手をつけず辺りを興味深そうに見回していた
「どうかしたか?」
「あ、いえ、たくさんお客さんがいるなぁと思って」
確かに結構大きい店なのにほぼ満席になっている
客もごついおっさんやら兄ちゃんやらねぇちゃんやら色々いる。
みんな飲んだり喰ったりしながらなんやかんや話をしているが、そこは酒場だし場所も結構良いとこだし、いつもどおりの光景だと思うんだが、
「姉さんが気になっているのは客質だと思います。
この大陸に熟練の冒険者が集まるのは滅多に無い事ですから」
「そうなのか?」
食事を続けながら聞いてみる
シエルも食べながらティアラの話を聞く体勢に入っていた。
「私達が居るこのゼライラト大陸にはそもそも冒険者ギルドが無いのです」
ギルド、良く聞くアレか
派遣会社みたいなやつか
「ゼライラト大陸には南にバウム、北にムルク、そして東に私達が今居るピューネの三つの国があり、三国は長年極めて友好な関係を築いています。
他国に気を使わなくて良い分、治安に兵を向けられるので、戦闘系の依頼が極めて少ないのです」
先日のムルクのような事は極めて稀なケースです、と言葉を続ける。
ちなみにこの大陸の形を簡単に言うと正三角形が右を指している形で現在地はその右角の先っぽだ、三国の領土の大きさはほぼ同程度らしい
「それに加えてこの大陸の魔族、魔物は他大陸に比べて弱い部類に入ります。
そうなると必然的に得られる対価が少なくなります」
つまり初心者用大陸って訳か。
確かに少ない、弱い、不味いじゃギルドも閑古鳥が泣くわな。
「それらの要因もあり、この三国は自国に冒険者ギルドを置く事を許可していないのです」
「国が許可しないのか?ギルド側が建てないんじゃなくて?」
「冒険者ギルドが出来るとメリットもありますがデメリットもあります。メリットは魔物退治や任務に国の兵を割く事が減らせる事、冒険者が自国に訪れる為、優秀な人材を得る機会が増える事などがあります。デメリットは多くの冒険者が訪れる事による治安の悪化、情報の漏洩、あとは冒険者への優遇措置の協力等、多々ありますがその辺りが代表的な所でしょうか」
片肘つきながら料理を口に運び、話を聞く
なるほどねぇ…治安維持はうまくいってるし、外敵を気にする必要も無い。
わざわざ賊の予備軍みたいな奴らが集まりやすくする必要は無い…とかお偉いさんは考えてんだろうな
国だけじゃなく一般人も依頼したいだろうにな
「ログスやムルクと違い、ここに居る人達は、ある程度の実力を持った冒険者のようです。その様な人達がここまで集まっているということは、他大陸で何か大型の依頼があって来たか、若しくは――…」
「若しくは?」
「新しいダンジョンが見つかったか、ですね」
ぴく、と隣で食事を続けているシエルが言葉に反応した
「ダンジョンって見つかりにくいもんなのか?」
「元々ある物と突然出現する物との二種類があります。新しく見つかるものは大抵が後者ですね」
「いきなり現れるってどういうことなんだ?」
「詳しい事は不明ですが、ある日いきなりダンジョンが現れるんです。現れる場所は山や森など、人の居住地から離れた所です。」
「んじゃウルジアの森や山のそこら中にダンジョンがあるのか?」
「いえ、新しく現れる方はダンジョンの最奥にある宝箱の中身を取れば消滅します。希少な物が入っているのでギルドからの依頼が無くとも冒険者はダンジョンに入ります。もっとも、ダンジョン内には魔物がおり、最奥には宝箱を護る強力な守護者もいます。」
RPGで敵がそこら中に湧くようにダンジョンもそこら中に湧いてくるって事なのか?
「んでもこの大陸の敵が弱いんじゃ旨みは少ないんじゃないのか?それにその土地の軍が潰すんじゃないのか?」
「ダンジョン内部の敵は土地の魔物と同種ではありません。
魔物の強さ、加えて階層の深さはまちまちですが、大抵その土地を徘徊している魔物よりも強力なものが居ます。数も多く、価値の有る物を落とすことがあるので、他大陸からダンジョンに来る冒険者も珍しくありません。ダンジョンの現われる位置、現れても冒険者が対処してくれる、以上の事から土地にダンジョンが出現しても国は余り動きません。稀に人里付近に現れる時があり、そういうときに動く程度ですね。専ら国が領地内に出現したダンジョンに対して行う事はギルドに依頼をすることくらいでしょうか」
冒険者は依頼が無くても入るくらいなんだから褒美が貰えるなら多少危険でも喜んで飛び込むだろうな
早めに片付けたい場合は褒美を少し増やせば殺到するだろう
この国がギルドに依頼する事が無い以上、単純にダンジョンの宝目当てか、
他大陸のギルドからまったく別の依頼を受けてきたって事になるのか。
「ちなみにもともとある物のほうは殆どが調べつくされている為、余り冒険者も立ち寄らず、賊の住処になっていたりします。もっとも、危険な所は手付かずになっている所もありますが」
王城変じて狐狸の巣になる、か。
まぁ城じゃないものもあるだろうけど
「ダンジョンはとっても楽しいんですよ!見た事の無い色んなものがたくさんあるんです!」
身を乗り出し、えらく嬉しそうにシエルが話し始める
口回りが汚れたまま、目をキラキラと輝かしている姿は実年齢より遥かに幼く見える。
「行った事あるのか?」
「一度だけ任務で行きました!すっごく楽しかったです!」
取り合えず適当な布を取り出し、口回りを拭いてやる
恥ずかしがっていたが気にしない
にしても、死ぬ奴もいる場所が楽しかった、ねぇ…
国に居た頃は娯楽と縁が無かったのかな。
余程新鮮に感じたんだろう
ちょっと聞いてみるか
「なぁおっちゃん」
店の主人に声を掛ける
「ん?おかわりかい?」
「それもあるけどさ、ここらで最近なんか変わった事あった?」
そう言いつつ空の皿を渡す
「なんだ、知らないのかい?」
おっちゃんは皿を受け取りながら答える
そしてその後に続く言葉を聞き、
「この近くに幽霊船が見つかったんだよ」
俺の左右の一人は顔を凍りつかせ、もう一人はその顔を楽しそうに見つめていた